軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

姉だった人のことと、後悔 ⑥

「シンフォイガ公爵家は、どうしてスラファー王国であれだけ活躍している『知識の花』を迫害していたのかしら?」

「元ウェグセンダ公爵夫人と言えば、問題児であり、社交の場にもほとんど出ることのなかった方でしょう?」

「お見掛けしたことはあるけれど……、とても美しい方よね。魔術師の家系で魔術を使うことが出来なかったと聞くけれど……まさかそれだけで居ない者扱いしていたの?」

パーティーに久しぶりに参加することが出来た日。父上と母上はとても気合が入っていた。

……あの人が他国で活躍をするようになってから、シンフォイガ公爵家はそういった公の場には赴くことはなかった。それは陛下の指示だった。そしてその場に赴いた時には、話の中心はあの人だった。

我が家では、いない者だった人。家族として認められることのなかった、魔術を使う才能がない者。

――この国であの人が噂になっていたのは、他の二人の姉の悪評を代わりに受けていたからだ。腫物扱いをされ、好き勝手に噂されていた。

そのパーティーには、もう嫁いだ二人の姉達の家は来ていない。……シンフォイガ公爵家もクレヴァーナ・シンフォイガの活躍により大変な状況だが、姉二人の家もそうだろう。そこまで他家を気に掛ける余裕など私達にはなかった。

「それに……クレヴァーナ様はこの国で噂になっていたような方ではないのでしょう?」

「そうだな。陛下もそのようにおっしゃっていた。しかし火のない所に煙は立たないというし……『知識の花』がそうでないというのならば……」

――あの人の悪評。

それが本当のことではないというのは、陛下がきちんと公表している。それはあの人の『花びら』と呼ばれる人々との交渉の結果らしい。このパーティーの場には『花びら』達の姿はない。

クレヴァーナ・シンフォイガの『花びら』達はこの国を訪れた際、パーティーに参加することもある。でもこの場に居ないのは……私達が参加しているパーティーだからかもしれない。

私は実際に話したことはないけれども、『花びら』達はあの人のことをとても慕っているそうだ。それでいて彼らは、『知識の花』の素晴らしさをこの国でも語っているそうだ。

私達の家が白い目で見られているのは……『知識の花』と呼ばれる存在のことを意図的に貶め続けたのが私達だからだ。

少なくとも私は……あの人が噂されるようなことを起こしていないことは知っていた。父上や母上が魔術を使えないあの人を外に出さないようにしていたのを知っていた。それでいて放置していたのは私である。

あの人が嫁いだ後も、悪評が流れていようとも、夫婦関係が上手く行ってなかろうとも私はそれをどうにも思わなかった。

……そういった私の態度も、周りから非難されているのだというのは分かった。

視線が冷たい。

「なぜ、そんな立派な姉を助けなかったのか」「もし手を差し伸べることが出来れば『王弟の愛する知識の花』はこの国で活躍したのではないか」「『花びら』の方々だってとても素晴らしい方だわ。この国で彼らが活躍すればよかったのに」「他国から我が国がどう思われているか分かっているのか?」

そう、そういったこちらを責めるような言葉をよく投げかけられる。

……それも仕方がない事と言えばそうだ。ただそういう言葉を口にしたものたちだって、結局あの人の噂をあることないこと言いふらしていた者達だ。

あの人がこんなに活躍をすることがなければ、「そんな問題児が公爵家にいたわね」ぐらいにしか思わないだろう。

それなのにこうやってシンフォイガ公爵家だけ責め立てられると、何とも言えない気持ちで苛立つ。

あの人が――他国で活躍なんてしなければよかったのに。そのまま、埋没してくれたら……。なんてそんな考えを少し、抱いてしまう。

もう既にクレヴァーナ・シンフォイガは動き出し、スラファー王国だけではなく周辺諸国にまで影響を与えてしまっている。だからこんなことを考えても仕方がないことだ。

……そもそもの話、誰かが活躍するのを私の一存で止めるなんてことはまず出来ない。こんな風に苛立ったところでどうしようもないことは分かっている。

――それに私の家が、あの人に良くしていればこんな状況になっていなかったであろうことも……。

それでもどうしようもなく何とも言えない気持ちになっていた。

「……なぜ、あの出来損ないのことばかり聞かれるんだ!!」

「私達が久しぶりに社交界に参加したというのに……。あの子が他国で活躍するなんてありえないのにっ」

父上と母上は、私以上にいら立ちを隠せない様子だった。

――それでいて驚くべきことに、両親はあの人の活躍をこれでもかというぐらい聞いても、国が動いているのを知っていてもやはり信じられない様子だったのだ。

……そのことに驚いた。

だって幾ら否定したとしても、信じられないと思っていてもそれはおそらく真実なのだ。それは認めなければならないこと。

……それが理解出来ないままであれば、きっとこのままもっと悪い状況に陥るだろうとそんな風に思った。