作品タイトル不明
14 その後の話
◇◆◇
翌年、アンネッタとバルド様は、予定通りの日取りに結婚式を挙げた。
予定と違ったのは、アンネッタのお腹の中には、すでにお子さんがいたことだ。
結婚式はそれなりの規模で行われた。
場所は王都の大神殿。
聖女を管理するこの大神殿は、冠婚葬祭の受付を行いつつ、結婚式会場としても人気だ。
ちなみに、葬儀も受けている。もちろん、葬儀は結婚式会場とは別施設だ。
どちらも申請すれば誰でも会場を使えるが、かかる料金は、まあ、結構な金額だ。
バルド様はアーヴィン殿下の側近を辞め、領地経営に尽力するらしい。
彼は時を戻したときに魔力の他に寿命を消費したので、長くは生きられない。
これからは、家族との時間を大切にしたいのだと言っていた。
何はともあれ、二人とも幸せそうだから良いのだろう。
私とエリアはというと、国王陛下から元ヴァルヌス領を無理やり(?)任され、新領主としてあちこちに奔走した。
まずは領地の名前がモナルダ公爵領となり、並行して受注したお守りの製作と、新作お守りの製作も行なっていたので、この一年ほどは本当に休む間もなかったのだ。
アンネッタとバルド様の結婚式が終わった頃には何とか落ち着き、ようやく結婚式の話もできるようになってきた。
「マリアーナにお知らせがあります!」
「え? エリア? 急にどうしたの?」
久々にまったりエリアとお茶の時間を楽しんでいると、彼が改まって何か言い出した。
「結婚式は一年後に決まりました」
「へえ。まあ、問題ないかな?」
一番時間のかかりそうなドレスも、まあ何とかなる、よね?
「会場は大神殿の大ホール。国王陛下もアーヴィンも出席するし、大々的に行われます!!」
「はあ!? なんで!?」
また、大ホール!?
場所は違うけど!!
「俺が一応王族なのと、ヴァルヌス領で特産を生み出したことと、呪い事件を解決したことが功績として讃えられたからです!!」
「陛下や殿下が出席するってことは、絶対に断れないじゃ〜ん」
「ちなみに、アーヴィンがメチャクチャはっちゃけて、こうなりました!!」
「ぐぬぬ〜」
アーヴィン殿下は年下の叔父であるエリアのことを、実は可愛がっているらしい。
そういえばアーヴィン殿下には、妹はいるけど男兄弟はいないので、弟みたいに思っているのかもしれない。
「というわけで、マリアーナにはめっちゃ着飾ってもらうので、覚悟しておくように」
両手を取られ、頬を染め、うっとりした 表情(かお) で言われてしまうと、もう、了承するしかない!
「分かったわよ〜、その代わりエリアもめっちゃイケメンになってもらうから!!」
「もちろん」
「……でも、今更だけど、私なんかが公爵夫人で大丈夫なのかな?」
正直、自分には役者不足な気がしてならない。
考えないようにしていたけど、私って結構ダメダメ令嬢だし……!
「確かに、マリアーナは抜けてるところがあるからな〜」
「いや……そこは『大丈夫』ってフォローするところじゃない?」
「でも、俺にとってはマリアーナが一番なんだよ」
「え……?」
「だって俺。他の女性と結婚するなんて考えられないし」
「……」
「足りない部分は、これから少しずつできるようになればいいし、お互いに助け合えばいい。俺だって、領地経営は初めてなんだし」
「エリア……」
「だから、これからもよろしくってことで」
「うん! こちらこそ!!」
そうして時は過ぎ、私たちの結婚式当日は晴天に恵まれ、多くの人に祝福されながら執り行われたのだった。
◆◆◆
その後──。
マリアーナとエリアは二人の子供に恵まれた。
領地では光晶樹の栽培を軌道に乗せ、お守りの他、様々な産業に影響を与えた。
もちろん、お守りはモナルダ公爵領の特産となり、冒険者や騎士、貴族の他、平民の間でも人気を博し、他国へも輸出している。
アンネッタとバルドの家族とはそれからも家族ぐるみの付き合いを続けた。
アンネッタとバルドは三人の子に恵まれた。
バルドは家族と過ごす時間を、何より大切に過ごした。
それから十年ほど経って、バルドは倒れた。
魔力が枯渇し、魔力回復薬を飲んでも一向に回復せずに衰弱し、倒れてから一年ほどで眠るように亡くなった。
死の間際は家族に見守られ、その死に顔は満足そうなものだったという。
その後アンネッタは再婚もせず、三人の子供を育て上げた。
マリアーナとエリアは、そんなアンネッタを支え続けた。
また、両家の子供同士が結婚したため、その交流は世代を超えても続いたという。
◆◆◆
シンディは、あの試用会から約二十年後に、ようやく亡くなった。
呪いの効果が徐々に薄れると同時に、魔力が尽きたようだ。
彼女の世話をしていた呪術師も、シンディの隣で事切れているのが発見された。
一説には、呪術師がシンディの呪いを弱めていたのかもしれないと言われたが、それを証明することはもうできなかった。
国は後に、呪術の恐ろしさと、伴侶を大切にしなかったことが招いた悲劇を教訓として語り継いでいくことになったという。