軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

感想戦

座り込んだ中でも、特に腰が抜けて動けなくなっていたのはリルだった。魔法について言及された時から、足が震えてもうどうにもならなかったらしい。魔法も解いて、完全に疲れた男性の顔になっていた。

リオルがそれを見て驚き、ギャーギャーと騒ぐということもあったが、そんなことはさておき、仲間たちの立ち直りは早かった。

アルベルトはなんとか立ち上がると、地面に落ちた石を蹴ったり、その場をどしどしと踏みしめたりしている。圧倒されたことがよほど悔しかったのだろう。モンタナはそれを横目で見ながら、すました顔をしている。

ドラゴン二匹はというと、ベッドの中で小さくなって、ユーリの足にしがみついていた。ユーリは最初から最後まで目元だけ出して、じっと様子を窺っていた。

他のものはどうかわからないが、ハルカは彼女が立ち去る前に、一瞬ユーリの方を向いて微笑んだのが見えていた。モンタナのことを可愛いといっていたのを見ると、案外子供が好きだったりするのかもしれない。

モンタナに言ったら拗ねてしまいそうな気がして、この感想は心の中にとどめることにしたハルカだった。

「なんか、怖かったけど、少しクダンさんに似てたね」

「あの人のほうが気を使ってんだろ。さっきの奴、常に相手の首にナイフ突き付けてるみたいな雰囲気だったぞ」

「強い人が、強さを隠さないとああなるですかね。……次は横をとられないように気を付けるです」

意外と気にしてるらしいモンタナは、ユエルが消えていった方向をじっと見つめた。そういえばモンタナはアルベルトと同様、めちゃくちゃな負けず嫌いなのだと思い出させる視線だった。

リルがいつまでたっても立ち直らないのを見て、ハルカが背に乗せようかと提案すると、リオルが間に割って入った。

「俺がやる。あんたは俺に勝ったんだから、俺がいるときに雑用なんかするな」

妙な理論だったが、本人がそう言うのでハルカは場所を譲る。ハルカが背負うよりは、見た目に無理がなさそうだとも思った。

「なになに、獣人の間にはそんな決まりがあるの?」

「……別にねぇよ」

「ふぅうん」

「なんだよ」

「べっつにぃ?」

「……コリン、年下の子をからかうのはやめましょうね」

ハルカが注意すると、コリンは素直に引き下がる。これで終わったのかと思っていたら、すすっとハルカの横に移動して耳打ちをしてくる。

「ハルカ、どうどう、従順な獣人の年下とかタイプじゃない?」

「……コリンは立ち直りが早いですね。前にいる二人はまだ立ち直り切ってないのに」

視線だけでアルベルトとモンタナを示すと、コリンは苦笑する。

「あの二人は強くなりたがりだからね。私は、皆の役に立てればいいの。一緒に冒険して足を引っ張らないくらいにね。もちろん、強くなりたいって気持ちはあるけどね。どのくらい強いかすらわからないような相手だよ? 今気合入れたって、すぐ追いつけるもんじゃないしー」

「コリンは大人ですよね」

ぽんぽんと撫でてやると、コリンはすりすりとハルカの腕に頭を擦り付ける。コリンもそうだが、仲間たちは皆猫っぽい性格をしているなとハルカは思う。その点リオルは珍しい。獅子の獣人だが、性格は犬っぽい。

思い出してみるとイーストンもどちらかと言うと犬っぽいだろうか。

冒険者なんてやっていると、皆自由人が多いから、どうしても猫っぽく見えるのかもしれない。ハルカは変な分析をしながら、構ってほしそうにしているコリンの相手をしつつ、街へと戻っていくのだった。

街の近くまで来ると、流石にリルも自分の足で歩き始めた。気合を入れて魔法を発動して、エリザヴェータの擬態をする。

「くそ、この短い期間で二度も見破られるとはな。次はもっと完璧にやってやる……」

彼にもプライドがあるのか、魔法を使う時はぶつぶつと悔しそうにしていた。詠唱をこっそり聞いていた限り、自分の顔に幻をうつすのと同時に、会話をすることにより相手の精神にも干渉するような魔法らしい。扱いが難しそうな気がして、自分で使えるとは思えなかった。

姿を変えてからは堂々とそれらしい仕草で街を歩くリルだが、相変わらずハルカにはその姿がエリザヴェータには見えない。精神の立て直しは大したものだと評価しているのだが、見ているとどうしても滑稽に映ってしまう。

できるだけ視界に入れないように、よそ見をしながら歩いていると、街の中にいくつか美味しそうな食べ物屋を見つけた。

粉を溶いて薄く延ばしたものに、食材を包むクレープのようなものを売っている屋台があったので、あとで立ち寄ろうと場所を頭に叩き込む。屋台は場所を変えてしまうことがあるので、優先的に立ち寄るべきだろう。

こういう料理はシンプルだが外れがない。味付けが濃くされているため、上品な料理ではないが、それはそれでうまいのである。店によって調味料も工夫されており、同じ具材でも味が画一的にならないのがいいところだ。

各地で食べ歩く価値がある。

偽エリザヴェータが一緒だからか、屯所は以前と同じようにスムーズに通り抜けることができた。迷いなく城内を歩くリルは、やがて人があまり通らない区域まで入っていき、一つの部屋の扉を迷いなく開ける。

ハルカたちにも中に入るように促して、しっかりと扉を締め切り、鍵をかけてから部屋の中をきょろきょろと見回した。やがて納得したのか、魔法を解いて頷き、奥の扉に進む。そこはたくさんの衣服がかかっている、ウォークインクローゼットだった。

女性特有の甘い香りがして、ハルカは一瞬くらっとする。

「ここで待っててくれ。陛下に報告をしてくる」

服の海へと姿を消していくリルを見送って、ハルカは部屋の真ん中に戻った。

待つ間退屈だったので、ぼんやりとベッドの中で竜たちと戯れるユーリを見つめる。竜というのはあまり鳴き声を発さないようで、たまにぎゅいとか、ぎーとか、何かこすれる音を出すくらいだ。

どのくらい大きくなり、どのくらい生きると真竜のようになるのだろう。寿命はいったいどれだけあるのだろうか。

今は小さな体をしているが、ほんの数か月で空を飛べるようになり、一年も経てば人を乗せられるほどの大きさになる。ベッドの上でじゃれ合えるのは今だけだ。

ハルカはユーリとこの二匹が戯れる光景が割と好きだ。もう少しゆっくり成長してくれてもいいのになぁと思いはするものの、成長すること自体は喜ばしい。親心というのはなかなか難しいものである。