軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

●第207話●魔法具ブービートラップ

「ぐはっ」

「ぐっ」

爆風と共に勢いよく飛び散る大きな木片の直撃を受けて、木を持ち上げていた二体の巨体が吹き飛ばされる。

「木が爆発した!?」

「今度は何だっっ!?」

「魔法攻撃かっ!?」

まさか倒木が爆発するなどと思ってもいないズンの兵士たちに動揺が広がる。

先の二体に続いて木を退けようとしていた別の第一世代も、思わず倒木から距離をとった。

「何をしておるかっ! 魔法であれば森の中に伏兵がいると言う事だ。探せっ!」

「り、了解しましたっ!!」

慌てふためく兵を一喝して我に返らせたイゴールは、さすがに現場からの叩き上げだけはあった。

しかし今回は、その指示が致命的な悪手となる。

バチバチバチッッ!!

ドンッ! ドドンッ!!

「ぐぁぁっ」

「ぎゃあっ!」

「うぐっ」

イゴールの指示で一斉に森に飛び込んでいった第一世代が、三度正体不明の攻撃に見舞われる。

それは雷魔法のようであり、先程の爆裂魔法のようでもあった。

「なんだ、一体何が起こっていると言うのだ……?」

目の前で攻撃を受けている 魔法巨人(ゴーレム) たちを見て、イゴールが呆然と呟いた。

一連の攻撃は、言うまでもなく勇達が仕掛けたブービートラップによるものだ。

一夜で設置したものなので単純なものばかりだが、魔法や勇謹製の魔法具を活用する事で、なかなか凶悪なものに仕上がっている。

例えば落とし穴は、 泥化(マッドネス) で泥沼化して沈下した地面にカモフラージュを施しているのだが、穴の上に渡してある支えにひと工夫がされていた。

簡単に落ちてしまうと一、二体にしかダメージを与えられないので、細くしてもかなりの強度を誇るメタルリーチの素材を支えに混ぜてあるのだ。

そして落とし穴の中央付近にある圧力を検知する魔法陣が反応すると、メタルリーチに魔力が流れ柔らかくなるように設計されている。

こうすることで、一拍おいて穴に落ちるようになるのだ。

高価なメタルリーチの素材をそんな事に使うのを見て、さしものサミュエルも少し顔が引きつっていた。

他にも倒木の中には少し手を加えた地雷が仕掛けられているし、先程突入した森の中にも地雷や電気柵を改修した高圧電線が仕掛けられている。

爆裂玉や雷玉を改良した魔法具の存在はほとんど知られていないため、これが魔法具によるトラップであると気付ける人間は少ないだろう。

シュターレン王国のものでさえ、勇の派閥以外はほぼ知らないので、ズンの軍人であるイゴールには無理からぬ話だ。

知っていれば避けることも出来るが、逆に知らない者にはとてつもない威力を発揮するのがブービートラップである。

もっとも、少数で多数を相手にするにはこの方法しかなかっただけではあるのだが……。

「だめだ! 森にはなんか仕掛けてあるぞっ! 引けっ!!」

半数近くが森に入ったところで、誰かがそう叫んだ。

目の前で味方が攻撃されているのを見ていた第一世代たちは、それに従って森から引き返していく。

それを見て、叫んだ男が木陰でニヤリと笑った。そして森の奥へ向かって何やら合図を送る。

すると、合図を見た二人の男が、人間離れした速度で森の奥から飛び出してきた。

薄っすらと光を纏わせて飛び出してきたのはユリシーズとリディルだった。

勇から教えてもらった 全身強化(フルエンハンス) を使っており、その両手に何かを抱えている。

そして二人は第一世代が固まっているあたりに、抱えていたものを投げつけた。

それはまるで投網のように空中で広がり、何体もの第一世代をその中に捉えていく。

「これでも食らえっ!」

リディルはそう叫ぶと、網から伸びている紐の先に付いた魔石に触れた。

途端、網から青白い光が迸り、バチバチと無数の火花が飛び散る。

「ぎゃああっ!!」

「うわーーっ!」

今日何度目かの叫び声が、網の中の第一世代から響き渡った。

それを見たリディルとユリシーズは、再び薄っすらと光を纏いながら森の中へと消えていった。

「次から次へと一体何だと言うのだ……。んんっ??」

目の前で展開され続ける予想外の状況に唖然としていたイゴールが、違和感に気付く。

「”もどき”共に被害が出ていない……? 何故……。!!? もしやっ!? 気を付けろっ! ”もどき”共が裏切ってるぞ!!!!」

現状から導き出された結論にイゴールが顔を歪めてそう叫んだ。

短時間で違和感に気付いたのは流石だが、気付くのが一歩遅かった。

イゴールが叫んだ時には、もどき達はすでに行動を開始していたのだ。

「うおっ!?」

「くっ」

「がっ」

「くそっ」

常に隊列の後ろにいた第二世代の 魔法巨人(ゴーレム) が、突如第一世代に襲い掛かった。

虚を突かれた第一世代たちは、その攻撃をまともに食らう事となる。

攻撃を受けて倒れる機体、損壊する機体もいれば、持ちこたえる機体もいた。

多くの第一世代が、ブービートラップによりダメージを受けていたが、その程度はまちまちだったためだろう。

大きなダメージを受けていた機体は、対物理装甲が限界に達して倒れたり壊れたりし、そうではない機体が持ちこたえたのだ。

全機による一斉奇襲で、何体かの第一世代を行動不能にした勇たちは、二つのグループに分かれて次の行動に出る。

まず前方に位置取っていた八体の第二世代たちは、引き続き第一世代へ攻撃を仕掛けていた。

混乱から立ち直りつつある第一世代を相手取り、オーバードライブモードを発動して二対一で戦う事で、性能差のある第一世代と互角以上の戦いを繰り広げている。

(にゃにゃっふ)

また、織姫を筆頭とした猫たちのサポートも的確だった。

トラップの発動状況を全て見ていたのか、トラップによるダメージが大きい機体に操縦者を誘導するようなサポートを行ったのだ。

これにより、少しずつ第一世代側の損耗が積み重なっていく。

そして後方に位置取っていた十体は、奇襲時に脇へと隠していた操縦席を素早く確保する。

(にゃーーん)

それが分かったのか、猫たちから操縦者へ合図が飛んできた。

(ありがとう、姫! よし、撤収だ!!)

(なぉぉ~~~ん!)

織姫の長鳴きが頭に響くと、第二世代たちが一斉に撤収態勢に入る。

まず前方で戦っていた機体が、街道付近の一箇所へと攻撃を集中させ始めた。

分厚い戦線を築けるほどの数はいなかったため、しばらくすると戦線に穴が開く。

それを見て、操縦席を抱えた機体が一斉に走り始めた。

八体の第二世代は、それをサポートするように街道の両脇で必死に牽制を行う。

そこを走り抜けた機体は、オーバードライブモードの効果を一段上げて落とし穴の上を飛び越えて北側へと走っていく。

それを見送った八体も、次々と落とし穴を飛び越え始めた。

「に、逃がすなっ!! あの数に逃げられると厄介だ!!」

鮮やかに撤退していく第二世代たちを見て、イゴールが声を張り上げる。

「おおうっ!」

「お、追うぞー!!」

命令を聞いた第一世代たちが、慌てて追走を始める。

とは言え重量のある第一世代は、出力にものを言わせて走るのこそ速いが、その重量ゆえ身軽さは第二世代に劣る。

彼らのように落とし穴を飛び越えることは出来ず、これ以上爆発しなくなった脇の倒木を退けてから、追走を始めた。

ドドドンッッ!!!

その矢先、再びの轟音が響き渡り、追走を始めた第一世代たちがまたもや爆発に包まれる。

今度は森の中からの砲撃だ。

「よし、もう一発撃ったら引き上げるぞ!」

「「了解!」」

フェリクスの指示にリディルとユリシーズが答えると、地面に水平に並べて置かれた魔弾砲に雷玉と爆裂玉を詰めていく。

魔弾砲は、作った時に水平発射も出来るようにしてあったので、今回それが日の目を見た形だ。

ドドドンッッ!!

二度の斉射を終えた魔弾砲を背嚢に詰め込むと、三人は 全身強化(フルエンハンス) を発動させて森の中を北上し始めた。

追走の出鼻を挫かれたズンの 魔法巨人(ゴーレム) 達は、この時点で半数以上が継戦能力を失っていた。

残りの機体も、ほとんどが何らかのダメージを受けているが、ここで追走を止めると言う選択肢も無く、再び追走を開始する。

単純な足の速さであれば第一世代の方が上なので、少しずつその差は縮まっていく。

しかし、オーバードライブモードを使いつつ、全機が猫によるアシストを受けて全力で逃げる第二世代たちは、完全に追い付かれる前についにメラージャまで逃げ切ることに成功した。

殿を務めていたドレクスラーの機体が入場した直後、街の門が閉じられた。

時を同じくして、ヤリスコフの率いる騎馬隊がトラップの仕掛けられていた場所に到着していた。

フェルカー家の者たちを追っていたものの、やはりこちらの状況が気になり引き返してきたらしい。

そして目にしたのは、半数を超える壊れた第一世代の 魔法巨人(ゴーレム) たちだった。

「な……、これは一体……」

見るも無残な光景にヤリスコフが絶句する。

嫌な予感がしてはいたが、ここまでの状況になるとは流石のヤリスコフにも予想外だった。

「爆裂系の魔法でやられたのか? 対魔法用の装甲も組み込まれているから、簡単にやられるようなことはないはずだが……」

爆裂玉の影響で至る所で抉れている地面を見てヤリスコフが呟く。

「おい、そこの! 何があったのだ!!」

そして動かなくなった 魔法巨人(ゴーレム) と共に置いていかれた操縦者たちに、事情を尋ねる。

「いや、俺たちも何が起きたのかよく分からんのですわ……。先頭の奴らが落とし穴に嵌ったと思ったら、爆裂魔法と雷魔法がどんどん飛んできて……」

「そしたら急に”もどき”たちが裏切りやがって……」

消沈しながらどうにか状況を説明する操縦者たち。

「なに、アバルーシ共が裏切った!?」

要領を得ない部分が多いが、どうやら罠が仕掛けられておりそれに引っかかっている時にアバルーシから奇襲を受けたようだ。

「それで将軍は追走したのだな?」

「ええ、ここで仕留めないと厄介なことになると言われて……」

「そうか……。我々も後を追うぞっ!」

指示を出したヤリスコフは、自らも馬に鞭を入れると北へと進路をとる。

(雷魔法だと? アバルーシなら弱点を知っているのは当たり前だが、奴らは魔法はほとんど使えんし、魔法具も持っていないはずだ。それがなぜ……)

状況は把握したものの納得は出来ないヤリスコフは、そんな事を考えながら馬を走らせた。

一方数分差でアバルーシの 魔法巨人(ゴーレム) を逃がしたイゴールは、閉じられた門を遠目に見ながら激怒する。

「くそっ!! 忌々しいアバルーシめがぁぁっ!!!」

そう吐き捨てて、被っていた兜を地面に叩きつけるが、怒りに任せてそのまま街へ突撃しない程度には理性は残っていた。

「相手に 魔法巨人(ゴーレム) があるとは言え、所詮”もどき”。それにこちらもまだ第一世代が残っている。癪だがヤリスコフの奴と合流したら、あらためて攻め潰してやる……」

少し冷静になったイゴールが、怒りを次の戦いへの糧とするように呟く。

しかしズンの者たちの不幸は、まだこれで終わってはいなかった。