作品タイトル不明
後日譚 第11話
ひとまずシャンテルとトリシャ用の素材を購入してから、引き続きこの店でプレゼントを探すことにした。
最初に俺の目が向いたポーションは正直ありだと思う。
基本的に戦闘しないといえど、何かしらのトラブルが起こった際は戦う場面があるはず。
だったら、お守り代わりとして能力が強化されるポーションをあげるのは良い。
そんな考えからポーション売り場へと戻り、『旅猫屋』では売っていないであろうポーションを選ぶことにした。
敏捷強化に耐久力強化、単純な火力を上げる筋力強化や魔力強化のポーションも揃っている。
ただシンプルなものならば『旅猫屋』で売っているため、この店でしか買えないポーションを見つけたい。
棚の端から端までを注意深く見ていると、一本のポーションが目に止まった。
ラベルに書かれてあったのは、能力覚醒ポーションという文字。
先ほど購入した秘伝魔力油や神羊の角粉と同様に、詳しいことは何も書かれていないのだが、名前的に間違いなさそうなポーション。
色味は銀色で、若干発色しているのも凄みを増している。
値段は一本で金貨七枚と高額だが、興味もあるし買っていいかもしれない。
「クリス、何か良い物があったのか?」
「ああ。この能力覚醒ポーションってのを、副ギルド長へのプレゼントとして買おうかと思ってる」
「なんだそのポーション! 能力覚醒って……クリスの持ってるスキルにも同じのがなかったか?」
「俺のスキルは【能力解放】だ。このポーションの効果はさっぱりだが値段的に期待はできるし、プレゼントとして渡すなら最適だと思わないか?」
「えーっ! 金貨七枚なら効果を聞いてから買いたいけどな!」
「効果を聞いたら面白くないだろ。金なら別にこれから貯めればいいだけだ。今の俺達なら報酬の高い依頼も楽にこなせるだろうし、世話になった人達へのプレゼントなら特に考えなくていいだろ」
「言っている意味が全く理解できないけど、まぁクリスが良いっていうならいいんじゃないか?」
ラルフには理解されなかったが、良いとは言ってくれたしこのポーションを買おうか。
プレゼントを渡し、また次に会った時の話のタネにもなるし、効果が良ければ俺も個人的に購入することができる。
効果を聞いてしまうと面白くないという理由はこういうことだが、説明してもラルフは理解しないだろうし、俺は説明することはせずに能力覚醒ポーションを購入した。
シャンテル、トリシャ、副ギルド長へのプレゼントをこの錬金術屋で買えたのは大きい。
見た限りでは質も高そうだし、なんとなくで入った店にしては大当たりだったはず。
「いやぁ、良い買い物ができたんじゃないか? 錬金術屋は正解だったな!」
「ああ。一気に三人へのプレゼントを買うことができた」
「店内の臭いは気になりましたけど、見ていて楽しいお店だったのも良かったです。それで、次はどうしますか?」
次は順番で言うと【銀翼の獅子】へのプレゼント。
腐らないものが良いと思うため、装備品かアクセサリー辺りが良い。
「【銀翼の獅子】へのプレゼントを買いたいから、武器屋か『レモンキッド』のようなジュエリーショップに行きたいと思ってる」
「なら、『レモンキッド』でいいんじゃないか? シャーロット御用達なだけあって質が高かったし、その割に値段もそこまで高くなかった!」
「御用達というか、隠れ家的な感じで使っているだけじゃないのか? まぁ俺は『レモンキッド』で異論はないけどな」
「私もゆっくり見たいと思っていたので、『レモンキッド』で構いませんよ」
「二人もいいなら、『レモンキッド』へ向かうとするか」
錬金術屋を後にした俺達は、訪れたことのなる『レモンキッド』へと向かうことにした。
初めて訪れた時は、客として来ることになるとは思ってもいなかった店。
ジュエリーなんて以前の俺達からは一番遠いものと言えたし、それから時をあまり経たずして客として行くことになるなんて、環境の変化というのは凄いと改めて感じる。
なんとも言えない感覚を味わいつつ、王都の一等地に建っている『レモンキッド』へと辿り着いた。
「夜に来た時とは全然違う印象がしますね」
「当たり前だけど客もいなかったし、なんか不気味な感じがしたぐらいだもんな! 無駄に警戒してたってのもあるだろうけど!」
「店の中の印象も全然違うんだろうな。正直、浮きそうな気がしてならない」
「絶対に場違いだから浮くだろうけど、それは考えないようにしようぜ! シャーロットの友達なんだし、堂々としてれば多分大丈夫だ!」
胸をトンッと一つ叩き、自信あり気にそう言って『レモンキッド』の中へと入って行ったラルフ。
今更重くなってきた足を動かし、ラルフの後を追って俺も店の中に入った。