軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日譚 第31話

懐かしい思い出に花を咲かしている内に、あっという間に時間が過ぎていった。

時折、客が来てシャンテルが対応していたが、それでも止まることなく思い出を話し続けた。

「そんなに昔のことじゃないのに、湯水のごとく思い出が出てきますよ! 何だかクリスさん達がいたのが遠い昔のことのように感じます!」

「昔のことじゃないから些細な思い出も覚えているんだろ。ただ、やっぱりオックスターでの日々は楽しかったな。穏やかで住みやすい街だし、何よりあの借家が良かった」

「常に宿屋生活だったし、初めて自分の城を持ったって感覚だったよな! 何も気にせず好き放題できたし、俺は家を買いたくなったもん!」

「今もあのままの状態で残っているんですかね? せっかくでしたら、オックスターに滞在している間はあの家で暮らしたいんですけど……」

ヘスターが小さくそう呟いた。

オックスターに来る道中でも全く同じことを話していたし、空いているのであれば借りたいところだったが……。

「残念ですけど、あの家は新しくオックスターに来た冒険者が住んでるんです! さっき話したプラチナランクの冒険者パーティです!」

「そうなのか。あれだけ良い家で値段も安いとなったら、そりゃいつまでも空いてはいないよな。性格が良さそうな人が借りてくれたのがせめてもの救いか」

「うへー! もう他の人が住んでいるのかよ! 俺はあそこの家で寝泊まりする気満々だったのに!」

「何か分からないですけど、問題も解決したみたいな話もしていましたからね!」

「そう言えば事故物件でしたね。【銀翼の獅子】ジョイスさんが嫌な気配を感じると言っていたぐらいで、特に何も起きませんでしたから……それが問題解決ってことなんでしょうか?」

「分からない。ただ今なお問題なく住んでいるってことは、何も問題が起こっていないってことなんだろ」

こればかりは仕方がないこと。

俺もあの懐かしの家を一目ぐらいは見たかったが、流石に押しかける訳にもいかないからな。

「でもでも、冒険者ギルドに行けば泊めてくれるかもしれませんよ? 副ギルド長がそのプラチナランク冒険者と仲良いですし、クリスさん達を紹介してくれると思います!」

「流石にスノーがいるから、泊めてくれるってことはないと思います。でも、中を一目見たいですね。思い出巡りも含まれていますし、折角ですので見たい気持ちが強いです」

「俺も同意見だな。副ギルド長に相談して、そのプラチナランク冒険者を紹介してもらおう」

「じゃあ、あそこの家でパーティしませんか!? 何度かパーティしましたよね? パーティならぜひ私も呼んでください!」

「おおっ! パーティはナイスアイデア! 俺もパーティしたいし今日か明日はパーティしよう! そうと決まれば、すぐに冒険者ギルドに行こうぜ!」

シャンテルの提案に当てられ、興奮した様子のラルフが店を飛び出そうとした。

俺はそんなラルフの首根っこを捕まえ、とりあえず一度落ち着かせる。

「顔も知らない人の家でパーティするって勝手に決めるな。まずは紹介してもらうところから始めて、事情を話して許可を貰わないといけない」

「流石に許可を貰わなくちゃいけないのは分かってる! そのために冒険者ギルドに行こうって言ってんだよ!」

「分かってるならいいが、色々と話しをしたせいでまだ本題に入ってない。シャンテルにプレゼントを渡しに来たの忘れていただろ」

「……完全に頭から抜け落ちてたわ! 確かにまずはプレゼントを渡さないとな!」

本当に忘れていたようで、照れくさそうに頭をポリポリと掻いたラルフ。

ラルフ一人だったらプレゼントを渡しに来たのに渡すことを忘れ、パーティを楽しんでオックスターから発っていそうな勢いだな。

「プレゼント? 私にプレゼントって何ですか!?」

「喜んでもらえるか分からないが、世話になった礼として王都で買ってきたんだ」

「王都のプレゼント! 早く見たいです!」

目をキラキラ輝かせながら、プレゼントをねだってきた。

買ってきたのは錬金に使えそうなアイテムなのだが、この反応的に選択をミスったかもしれしない。

シャンテルも女の子な訳だし、『レモンキッド』でジュエリーでも買うべきだったか?

「そこまで過度な期待しないでくれ。シャンテルにとって、あまり嬉しいものではない可能性のが高い」

「えっ? 干し肉とかですか?」

「そこまで雑なものじゃないが、とりあえず受け取ってくれ」

俺は鞄から秘伝魔力油と神羊の角粉の入った紙袋を手渡す。

追加で王都っぽいお土産でも買おうと思っていたのだが、完全に忘れてしまっていた。

ミーハーなものの方が喜ぶだろうと分かっていただけに、買い忘れたのは痛恨のミスかもしれない。

恐る恐る反応を窺ったのだが、シャンテルは思っていなかった反応を示した。

「うえっ! これって『ワイズストーン』の商品ですか!? それも一等級素材じゃないですか!!」

紙袋の中身を見るなり、聞いたこともない単語を興奮気味に羅列し始めてたシャンテル。

俺達が買ったものだが、全ての単語に聞き覚えがない。

「店の名前までは知らない。王都にあった錬金術屋で買ったんだよ」

「このマークは『ワイズストーン』のものです! そして、この秘伝魔力油と神羊の角粉は一等級素材といって、超貴重な錬金素材なんですよ! 特に秘伝魔力油は『ワイズストーン』が作っているもので、『ワイズストーン』のお店でしか買えない代物なんです! いつか王都に行った時は買いたいと思っていたのですが……まさかこんな形で手に入るなんて思ってなかったです!!」

何を言っているか説明されても分からなかったが、たまたま入った店が有名な錬金術屋で、買った素材も貴重なものだったということだろう。

ほとんど偶然の産物だが、喜んでもらえるか不安だっただけに大喜びしてくれたのは本当に良かった。