軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第297話~ハーピィの神秘~

「ぱぱー」

「とーちゃ」

「ぴよっ」

「あっ、ちょっとまって頭に止まるのはちょっと爪がイタタタタ」

衝撃の事実が発覚してからおよそ一週間後。ハーピィさん用の集合住宅を建設し終えた俺は、集合住宅の一階でハーピィさんの子供達と戯れていた。ハーピィさんの子供達というか、ハーピィさんと俺の子供達だな。

「いててっ、まだ一歳にもなってないのに喋れるんだな」

「他の種族に比べてハーピィは早熟なのですわ」

俺と一緒に子供達の世話をしている大鳥種の白羽ハーピィ、イーグレットがそう言って自分の頭に止まろうとしてきた幼ハーピィを翼腕でペシっとはたき落とす。扱いがぞんざい過ぎませんか。はたき落とされた幼ハーピィは楽しそうにキャッキャと笑っているからあれはあれで良いのか。

「飛べなきゃ死ぬ、か」

「そうですわね。妊婦も平時と変わらず動けますし、つわりもごく軽いのですわ。妊娠期間も短いですし」

「そう聞くとなかなかに凄いな。ハーピィは」

他の一般的な種族とは生態があまりに違うように思える。もしかしたら他の亜人とは 設計者(デザイナー) が別なのかも知れない。どちらかというと亜人というよりは魔物寄りなんじゃなかろうか。

「ちちー、おなかすいたー」

「おなかすいたー」

「はいはい」

幼ハーピィちゃん達が俺の周りに集まってご飯をねだってくる。この時期のハーピィちゃん達は頻繁に食事を摂るらしい。一回一回の食事量はそんなに多くないそうだが。一日に七食くらい食べるそうな。

「はぐはぐ」

「おいちい」

「たんとお食べ」

子供達はまだ食器を使って食事ができるほど手先――手羽先? 羽先? が器用ではないので、食事はできるだけ手づかみで食べられるものが良い。今回は厚く焼いた生地に果物とクリームを挟んだワッフルサンド的なものを用意してみた。とても好みに合ったようで、子供達が目を輝かせてかぶりついている。ああ、口の周りがクリーム塗れに。

「美味しいですわね」

イーグレットも子供達と同じものを口にしている。うん、なんだかものすごく物欲しそうな顔をされたので、イーグレットにも同じものを渡したのだ。好評なようで何より。

「しかし、こうしてみると多いな……」

「全部で十七人ですから」

ちょっとした保育園である。人間の子供よりも活発に動き回り、飛び回るので実態はよりカオスだが。

「この部屋が広めに作られた意味がよくわかったよ」

「広くて天井が高くてとても良いですわね、この部屋は」

この育児室は天井が普通の部屋の二倍は高く、数部屋分をぶち抜いて作られているので大変広い。幼ハーピィちゃん達はその部屋としてはかなり広大な空間を縦横無尽に駆け回り、飛び回っている。

ハーピィの子供達は本来こうやって野を駆け、自由に飛び回って身体の使い方を覚えていくのだそうだ。今までは家が狭くてこうして存分に駆けたり飛んだりさせてあげることが出来なかったので、たまに何人かでハーピィの子供達をメリネスブルグの城壁の外に連れて行って運動させていたそうなのだが、何せ子供達はこのバイタリティーだ。世話役のハーピィさんはクタクタになってしまっていたそうだ。

しかし、今はこの運動場というか育児室があるので、出入り口のドアさえしっかりしめておけば少ない人数で問題なく面倒を見られるようになった。これだけでものすごく助かったらしい。

「……しかしこれだけ多いと名前を覚えるのも大変だな」

いきなり十七人の娘ができていたと聞いて仰天したが、何より問題なのは数の多い子供達の名前を覚えるのが大変ということである。というか、今の所どの子が誰ちゃんなのか顔と名前が全く一致していない。

「あまり気にしなくてもよろしいかと。羽が生え変われば自ずと見分けもつきやすくなりますし」

「イーグレットとの子供はわかりやすいんだけどな」

「うちの子は大鳥種ですからね」

ハーピィさんは身体の小さな小鳥種と身体の大きな大鳥種に分かれている。大鳥種はイーグレットとエイジャの二人だけで、大鳥種の子供もイーグレットと俺の子供のスノウィーとエイジャと俺の子供のリーシャの二人だけだ。スノウィーとリーシャは子供達の中で群を抜いて身体が大きいし、顔つきも性格も違うから見分けが付きやすい。小鳥種の子供達は体格や活発な性格が似通っていてパッと見では見分けがつけにくいのだ。もう少しコミュニケーションを重ねていけば見分けも着くようになると思うけど。

「それにしても旦那様、私達の子供の面倒を見に来てくれるのは助かりますが、他の奥様達を蔑ろにしてはいけませんわよ?」

「勿論そんなことをするつもりはないんだけどな……」

「子供の世話に関しては私達だけでも十分できますから」

「ううむ、そう言われるとなぁ……」

俺としては知らない間に子供が出来ていて、しかも知らない間に産んでいて、子育てで苦労させていたという負い目がある。罪滅ぼしというわけではないが、もう少し彼女達の役に立ちたいと思っているのだが。

「元々私達の子育てに男性は関わらないものですから、週に一度か二度顔を出していただくだけでも十分でしてよ? それに……」

「それに?」

なんだろうか? とイーグレットに視線を向けると、彼女の視線は出入り口のある方向へと向けられていた。そこには数人のハーピィの子供達が集まっており、ほんの少し開けられた扉の隙間から誰かの顔が覗いているのがわかる。

「だぁれ?」

「おねーさんたちだぁれ?」

「あそんでくれる?」

扉の隙間から覗いているのはシルフィとメルティの二人であった。怖いよ、君達。

☆★☆

シルフィとメルティも交えて暫くハーピィの子供達と戯れ、馬車に揺られて王城へと帰ってきた。

育児室を覗いていた時は微妙に嫉妬オーラの漂っていた二人だったが、ハーピィちゃん達と接しているうちに嫉妬の炎も鎮まったようで、帰る頃にはご機嫌になっていたことをここに記しておく。

「私達にもちゃんと構うことを要求する」

「そうじゃそうじゃ」

「別に蔑ろにするつもりはないから!」

馬車の中ではシルフィとメルティに甘えられ、城に戻ってきたらアイラとグランデに甘えられた。グランデはニヤニヤしているので、単に面白がってアイラの行動に乗っかっているだけだろう。

「旦那ー、次はうちらっすよー」

「やっぱこういうのは平等にしてもらわないとねェ」

「私は……別に」

「そんなことを言っていたら置いていかれますよ」

離れた場所では鬼娘達と何故かそこに混じっているベルタさんがこちらを見ながら何か言っている。というか、トズメのケツを叩いているベルタさんから微妙に黒いオーラが出ているのが怖いんですが。