軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

●第234話●熱気球

「そうだよ。速い速度を出したり、自由に飛び回りさえしなければ、空に浮くこと自体は実はそこまで難しい事ではないんだ。前の世界では、観光地で気軽に体験できるくらいだったしね」

「気軽に体験……」

笑いながら言う勇の言葉に、アンネマリーが絶句する。

勇の言う通り、アウトドア施設などでの気球試乗会は、割と手ごろなレジャーだった。

少しハードルが高いものだと、パラグライダーやパラセイリングなども各地で体験できる。

いずれも天候状況に左右されるものの、様々な手段が検証された現代地球においては、単に空を飛ぶだけならそこまで大仰な機材は不要だ。

中でも熱気球は、最もシンプルで安全に空を飛ぶことが出来る手段と言えるだろう。地球初の有人飛行も熱気球だ。

「原理はすごく簡単で、軽い空気を風船に入れて飛ぶだけだね」

「軽い空気、ですか?」

「うん。空気って温めると軽くなるんだ。焚火の煙とか、お湯が沸いた時の湯気って上にいくでしょ? ざっくり言えば、あれは温められた空気が軽くなって昇ってるからなんだ」

「温めると軽くなる……」

「そうじゃ。ワシも勇から聞いた時は何を言っとるのかと思ったがな。実験してみたら確かに言うとおりになった」

「あはは。空気の重さを実際に量るのは手間ですからね。そういうものだと認識した上で実験するのが早いかな、と」

天秤などで比較する事は可能かもしれないが、科学的な知見をためるのが目的ではない。

台湾のランタン祭りで使われているような、紙を使った小さなものを作って手っ取り早く実験をしてみせたのだった。

「その後、魔法コンロに使っている魔法陣を使って飛ばすことが出来る事も分かったから、さらに大きなものを作ってこれから実験する所なんだよ」

そう言って勇は、ミミリアが持って来てくれた大きな皮袋を広げてみせた。

原理は分かっているものの、どの程度の大きさがあれば必要な浮力を得られるかまでは分からないので、大きくしては実験することを繰り返していくことになる。

研究所の裏庭に出てきた一同は、早速気球を飛ばすための準備に取り掛かる。

今回飛ばす気球の球皮(風船)部分は、横幅が三メートル、高さが四メートルほどの大きさだ。

前回が一メートルほどの大きさで二〇〇グラム程度しか浮かせられなかったので、今回は倍以上のサイズとした。

次に熱源だ。

地球の熱気球だと、空気を温めるのにはガスバーナーが使われている。

対して勇達が作っているものでは、魔法具を使っている。

魔法コンロに使用されている 熱の付与(エンチャント・ヒート) の魔法陣に熱源となる触媒を密着させ、その熱源から発せられる熱で空気を温めるのだ。

わざわざ触媒が必要になるのは、 熱の付与(エンチャント・ヒート) が触れた物しか温めない性質を持っているためだ。

空気が触れているから直接温められるのでは? と考えた勇達だったが、その目論見は残念ながら外れてしまった。

「これは、メタルリーチですか??」

魔法陣から螺旋状に伸びている触媒を見たアンネマリーが尋ねる。

「そうじゃ。コイツは加工が簡単じゃからな。それと熱の伝わり……熱伝導率じゃったか? それが良いんじゃ」

アンネマリーの質問には、魔法具のセッティングをしていたエトが答えた。

今回の実験機では、もはやお馴染みとなった超便利素材、メタルリーチを触媒に使っている。

エトの言う通り加工がしやすいため、少なくとも一番効率の良い形状を見つけるまでは、メタルリーチの素材を使って試行錯誤する事になるだろう。

加えて、軽量なのと熱伝導率が高い点もメリットとなっている。

一方球皮の方は、跳び 鼬(いたち) の皮で作られた大きな袋の入り口と中間部分に、リング状にしたワイヤーっぽい素材で補強がしてあった。

このワイヤーっぽい素材は、魔鯨と呼ばれる巨大な魔物の髭で、以前ワイヤーの代替品が無いか探している時にロッペンから提案されたものだ。

また、球皮には天地方向に何本もロープが通されており、その延長上に小さな籠のようなゴンドラを取り付ければ、実験機の完成である。

「さて、じゃあまずは温かい空気を入れていきましょうか」

勇がそう言いながらバーナー代わりの魔法具を起動させ、ヴィレムとロッペンが球皮の入り口部分を持ち上げた。

球皮部分がかなり大きくなったので、上部はしぼんだ状態でそのまま地面に置かれている。

「う~ん、この大きさになると流石に時間がかかりますね……」

数分様子を見ていたが、球皮部分はあまり膨らんできていない。

「これ、先に空気だけ入れてある程度膨らませたほうが早ぇんじゃねーか?」

「おお、確かにそうですね!!」

球皮を持ち上げていたロッペンの言葉に、勇が手を打つ。

これまではそこまで球皮部分が大きくなかったため、最初から球皮がある程度形を保っていたのだが、今回はそうではない。

そういえばテレビで見た気球も、準備の時は大きな送風機のようなもので空気を送り込んでいたなと、勇も今更ながら思い出していた。

「魔動車の時に試作して置いてある繰風球がまだ倉庫にあったな。そいつを使ってみるか?」

「そうですね。丁度良い気がします」

「分かった」

話を聞いていたエトが倉庫から小さめの繰風球を持ってくる。

それをあらためて球皮の入り口付近に設置し、中へ空気を送り込み始めた。

「おお、これは正解でしたね!」

「んだな」

ゆっくりと、しかし確実に膨らんでいく球皮を見てロッペンが腕組みしながら頷いた。

「うにゃにゃっ」

大きな風船が膨らんでいくのが面白いのか、織姫がヒットアンドアウェイで楽しそうに猫パンチを繰り出している。

「姫~、そろそろ温めるから気を付けてね~」

「んな~」

ある程度膨らんだ所で勇は織姫に声を掛けると、再びバーナー代わりの魔法具を起動、温めた空気を送り込みはじめた。

しばらく続けていると、膨らんだ球皮がゆっくりと立ち上がり始める。中の空気が温められて比重が軽くなっている証拠だ。

「よし、いい感じだ」

「うん。錘を外せば飛ばせそうだね」

十分ほど空気を温めていると、錘を付けたゴンドラ部分が微かに宙に浮いた。

それを見てヴィレムが、熱源の温度をやや下げる。

「すいませんが、ロープのほうをお願いしますね」

「お任せください!」

離陸準備をしながら声を掛けた勇に、少し前に集まってきていたミゼロイともう一人の騎士が返答する。ミゼロイほどではないが体格が大きく力自慢の騎士だ。

彼らには、気球がどこかへ飛んでいってしまわないように、ゴンドラから伸びるロープを握っていてもらう。

このサイズの浮力は大きくないのでミゼロイ一人でも十分なのだが、風に流された時の事を考えての保険である。

「さて、それじゃあ行ってみましょうか」

「了解じゃ」

「了解」

勇の合図で、ゴンドラの両サイドに取り付けられていたバラストの紐を、エトとヴィレムが切り落とす。

ミゼロイらの握るロープが、微かに上方へ引っ張られた。

「ではミゼロイさん達も力を緩めてください」

「「はっ!」」

そしてフワリと気球が浮かび上がった。

「「「「「おおお~~~~っ!!!!」」」」」

それを見た一同から同時に歓声が上がる。

理論上飛ぶと分かっていても、やはり実際に飛んだ瞬間には感動するものなのだ。

まだ朝の早い時間の、ほとんど風の無い青い空に吸い込まれるように、気球は音もなくまっすぐ昇っていく。

辺りにはミゼロイ達の握るロープが延びていくシュルシュルという音だけが、小さく響いていた。

およそ二十秒程か。ロープに付けていた赤い目印が手元まで来たことにミゼロイが気付き、ギュッとロープを握った。

「イサム様、予定高度に到達したようです」

「ありがとうございます! だいたい秒速一メートルといったところでしたね」

腕時計の秒針を見ながら勇が答える。

目印は大体二十メートルくらいの所に付けてあったので、それくらいの上昇速度だろう。

一般的な商業施設などにあるエレベーターくらいの速さだ。

「あと二分ほどで魔法具が停止するので、高度が下がり始めたら回収をお願いします」

「了解です!」

再び時計に目をやりながら勇がミゼロイにお願いをする。

無人で飛ばしているので、バーナー代わりの魔法具は時限式にしてあった。

まだ浮力も弱いので、人力で強引に地上に引き戻すことも可能だが、万が一のことを考えて短時間で浮力を失うようにしておいたのだ。

その後しばらく、朝日に照らされ上空で薄っすら光っている小さな気球をそのまま眺めていると、ミゼロイの握るロープの手応えに変化が現れた。

「む。手ごたえが軽くなりましたね」

「お、予定では少し前に魔法具が停止しているはずなので、空気が冷え始めて高度が下がって来たようですね。もう少し軽くなったら、落下する前に回収してしまいましょう」

「分かりました」

騎士が二人がかりでロープを手繰り寄せていくと、みるみる気球が大きくなってくる。

そのまま三十秒ほどで、無事気球を回収する事が出来た。

「この大きさの限界重量をもう少し調べたら、いよいよ人が乗れる大きさのものを試作しましょうか」

「いよいよじゃの」

「楽しみだね。旧魔法、オリジナルの魔法陣ときて、次が世界初の空飛ぶ魔法具になるとは思わなかったよ」

「あはは。まぁ原理さえ知っていればそこまで難しい物じゃないですからね」

そんな事を当たり前のように話しながら、勇達はまだしぼんでいない気球の魔法具を再び起動させ、限界重量を調べていった。

風が出てくると流される危険があるので、午前の調査は早めに切り上げ、再び風が収まる夕方頃に再開、その日のうちにこの大きさの限界重量を調べ終えた。

その数値を元に、最終的に使用するゴンドラや球皮自体の重量などを勘案して、ある程度余裕をもって人が一人乗れる気球の大きさを試算する。

結果としておよそ直径十メートルあれば、多少気温が高くても人一人が乗れそうだと結論付けた。

ちなみに熱気球は、空気の密度差を利用して浮力を得ている。そのため球皮内の温度と外気温の差が大きい程浮力が強い。

球皮内の空気は暖め過ぎると球皮が持たないので、温度には上限がある。

なので外気温は低いほど良いのだが、球皮内の空気を温めるのにより大きな熱量が必要となるので、中々バランスが難しい乗物なのだ。

「十メートルとはまた大きいですねぇ……」

「ふむ。こりゃギルドにある在庫じゃあ足りねぇな」

勇から受け取った簡単な三面図を見て、縫製担当のミミリアが目を丸くする。

ロッペンもその数字を聞いて苦笑した。

「すみません、かなり大きくなってしまって……」

「いえ、やりがいがあるから大丈夫ですよ! だって世界で初めて空を飛ぶお手伝いをしているんですから! それに、他のシスター達の裁縫の良い訓練になりますし」

恐縮する勇に、ミミリアはフンスと鼻息荒く答える。

「こっちも問題ねぇ。ちょいと買取り依頼を増やすから、二、三日時間をもらいてぇがな」

「にゃっふん」

「おお? ヒメ先生が手伝ってくれるのか? だったら明日中くらいには集まるんじゃねぇか?」

ロッペンの話を聞いていた織姫がテシテシとその頭を叩くと、ロッペンはニヤリと勇に笑いかけた。

他にも、エトはゴンドラ、ヴィレムは紐やロープ類の手配、アンネマリーは飛行試験場所の調整にと、それぞれが有人飛行に向けて一斉に動き始める。

勇も、改良版の熱源をはじめとした必要な魔法陣の作成に取り掛かった。

三日後。早朝の騎士団の演習場に、二十人くらいの人たちが集まっていた。集団の中央には、大きな球皮が地面に広げられて置かれている。

「あらためて広げてみると大きいねぇ」

「実験機が飛んだのは知っているけれど……。本当にこんなものが飛ぶのか、イサムさんが作ったものじゃ無かったら、到底信じられないわね」

準備をすすめる研究所の面々の傍らに立つ領主夫妻が、心配そうな面持ちでその様子を眺めていた。

「あはは、そうですよねぇ。私も前の世界で実物を見た時にはビックリしましたから」

作業指示を出しつつ、勇が義両親に笑いかける。

勇はかつて一度だけ、観光地で気球に乗った事があったのだが、想像以上の大きさにかなり驚いた記憶があった。

その時聞いた話によれば、自分が乗った気球が日本では一番使われている大きさで、幅が十五メートル、高さは二十メートル程あるらしい。

おおよそ七階建てのビルと同じ高さと言えば、その大きさが想像できるだろう。

「こちらの気球のほうが、魔石と魔法陣が使える分かなり軽量ですからね。逆に効率が良くてこの程度の大きさで済んでいます」

勇が乗った気球は、そんな大きさでも定員は大人三名が目安だった。

バーナーや燃料のガスタンクなど、気球の構成部品そのものが重いためである。

対してこちらの気球は、バーナー代わりにメタルリーチと魔法陣を使ってはいるものの、最も重いガスタンクが魔石数個ですむのが大きい。

また、勇は知る由も無かったが、球皮に使っている魔物の素材も地球でよく使われているナイロンより軽いため、重量軽減に一役買っていた。

そんな事情を説明している間にも準備は進んでいく。

「よ~し、にゃんズ達はそろそろ出てくるっす! これから熱くなって危ないっすよ!!」

織姫を筆頭に、うにゃうにゃ言いながら球皮に潜り込んで遊んでいる猫たちに、ティラミスが声を掛ける。

「にゃにゃっふ!」

「「「うにゃ~~」」」

それを聞いた織姫が、球皮の中から出て来て一声かけると、他の猫たちも一斉に飛び出してくる。

「お利口さんっすね! え~~~と……。イサム様、球皮の中は大丈夫っす!!」

「ありがとうございます! さて、じゃあ温めましょうか」

球皮の中の安全を確認すると、いよいよ気球を膨らます作業へと取り掛かる。

球皮が大きくなったことで開口部も大きくなっているため、今回はさらに大きなヒーター魔法具を新規に開発していた。

コイル状に伸びるメタルリーチの触媒が三本あり、繰風球を応用した空気を送り込む機能も搭載されている。

かなり火力が上がっているそれを起動させて空気を送り込んでいく。

五分もすると、球皮が持ち上がり始めたので、球皮の頂点部分と繋がっているロープを操作しながら、バランスよく立ち上げていった。

三十分ほどで綺麗に膨らんだ球皮が立ち上がる。

地球のものより小さいとはいえ、高さは十数メートル。四階建てほどの高さはあるため、演習場の中央に聳え立っているような圧巻の大きさだ。

「これは凄いね……」

「大きいわね……」

見上げた領主夫妻が思わず呟く。

居並ぶ人たちもみな驚きの表情で見上げていた。

「イサム様! そろそろ浮き上がります!」

ロープを握っているミゼロイから報告が入った。今回は念のため、四方にロープを張って安全性を確保している。

「分かりました! さーーて、じゃあテストフライトといきますか」

そう言いながら、勇がゴンドラに乗り込む。

「んにゃっ」

続いて織姫がヒラリと勇の肩へと飛び乗った。

「お気を付けて……」

少し心配そうな表情で、アンネマリーがイサムを見送る。

「うん、軽く飛んでみて問題無ければ、次はアンネも一緒に飛ぼう」

「はい!」

軽くアンネマリーの頭を抱きながら勇が答えると、幾分その表情が緩んだ。

「急に飛ぶと危ないから火力は弱めて、っと。じゃあ、ミゼロイさんお願いします」

「はっ! ロープ緩めっ! ゆっくりだぞ!!」

「「「了解っ!」」」

ミゼロイの指示に従って、ロープを持つ騎士達が徐々に手を緩めると、ゆっくりと気球が浮上し始めた。

「「「「「おおっ!!!」」」」」

ギャラリーから歓声が上がる。

「よし。このまま五メートルくらいまで上がったら、一度止めてください! 行ってきます!!」

「はいっ! お気を付けて!!」

ひらひらと手を振る勇と共に、気球が徐々に高度を上げていく。

そして五メートル程昇ったところで一旦停止。その後ゆっくりと降りてきた。

「風も無くて安定してます。これなら大丈夫そうなので、今度はアンネと一緒に本格的に飛んできます」

「分かった」

「気を付けてね」

「さ、アンネ。乗ってごらん」

「は、はい」

緊張した面持ちでアンネマリーがゴンドラに乗り込むと、その重みで少しだけ浮いていたゴンドラが完全に地面へと着地する。

それを確認した勇は、ヒーターの魔法具に付いている、これまで触れていなかった魔石に触れた。

その後、今度はゴンドラに付いている魔石にも触れて、魔法具を起動させる。

「これで浮くはずだけど……、おっ、浮いてきた!!」

数秒待っていると、勇の言った通り再びゴンドラが地表から離れる。

今回の気球には、今までの試作機に無かった機能がいくつか搭載されているのだが、今勇が起動させた軽量化の機能もその一つだ。

魔法巨人(ゴーレム) に搭載されている、闇の魔力を使った魔法陣を応用したものである。

基本的には一人乗りだが、二人乗りたい時や重い荷物を載せたい時などにはこの機能を使用するのだ。

軽量化の効果が発揮され、するすると音もなく気球が上昇していく。

「ほ、本当に飛んでいます……!!」

「うん、順調だね。怖くはないかい?」

「は、はい」

「もう少しで森の木の上に出るよ」

驚きっぱなしのアンネマリーの肩をそっと抱き寄せながら勇が言う。

そして――

「わあぁぁ、き、綺麗……」

森の木々の上に出た瞬間、思わずアンネマリーが呟く。

まだ日が昇ったばかりで、森の中にある演習場は木々に遮られて薄暗かった。

森の上に出たことで遮るものが無くなり、生まれたての朝日を受けて銀色に輝く森と、薄っすら紫色に染まった朝焼けの空が三六〇度の大パノラマで突然その目に飛び込んできたのだ。

「す、すごい……」

なおも高度を上げていく気球。

「クラウフェンダムが見えます!」

少し余裕が出て来たのか、周りを見回していたアンネマリーが故郷の街を見つける。

「うん、この距離からだと良く見えるね。ほら、逆側も見てごらん」

「あ、あれはこの前行ったセードラーデの街とセルビネ村でしょうか?」

「そうだね」

「あそこが、イサムさんの領地……」

「俺の、じゃないよ。俺たちの、領地だ」

「私たちの……」

小さく呟きながら、アンネマリーがことりと勇の肩に頭を預けた。

「正直、まだ領主になるとか貴族になるとか、全然実感が湧かないんだよね……」

アンネマリーの頭を優しく撫でながら、勇がポツリポツリと呟く。

「当然うまくいかない事も沢山あるだろうし……。でもアンネや織姫と一緒なら、何があっても大丈夫だと思うんだ」

「イサムさん……」

「だから、これからもずっと一緒に歩いていこう」

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」

「ありがとう」

飛び切りの笑顔を見せるアンネマリーに勇も微笑み返すと、優しく口づけをする。

「な~~ん」

そして、おでこをくっつけあったまま見つめ合う二人の顔の隙間に、目を細めた織姫が潜り込むようにスリスリと頬ずりをするのだった。