軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二度目の王弟殿下と、私の気持ち ⑤

「またあと数日したら王都へと戻るよ」

庭を歩きながら会話を交わして、ふとカウディオ殿下がそう言った。

「そうですか。寂しくなりますね」

それは心からの言葉だった。

この穏やかな空間が心地よくて、実際に対面して言葉を交わせることが楽しいと思っているから。きっとこのままお別れしたら、次に会うのはまたずっと先なのだろうなと思う。

それが少しだけ寂しいと思ってしまった。

「クレヴァーナはこれからどうする予定なんだ?」

「どうする……とは?」

聞かれた言葉が分からなくて、私はそう問いかける。

カウディオ殿下は楽しそうに笑って、私に向かって続ける。

「君はとても優秀だ。多言語を操り、記憶力が良く、その知識は多様な場所で活躍をすることが出来る」

「あ、ありがとうございます?」

突然、褒められて恥ずかしい気持ちになる。嬉しいのだけど、どういう意図でそういうことを言っているのか分からない。

私が動揺をしている目の前でカウディオ殿下は相変わらず楽しそうである。

「だから、君が望むのならばきっと何にでもなれる」

カウディオ殿下はそんなことを言った。

「何にでも……ですか?」

何にでもなれるなんて、言われてもぴんとは来ない。

私は私自身のことをそんな人間だとは思っていない。この街にきて沢山褒められることが多いけれど、そこまで言われるほどだとは思えていなかった。

確かに私は昔より行動的になって、何でも出来るような気にはなっていたけれど――。

「クレヴァーナは自分のことを過小評価しすぎだよ。兄上にも君の話をしたら興味を持っていた」

「国王陛下が、ですか?」

国王陛下という雲の上の存在の事を話題に出されて、益々驚く。

カウディオ殿下は王弟という立場なので、当然、国王陛下にも私のことは報告しているだろう。私はそれだけ警戒するべき噂の流れている存在なのだから。

でも私の話をしたからといって、スラファー国の国王陛下が興味を持つなどとは思ってもいなかった。

「そうだよ。クレヴァーナはそれだけ周りから関心を持たれる存在なんだよ。君が自分をそれだけ評価出来ないのは、隣国でのことが原因だろうけれど……もっと自分に自信を持って、評価していいと思う。手紙でもらった知識も、とても役に立った」

「……ありがとうございます」

他でもない、昔の私と今の私を知っているカウディオ殿下から言われる言葉は何だか重みが違う。

嬉しい。心がポカポカして、温かさがじんわりと広がって、興奮した気持ちになる。

カウディオ殿下の紡ぐ言葉はまるで魔術の一種のようだ。

私の気持ちを、こんなにも高ぶらせてくれる。

「だから君が望むなら、別の働き口を紹介するよ。王城でもいいし、他の国が経営している機関でだって……私は君のことを推薦出来る」

「……私を、紹介ですか?」

「ああ。君にはそれだけの価値がある。私はクレヴァーナなら、何処にだって推薦出来る。とはいえ、流石に危険なことは止めるけど」

それは紛れもない信頼の言葉なのだ。

私自身のことを認めてくれて、心からそう思ってくださっているからこそのもの。

……嬉しくて何だか不思議と泣きそうになる。

ぐっと涙をこらえて、ごまかすように私は笑った。

「カウディオ殿下にそこまで評価していただけて嬉しいです」

ただただ嬉しい。私の頭の中はそればかりだ。

「もっと私は自分に自信を持ってみようと思います。その上で、私がどうしたいか考えてみます。だから、お時間をいただいてもいいですか?」

告げられた言葉は嬉しくて、だからそのまま手を取ってしまいたくなった。

だけれども自分自身のこれからに纏わることなのだから、その場で勢いに任せて行動すべきではないと思った。

……それに、このままカウディオ殿下に着いて行ったら離れなくなりそうな予感がした。

そう、気づいてしまったのだ。

私自身がカウディオ殿下のことを特別に思っていることを。先ほどの言葉も含めて、嬉しくて仕方がなくて、好ましく思っているのだなというのが実感できる。

それがどういう意味合いのものか、私自身にも分からない。

でも実際の私がどうであれ……、私がクレヴァーナ・シンフォイガという悪評を流されていたことには変わりがない。だから考えた上で選択しなければならないと思っている。

「もちろんだよ。良い返事を待っている」

私がお誘いを一旦保留にしたのを聞いても、カウディオ殿下は笑っていた。

その笑みを見て、少しだけドキドキした。

そしてそれからカウディオ殿下は王都へと戻られた。

次にカウディオ殿下がこちらに来られるのは、また数か月後だろう。

その時までにゆっくり考えて、私自身の言葉でどうしたいかをきちんとカウディオ殿下に告げよう。

私はそう決意した。

だけれども――そうやって悠長に構えられていられなくなってしまった。