軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第291話~聖女のドヤ顔ダブルピース~

やぁ、コースケだよ。北方二国の侵攻を打ち砕いてその後の交渉とか北方国境地帯の諸問題にとりあえず筋道を立ててきた英雄のコースケだよ。え? 調子に乗るな? はい、すみません。

「実際の所、コースケがメリナード王国の最強戦力だということが白日の下に晒される結果となったわけだ」

「まぁ、最初からわかってた。コースケが危ない兵器を秘匿しているのは」

「前にあのクソ狐に拐われた際にインベントリの中身を全部放り出していきましたけど、あの時も私達の知らない武器がごまんとありましたからね」

ソファに座った俺の右隣にシルフィ、左隣にメルティ、膝の上にアイラという完璧な包囲陣を敷かれて逃げることが出来ない。

やっとこさ北部国境地域から戻ってきたその夜。食事を終えて三人で風呂に入り、風呂上がりの晩酌タイムで完全に包囲されてしまった。いやまぁ、もとより逃げるつもりもないんだけれど。

「コースケは私と出会った頃からそうなんだ。インベントリの中に私にも秘密の道具を隠し持っていたからな」

「また古い話を……あの頃はまだ立場が不安定だったんだから仕方ないだろ? その後は手斧とかクロスボウとか作るたびに教えてたじゃないか」

「でも、銃とかのコースケの世界の武器については秘密にしていただろう?」

「銃とかの近代から現代にかけての兵器は強すぎるし危険だからな。シルフィも報告書は読んだだろ? そんなに先進的とは言えない先込め式の魔銃でさえも二十倍の戦力を叩き潰せてしまうんだよ。しかも、今までのこの世界の戦と違って怪我人じゃなく死者が大量に出るような悲惨な戦になるんだ。本当に魔銃の製造方法だけは漏洩しないように気をつけろよ?」

魔銃はこの世界の技術だけで作り上げられた兵器だ。製造方法が漏洩すれば瞬く間に世を席巻するだろう。

「そう言えば、魔道士のアイラとしてはああいった誰にでも使える強力な投射兵器が蔓延ることに思うところはないのか?」

「思うところがないわけではない。でも、今はまだ軍用だから大丈夫。一般市民や冒険者、賊の類にまで普及させるのは危ないと思う」

「それは道理ですね。軍人以外の魔銃の所持については厳しい罰則を設けたほうが良いかもしれません」

「そうだな、法整備を早急に進めよう」

会話に色っぽさが足りないって? どうせこの後はどうあっても色っぽい展開になるから今くらいは真面目な内容で良いんだよ。

「それで、他には何を隠してる?」

膝の上からアイラの大きな瞳が俺の顔を見上げてくる。

「まぁ、武装が違うゴーレムのバリエーションをいくつかと、風魔法式推進装置とゴーレムコアを使った試作型の魔煌石弾頭巡航ミサイルくらいだな」

「魔煌石弾頭巡航ミサイル?」

「大体の距離と方角さえわかればメリネスブルグからアーリヒブルグに魔煌石爆弾を飛ばせる兵器だ」

およその飛行距離と魔力反応の多寡による街の位置の自動検知で攻撃目標を検知するので、精度がいまいちなのが欠点だ。判断を司るゴーレムに対する命令が『~km先に存在する街に飛翔し、魔煌石爆弾を起爆せよ』みたいな曖昧な内容にせざるを得ないからな。ゴーレムに街の名前をインプットしてもゴーレムにはそこが入力した名前の街なのかどうかを判断することが出来ないから、魔力反応の多寡で街かどうかを判断させるしか無いんだよ。GPSなんてものもないしな。

「もっとも、まだ試射もしてないんだけどな。モノがモノだけにそうそう試射もできんし」

「魔煌石弾頭を抜けば良いんじゃ――いや無理か」

「結構でかいし重い金属の塊だからな。目標のどこに落ちるかもわからんし、下手すると道を歩いてた子供とかに直撃するかもしれん」

「確かにそれは試射できないですね」

「ん、危ない。事前に通達して軍の駐屯地に向けて試射するといい」

「それなら大丈夫そうだな。施設に被害が出るかもしれないが」

俺を抜きにして話が進んでいく。こう、軍の施設なら多少被害出てもええやろみたいな雑さがちょっと面白い。恐らくメリネスブルグからだと標的にされるのは東側の聖王国との国境方面に展開しているレオナール卿管理下の施設だろう。今のうちに心のなかで謝っておく。

「他には?」

「ゴーレム技術を応用した強化外骨格を考えている」

「きょうかがいこっかく?」

「着るゴーレムみたいなもんだ。分厚い装甲とゴーレムのパワーを持ち合わせた鎧だな」

「それならゴーレムそのものを使ったほうが良いと思う」

「これはロマン枠だから」

確かにそれなら武器を装備させたゴーレムでいいじゃんという話なんだが、こういうのは男のロマンだから! ゴーレムアーマーを着て魔物の群れにに突っ込んですごいぞー! かっこいいぞー! ってやりたいだけだから!

「ゴーレムの装甲とパワーを持った兵が展開できるようになるのは画期的だと思うが」

「今の所コースケさんの命令でしかゴーレムは動かせませんしね」

首を傾げるアイラに対して、シルフィとメルティは俺のロマンに一定の同意を示してくれた。まぁ、そういう二人はゴーレムアーマーなんて必要ないレベルの身体能力を持っているわけだが。

「さて、続きはベッドの上で聞かせてもらおうか」

「ん、だっこ」

「はい、行きましょうねー」

言われるがままにアイラをだっこし、シルフィとメルティに背中を押されてベッドへと連行される。

随分露骨だなって? そらそうよ。何故なら――。

☆★☆

「やりました」

メリネスブルグに帰るなり、エレンがシルフィ達に対してドヤ顔ダブルピースをキメた。その理由は――言わなくてもわかるね?

「先を越されるとは……!」

「くっ、種族差が憎い……!」

「ぐぬぬ……」

はい。エレンが妊娠しました。

そりゃまぁその、向こうで半年近くも過ごしてすることをしていればこうなる。ちなみにアマーリエさんもエレンの後に同じく妊娠が発覚した。やはり人間同士だと子供ができやすいらしい。

「私だけ置いてけぼりですか……」

ベルタさんがじっとりとした視線を俺に向けてくる。仕方ないじゃないか、ベルタさんは一緒にいなかったんだから。あとハーピィさん達の圧力が凄い。目が爛々と輝いている。正直に言うと怖い。

「いやァ、あたし達にもワンチャンあると思ったんだけどねェ?」

「残念だったっすね」

「そ、そうね」

相変わらずトズメはこういう話題には弱いな。そういうところが可愛いんだけど。

「残念です」

そう言いながら本当に残念そうな顔をしているのはセラフィータさんである。セラフィータさん、シルフィが物凄く微妙な表情をしているからステイ。ついでに言うとアクアウィルさんが俺に養豚場の豚を見るような目を向けてきているし、イフリータは宇宙猫みたいな表情になってるし、ドリアーダさんはものすっごいニコニコしてる。俺的にはドリアーダさんが一番怖い。あれは捕食者の目だ。

グランデ? グランデは全く焦っていないというか、子供なんて自然にできればいいし誰が先とかどうでも良いと考えているようで、シルフィ達が騒いでるのをあっちの隅っこでニヤニヤしながら見守ってるよ。

「こう、順序というものがあるとは思わないか?」

「長命種に合わせていたら私のような短命種はよぼよぼのおばあさんになってしまいますので」

「そ、そこまで時間はかからないもん!」

余裕の表情を崩さないエレンに対し、女王の仮面が剥がれ落ちたシルフィが地団駄を踏む。可愛いけど地団駄で踏みつけられた石材の床に罅が入りつつあるからやめてあげてくれ。修繕するのは俺なんだぞ。

「これは由々しき事態ですよ、コースケさん」

「ん、序列が乱れる」

メルティとアイラが真面目な表情で俺に詰め寄ってくる。そうは言うけれども、こればかりは授かりものだしなぁ。

「むーっ! しばらくコースケはわたしいがいとするのきんしっ!」

「それは横暴」

「いくらシルフィの言うことでもそれは納得できないですね」

「ずるいよ!」

「それはずるいわぁ」

シルフィの独占発言に対し、ぎゃーぎゃーピヨピヨと異論が巻き起こる。アカン、このままだと壊れる。この城が物理的に。

「ストップ! ストップだ!」

大声を上げながら一触即発のシルフィ達の前に進み出る。争いを止めるには俺が身を挺するしかあるまい。

「赤ちゃんは授かりものだから。誰が先とかで順位が決まるものじゃないから」

「この結果が神の思し召しということです」

「やめて! 場を収めようとしてるのにドヤ顔で挑発しないで!?」

エレンめ、さては少し面白がっているな? 悪阻も若干治まって少し元気が出てきたからってはしゃぎ過ぎだぞ。

「つまり、コースケさんは責任を取ってくださるということですね?」

「えっ」

責任ってなに。やだこわい。

「責任は取るよ? ちゃんと働いて皆を食べさせていかなきゃな!」

「そういう方向の責任ではない」

「争いが起こりつつある責任ということです。意味はわかりますね?」

「ははは……あ、ちょっと用事を思い出し――」

走って逃げようとしたらがしっ、と両肩を掴まれた。俺の右肩をシルフィが、左肩をメルティが笑顔で掴んでいる。もう駄目だ……おしまいだぁ……逃げられるわけがない。

結果、しばらくの間、俺はメリネスブルグに滞在して皆の相手をすることになった。まぁ、暫くはメリネスブルグでシルフィ達とのんびりしたいと考えていたから問題はない。問題は。ちょっと夜が激しいのには目を瞑ろう。

しかし、意外と早くその平穏は破られることになった。聖王国から使者が訪れたのだ。