軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八十七話 モンスターハウスを切り抜けよう

「走れ走れぇえ」

全力疾走のヒッポーくんの上で風音が慌てて出口の方を見るが、すでに三十体近くの数の魔物が陣取ってこちらに構えていた。

「ちぃ、スペル・ファイアストーム・スライサー!!!」

「当たって! 雷よ、雲の中を走れ!!」

風音とルイーズの魔術が同時に走る。

「「「グギャアアアアアアア」」」

目の前の何匹もの魔物が吹き飛ぶ。

「ティアラ、フレイムナイトで壁っ!!」

「は、はい」

風音の指示にティアラが6体のフレイムナイトを呼び、風音たちの前の魔物を押さえ、道を造る。だがまだ出口までには十数を超える魔物がいる。

「続いてジークッ、やれるね?」

「はいっ」

ジークが白剣を振るう。馬の上からの無茶な姿勢で命中が鈍いが、敵そのものが多い。どこに撃っても今なら当たる。

「うりゃあああああああ!」

三発目のホワイトファングで、出口までの道が開けた。

「うっし。そんじゃあスキル・ゴーレムメーカー・ヌリカベくん及びヌリカベくん及びヌリカベくん及びヌリカベくん及びヌリカベくん!」

舌を噛みそうなほどの早口で風音がゴーレムのヌリカベくんを呼び、出口までの道の左右に壁ができた。だが天井の割れていない部分から上ってきたミリタリーアントが蟻酸を吐きながらボトボトと落ちてくる。

「マント被って!」

風音の指示で全員がマントをアタマまで被る。いや、ルイーズだけは被らずにスペルを詠唱した。

「雷よ、雲の中を走れ!!」

放たれた雷の威力で落ちてきた6匹ほどのミリタリーアントがしびれて転がる。

「グッ」

相打ちにルイーズが肩に酸を浴びてしまい、呻いた。だが今はそれを気にしている余裕はない。

「走れぇぇえええええ!!!!」

そしてジンライと弓花がまだ息のある魔物にトドメを刺し、風音が爆炎球を二つ投げつけて残りの敵を一掃しようやく出口にまでたどり着いた。

「来ますわ、カザネッ!!」

ティアラの叫びに風音はヒッポーくんを飛び降り、地面に杖『白炎』をつく。

「スキル・ゴーレムメーカー・ヌリカベくんオニガワラバン」

風音のスキル発動に伴い、通路一杯に壁が出来上がる。

「グルウウウ」

「ギャキャッ」

壁の裏から魔物どもの叫びが響く。

「ふぅ、なるべく頑丈なのを造ったけど持つかな。これ?」

「普通は別の出口から獲物を探しに行くだろうな。それに時間が経てば魔物の本能が戻り、異種族間で争い始めるだろう」

ジンライも一息ついて、答える。

「そっか。じゃあ大丈夫かな。こっちはまだ未踏地域だね。ダンジョンマップにも載ってないけど、とりあえず逃げよっか?」

「ああ、そうしよう。さすがにあの数を相手にするのは骨だろう」

ミノタウロスは50出たとジンライたちは言っていたがさきほどのは200は超えていたように見えた。あれをすべて倒しきるのは難しい。

バキッ

「は?」

不意に不穏な音が聞こえてきた。

「まさか壊される?」

「そうか。オークがいたか」

「ああ、そういえばいたねえ」

風音は疲れた顔でそう返した。確かに数は多くなかったが連中の姿はあった。オークの怪力が壁を徐々に壊していく。

「ブモォオオオ!!」

そして壁が崩される。

「ルイーズさん、悪いけどお願い!」

「タイミングが怖いわねえ」

ルイーズは爛れた肩を庇いながら「雷よ、雲の中を走れ」と再度唱え、突入してきたオークたちにぶつける。もっともオークの体力というのはかなり高くその程度の魔術では殺すことはできないが、

「弓花、行くぞッ」

「はいっ」

ジンライと弓花が走り、それぞれ一撃でオークのコアを破壊した。

「二人とも下がって」

風音の言葉に、どちらも引く。そして、

「ジーク、ホワイトファングを横薙ぎに撃って」

「うわぁあああああああ!!!」

ホワイトファングが通路に入ってきた魔物を一掃する。

「スペル・ファイアストーム・スライサー!!」

さらに風音が天井部に進んでいたミリタリーアントたちを切り裂いた。

「ユッコネエ出て! スキル・ゴーレムメーカー・タツヨシくん!!」

敵の波が一旦収まったところで風音が頼りになる仲間を呼び出す。

「タツヨシくん、投擲モードで敵を討って。ユッコネエはジンライさんと弓花と連携で敵を倒して!」

タツヨシくんが頷き、ユッコネエが「にゃっ」と答える。

「私も神狼化行きます!」

「ぬう、この若返った肉体なら100や200どうってことないわい」

ユッコネエと共に神狼化弓花とジンライが進む。その背後にはすでに召喚された銀狼も一緒に走っていった。

「ティアラはフレイムナイトでここを護って。ジークはタツヨシくんに投石用の石を渡して」

「分かりましたわ」

「任せてください」

風音の言葉にティアラとジークが頷き、風音は後ろで岩により掛かってるルイーズに駆け寄る。

「スペル・ヒール」

風音がスペルを唱え、ルイーズの肩を治療する。

「ふぅ、効くわねえ」

「ごめんね。ヒールも強化しとけば良かった」

「何言ってんのよ。もう」

風音の言葉にルイーズが笑う。目の前の少女がよくやってるのはルイーズにもよく分かってる。

「私も出て闘ってくる。だからタツヨシくんが外した敵の始末を御願い」

「任されました。いってらっしゃい」

ルイーズの言葉に風音は頷いて、そして走り出す。

「まったく。男の子だったらきっとベタ惚れしてたわね」

『余よりもか』

メフィルスの質問にルイーズは「さてね」と返事をする。残念ながらルイーズが恋をするのは男だけ。仮定は無意味だ。

「投擲前の一発だよ。タツヨシくん、ヒューマンダイブッ!!」

そしてカザネバズーカが敵の密集地帯に炸裂する。

**************

戦闘はさらに30分は続いた。弓花の神狼化も解け、ジンライもギリギリのところまで闘っていた。ユッコネエも毛並みを乱しながらも最後まで奮闘し、タツヨシくんの投石はダンジョンの壁の形が変わるまで投げつけられた。ティアラ、ジーク、ルイーズも最後まで戦い抜け、遂に最後の一体のバロウタイガーを風音がキリングレッグで蹴り殺したことで終了した。

「やったぁあああああああ!!!!!」

風音はそう叫んでドテンと大の字に転がる。

爆炎球と白氷球も使い切り残弾はゼロ。黒岩竜用にと思っていたが止むをえまい。温存し続けて終われるような数ではなく実際数十の魔物を仕留めたのはその魔法具だった。また風音のレベルは2上昇した。途中でキリングレッグもLv2に変化し、戦っている過程で威力が上昇しているのを確認した。さらに狂鬼の甲冑靴も若干赤身を帯び、形状も微妙に刺々しく変化していた。ステータスを見ると筋力にプラス補正が掛かっていたので、なにやら成長している模様。スキルを発動しない状態の普通の蹴りも威力が大きくなっているようだった。

「うわー、ひっどい状況だなあ。よく無事だったなあ」

神狼化中にはあまり疲労しないため、弓花は比較的体力をまだ残していた。

「所詮雑魚ばかりだったからな。しかしあの数には参った」

ジンライは肩で息をしながら答える。さすがに10年若返ってもこれだけ暴れれば疲労は大きい。

「いやー。ホント、酷かったわねえ。全滅させちゃったの? ひとパーティで?」

ルイーズも嬉し笑いを浮かべながら軽口を叩いている。ティアラもジークも安堵しながら二人で背中を隣り合わせて地面に座り込んでいた。

「で、お宝があるわよ」

「マジでっ?」

ルイーズの言葉に風音が立ち上がる。確かに部屋の中心には宝箱が置いてあった。それもいつものよりも随分と豪華そうな宝箱だ。

『モンスターハウスが出るとその場に一際大きい宝箱が出るのよ。恐らくは褒美のつもりなのだろうよ』

メフィルスが風音にそう告げる。

「誰からの?」

『さてな』

「いいからさっさと開けちゃいなさいよ」

ルイーズがわくわくしながら風音の背中を押す。

「う、うん」

風音はそう言われて宝箱の前まで来て、そしてグッと箱を開けた。

「叡智のサークレット……」

風音が呆然と中に入っていたそれを見る。

「ふむ。どこかで見たことがあるな」

「幻惑の一切を見破る魔法具の一つだよ。すっごい強力なヤツ」

「ああ、ジークの装備してるヤツか」

弓花の言葉にジークが反応するが、ここで言われているジークとは召喚英霊のジークである。風音が鑑定メガネでそれを見てみる。

名称:叡智のサークレット

レア度:A

効果:命中力の強化と遠隔視の付与、そして幻術の類の一切を無効化する魔法具。精神系の状態異常も消し去る。

「やっぱり本物だぁ」

風音が心底嬉しそうにそれを見た。

「じゃっ、ちょっとつけてあげるわねリーダー」

「え?」

ルイーズは風音からそのサークレットを取ると、風音の髪をかき揚げてサークレットを風音の額に飾った。

「いいの?」

「そんな顔されたら取り上げるわけにもいかないでしょ?」

ルイーズがそう答える。その場の誰もが頷いた。

「うん。ありがとうね、みんな」

風音はそう言って笑う。満面の笑顔だった。

(この笑顔にやられるヤツが多いんだよなあ)

と、その1人である弓花は笑う。そしてみんなが笑った。

それは勝利の笑みだった。