軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日譚 第12話

夜とは全く違い、店内には煌びやかな世界が広がっていた。

客は全員女性且つ、身なりが整った人達ばかりで、完全に浮いている俺達が入ったことで一気に視線を集めた気がする。

「な、なぁ……俺達入って大丈夫なのか?」

「駄目ってことはないだろ。居心地は死ぬほど悪いけどな」

珍しく耳元で小さな声で話しかけてきたラルフと小さな声で会話をしている横で、今までに見たことがないくらい目を輝かせながら店内を見始めたヘスター。

シャーロットに呼ばれてきた時は特に興味のないように思えたが、やはりヘスターも女の子ということだけあって惹かれるものがあるようだ。

「クリス、どうする? ヘスターに買いものを任せて、俺達は外に出るか?」

「ヘスターだけに任せるのは悪いだろ。それに【銀翼の獅子】への贈り物は全員で決めたい。シャーロットと知り合いな訳だし、何か言われたら名前を出せばなんとなるはずだ」

「それはそうだけどよぉ……。本当に居心地が悪い!」

俺もラルフ同様に居心地の悪さを感じているが、歯が浮くような感覚を押し堪えて、先に進んで商品のジュエリーを見ているヘスターの横に立ち、一緒になって良いものがないかを探す。

商品に集中することで、段々と周りの視線も気にならなくなってきた。

それにしても……本当に質の高いものが揃っているな。

俺は目利きができる訳ではないが、最高品質の武器やら防具やらを見てきたお陰か、良い物は良いと判断できるくらいの眼力は持っている。

ただ、どれも女性ものばかりで、男にプレゼントするには可愛すぎるものばかり。

何か男性にあげてもおかしくないものがないかを探していると、とあるジュエリーが目に止まった。

ブラックサファイアと書かれた黒が基調なのだが、光の具合によっては青く見える宝石。

ネックレスなのも非常に気に入ったし、このブラックサファイアのネックレスをアルヤジさんとレオン。

ジャネットとジョイスには真っ赤に輝く、サファイアとは対比のルビーのネックレスを――とも思ったのだが、女性二人へのプレゼントはヘスターに任せた方がいいのか?

とりあえず男性二人へのプレゼントは、このブラックサファイアのネックレスでいいはず。

「ラルフ、このネックレスはどうだ? それぞれ違ったものをとも思ったんだがお揃いの方が喜びそうだし、レオンにもこのネックレスを買っていきたいと思ってる」

「おっ! 格好いいし、いいんじゃないか? レオンさんもきっと喜んでくれると思う!」

「良かった。ジャネットとジョイスにはルビーのネックレスを――と思ったんだが、ヘスターは受け入れると思うか?」

「俺はめちゃくちゃ良いと思ったけど、ヘスターに聞いてみないと分からねぇな」

要領得ない返答だったため、やはりヘスターに直接聞かないと駄目のようだ。

噛り付いてジュエリーを見ているヘスターの隣に行き、早速尋ねてみることにした。

「ヘスター、ジャネットとジョイスへの贈り物をこのネックレスにしようと思っているんだがどうだ?」

恐る恐る尋ねたのだが、返ってきた言葉は予想していなかったものだった。

「……駄目ですね。全然可愛くありません」

一瞥しただけで冷たく却下され、思わず放心してしまう。

ヘスターは基本的に俺の意見に賛同してくれることが多かったため、あまりにも素直な言葉に驚いてしまった。

もちろんより良い物の方がいい訳で、気持ちを押し殺して賛同する方がおかしいんだけども。

「びっくりするほど拒絶されたな! クリスの意見があそこまでキッパリと否定されたの初めてみたぞ!」

「俺も初めての経験だ。ここは……大人しくヘスターに任せるとしよう」

「だな! 俺も全否定されたくねぇし、大人しく見守ってる!」

男二人で頷き合い、先にブラックサファイアのネックレスの会計だけ済ませ、ヘスターが選び終わるのをひそひそと話しながら待った。

そして、俺がアルヤジさんとレオンへのプレゼントを決めてから約一時間後。

ようやくジャネットとジョイスへのプレゼントが決まったようで、非常に満足気な表情を浮かべて二つのジュエリーを購入したヘスター。

選んだのはダイヤモンドのネックレスとトリニティリング。

輝いているし綺麗だとは思うけど、やっぱり赤や青やらの色がついている方がいいと思ってしまうのは俺のセンスがないからだろうか。

先ほど一蹴されてしまっただけに、特に意見することなくヘスターの選んだジュエリーを了承。

質を考えれば安いと言っても、質の高いジュエリーなだけあって金をかなり使ってしまった。

【銀翼の獅子】には返せないほどの恩を受けた訳だし、もちろん構わないのだが……あれだけ楽しそうに見ていたヘスターへのジュエリーは、今すぐには買ってあげられないくらいの出費。

さっき二人にも言ったが、金ならこれからいくらでも貯められる訳だし、ヘスターにはまた改めて買ってあげるとしよう。

俺はそう密かに心に決めつつ、思いのほか長いこと滞在した『レモンキッド』を後にした。