軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第311話 目覚め

目を覚ますと、俺を覗き込むように見ているヘスターの顔が目に入った。

辺りが外なのことを考えると、ここはバルバッド山の中継地点だろうか。

最奥部で寝ていた時と違い、大分眠っていたような気がする。

「クリスさん、目が覚めたんですね! 体の方は大丈夫ですか?」

「ああ。お陰様で疲労は大分取れた気がする」

「それなら良かったです! 丸二日も眠っていたので本当に心配したんですよ」

バハムートの洞窟を脱出してから丸二日も眠ってしまっていたのか。

【痛覚遮断】が解除されていても痛みで飛び起きることがなかったし、俺が寝ている間もポーションで回復を図ってくれていたのだろう。

動かしてみると体に結構な痛みはあるものの、スキルの実を食べた時に比べれば大した痛みではない。

左腕に関しては全然動かすことができないけどな。

「そういえば……ラルフとスノーの姿が見えないけど、エデストルに帰還したとかか?」

「そうと言えばそうですが、違うと言えば違いますね」

なんとも言えない曖昧な返事に首を傾げると、ヘスターはもう少し詳しく説明してくれた。

「エデストルに戻ってもらってはいるんですけど、買い出しに行ってくれてるんですよ。ラルフさんが眠ってしまってから一度戻っていて、さっき二度目の買い出しに行ってくれているんです」

「なるほど。それで帰還したと言えばしているってことか。ラルフとスノーにも大分迷惑をかけてしまったな」

「私が言うことではないと思いますが、気にしないで大丈夫です! 元はと言えば、私達が一緒に洞窟の攻略に行けなかったのが原因ですので。これぐらいの看病ならば、いつでもどこでも喜んでやらせてもらいます!」

両手を握り絞め、力強く宣言したヘスターに思わず笑ってしまう。

本当に色々あって大変だったが……無事に帰って来られ、こうして何気ない会話ができて本当に良かった。

「でも、二人で下山なんて大丈夫なのか? スノーとラルフがいれば大抵の相手なら退けられるだろうけど、それでも危険なことには危険ではありそうだが」

「クリスさんを助けるためなら、多少の危険ぐらいで諦めはしませんよ! それにクリスさんがバハムートの洞窟を攻略したからか分かりませんが、瘴気時間がなくなったんです。次第に瘴気も薄くなっていますし、安全に下山できていると思いますよ」

そうか。バハムートを倒したお陰で瘴気が薄まりつつあったんだっけか。

瘴気時間はなくなっているということは麓が瘴気で覆われることはないし、安全にエデストルまで戻れているって訳だな。

「それよりも、お怪我の方は大丈夫なんでしょうか? かなり酷い傷でしたし、何処か痛みがある箇所とかあれば言ってくださいね」

「まだ全身が痛いといえば痛いが、体を動かせるぐらいには治ってる。左腕以外は後一日ほど休みながら、【自己再生】のスキルを使ってれば良くなるはずだ」

「左腕の怪我はどうされたのですか? 眠る直前も扱いに気をつけてくれと仰っていましたよね?」

「洞窟の最奥部にいた魔物とやり合って――多分かなり変な感じが折れている。その状態で更に酷使したのか分からないけど、損傷具合が酷いみたいなんだ」

「随分と他人事のように聞こえるのですが……。とにかくエデストルに戻ってから、治療師ギルドで診てもらいましょう!」

他人事というか本当に他人事で、俺自身が何も覚えていないんだよな。

目覚めた時に左手でも剣を握ってたのは、正直ゾッとするぐらい驚いたぐらいだし。

ヘスターには無駄な心配をかけるため【狂戦士化】のことは話さないことに決め、手持ち無沙汰となったこともあり……。

俺はようやく、バハムートの洞窟から持ち帰ってきたヴァンデッタテインを見てみることに決めた。

中継地点の端の方に鎧と共に置かれており、鞘に収まった状態だが圧倒的なオーラを放っている。

結局まだ刀身を見ていないし、鞘から抜いたらどうなるのか非常に楽しみだ。

「ヘスター。俺が持って帰ってきた装備品については確認したのか?」

「いえ。正直それどころではなかったので、まだ誰も確認すらしてないです」

「そうか。今から確認しようと思っていて、何か危険があるかもしれないから少し離れていてくれ」

「分かりました。私は少し離れていますね」

ヘスターを中継地点から離れさせてから、俺はいよいよヴァンデッタテインを抜くことに決めた。

噂が本当なのであれば、バハムートから作られたとされる大剣。

バハムートといえば俺が死闘を繰り広げた漆黒の龍なはずだが……あの龍の素材からこの大剣が作られたって訳か?

まぁバハムートの洞窟にいた龍だから勝手にバハムートと呼んだだけで、あの龍がバハムートかどうかは分からないし、この大剣がヴァンデッタテインなのかどうかすらまだ分からない。

現状では何が嘘で何が真実なのか分からないが――この大剣を抜いてみれば分かることも出てくるはず。

俺は大きく息を吐き出してから、かなり古びた鞘からヴァンデッタテインを引き抜いた。