軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第430話 最終決戦

ラルフとドレークが去ってから、緊迫した空気が流れ始めた。

改めてクラウスを観察しているが、身に着けているのは鎧ではなく貴族が着ていそうな黒基調の絢爛な服。

鎧と比べて耐久面で劣りそうな服に見えるが、俺と同じく動きやすさ重視で選んだ服装だろう。

思考が似ているのが少し嫌になるが、そこは曲がりなりにも血が繋がっているから仕方がない。

手に持たれている剣は通常よりも若干細身のロングソードで、血のような赤黒い刀身に目がいく。

ヴァンデッタテインほどではないと思いたいが、クラウスの握っている剣も凄まじいオーラを放っており、代々語り継がれてきたであろう伝説の剣であることに違いない。

ヴァンデッタテインを入手し、武器では優位を取ろうと考えていたのだが流石に考えが甘すぎた。

……いや、ヴァンデッタテインを入手できていなかったら、武器でも優位を取られていた訳だし、危険を冒してでも取りに行ったのは正解だったか。

そう思い直しながら、出を窺いつつ久しぶりに会うクラウスの顔をまじまじと見る。

実家で俺を殺そうとしてきた時に見せた表情は酷かったが、その時以上に極悪人面に変わっているな。

纏っているオーラも漆黒と表現するのが正しいぐらいに邪悪で淀んでいる。

この姿のクラウスを誰が見ても英雄とは思わないだろうし、魔王と言われた方が納得するぐらいだ。

「そろそろ始めようぜ。クリスを殺し損ねちまったことをずっと引っかかっていたからさ。わざわざ殺されに来てくれて本当に助かった」

「俺はクラウスを殺しに来たんだ。俺を殺しそびれたことを後悔させてやる」

「……【農民】が調子に乗るなよ?」

その言葉を皮切りに、クラウスは全力で俺目掛けて駆けてきた。

流石に速いが、思っていたほどじゃない。

「【剣神の輝き】【セイクリッド・アクセル】」

――そう思っていたのだが、スキルを発動させた途端に動きが変わった。

クラウス自身が纏っている邪悪なオーラとは対照的な、光輝くオーラが混じり合うように纏わりつく。

クラウスの動きは何倍にも加速し、気がついた時には真っ赤な刀身が俺の目の前にまで迫っていた。

いわゆる走馬灯というものなのだろうか。

いつもの何倍にも時間が引き伸ばされた感覚があり、綺麗な軌道を描いて俺の首元に迫る横薙ぎの刃が鮮明に見える。

意識だけは覚醒していて体は一切反応しない。

……俺はこのまま首を刎ねられるのか? いや、絶対に簡単には死んでたまるか。

【外皮強化】【要塞】【鉄壁】【硬質化】。

首元に集中してスキルを発動させ、少しでも威力を和らげるために体を引いて迫り来るクラウスの斬撃を受け流した。

瞬時の対応のお陰で幸い深くまでは入らなかったが、それでも首元に高速で剣が入ったのは変わりなく、ドクドクと結構な血が首元から流れている。

防御スキルを全て発動させ、掠った程度なのにしっかりと斬られてしまったか。

首元から流れる血よりも大量の汗を流しながら、俺は急いでクラウスから距離を取る。

「おかしいだろ。手ごたえは抜群だったのに――なんでまだお前の首は引っ付いているんだ?」

「ギリギリで避けたからに決まっている。【農民】と馬鹿にしていたくせに、不意打ち紛いの攻撃とは卑怯な奴だな」

目を見開いてブチギレている様子のクラウスにそう言葉を返してから、俺は身体強化のスキルも全て発動させる。

今の一撃だけでクラウスの強さは身を持って体感することができた。

力量を見極めるとか、恨みを晴らすために痛めつけるとかは一切考えず、全力で殺しにかかる。

ヴァンデッタテインを構え直し、もう魔力を注いで第一のルーンを発動させた。

淡い赤い光がヴァンデッタテインを包み、切れ味を良化させていく。

「クリスが授かった適性職業は確実に【農民】だった。……だとしたら、俺の一撃を避けられる訳がない」

「努力して追いついたんだよ。【剣神】を授かったお前にな」

「――ふざけんじゃねぇぞ? 俺はクリスと違って神から選ばれたんだよ! 俺よりもただ少しだけ早く生まれてきただけで、才能を全て俺に奪われたカスが追いつける訳がねぇだろ!」

クラウスはそう叫ぶと、再び先ほどと同じように俺との間合いを一気に詰め――今度は胴体を両断させるかのように袈裟斬りを放ってきた。

さっき発動させたスキルは持続型なのか、速度も威力も一切落ちていない鋭い一撃。

斬り裂く範囲の広い袈裟斬りをさっきやられていたら、大ダメージを負っていたかもしれない。

俺はそんな余計なことを考えながら――クラウスの袈裟斬りをあっさりとヴァンデッタテインで受け止めた。

スキルを全て発動させている状態ならば、さっきと同じ速度の攻撃は余裕で受け止められる。

【強撃】のスキルを交えながら、今度は俺がクラウスに斬りかかった。

首を刎ね飛ばす横薙ぎ――に見せかけ、俺も斜め上段からの袈裟斬り。

前までのクラウスならばこれで十分だったはずだが、流石に鍛錬を積んできたようでギリギリで剣で受けられてしまった。

ただ威力を殺し切ることに失敗したようで、何度も地面をバウンドしながら闘技場の地を転がっていった。

俺は首元への切り傷、クラウスは地面に強打。

ダメージ的にトントンだろうし、これでひとまず初撃のやり返しには成功した。