軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八百八十二話 捜索をしよう

雷鳴の如き轟音が森の中を木霊する。それと同時に発せられた巨大な気配を前に、森の中にいた鳥たちが一斉に飛び出していき、野生動物たちが逃げ出していく。

そんな音と気配の中心にあったのはタツヨシくんケイローンであり、サンダーチャリオットトレインであり、トレインの上に仁王立ちして高笑いしている風音であった。

「『魔王の威圧』を薄く、広く、思ったよりも集中力がいるね。これは」

風音がひとりそう呟き、普段はやらない魔王っぽいポーズを取る。そうした方が微妙に効果が高い気がしたのだ。

サンダーチャリオットトレインによる車輪の雷鳴と風音の『魔王の威圧』によって、遠く離れていてもガルーダ族ならばすでに察知はしているはずである。例え、そこに敵がいるのか、或いは罠なのか分からずともガルーダ族は否応なしに動かざるを得ない。

そして、いくつかのガルーダ族の気配が集まり始めている中で、風音たちから少し離れた場所では直樹たちが周囲を伺いながら待機していた。

「ここからでも姉貴の気配が届いてくるな。ああ」

少しばかりフルフルと震えている直樹を、その場に共にいるモーラやリサたちは自分たちと同じ畏怖を感じているのだろうな……と理解していたのだが、直樹が打ち振るえているのは姉の気配を一心に受けているためである。

そのことを察しているジンライがため息をつきながら口を開く。

「さて、ああしてカザネたちが囮になっておるのだ。ワシらはその隙にライトニングとシャークキラーのメンバーを回収する。異論はないな」

その言葉に、姿勢を正した直樹と、その他のメンツもコクリと頷いた。

その場にいるのはユッコネエに乗った直樹とジュエルカザネにモーラ、クロマルに乗った弓花とリサ、それにシップーに乗ったジンライとタツオ、ジョーの三組だ。

今回は風音たちが囮を引き受け、メール使用による連携が可能な直樹と弓花と、コマンドゴーグルを通じて同じコマンドゴーグル持ちのレームと通信ができるタツオを組み込んだ捜索班に分けられていた。

直樹たちは、風音がダウジングで指定したジョーとリサの仲間たちがいるであろう無数のポイントを分担して虱潰しに探していく予定であるのだ。

それからジンライが「それでは行くぞ」というと、全員が頷き、行動開始となる。

「では、そちらも頼むぞ」

「直樹はよりいっそう気を付けてよ」

「分かってるさ」

ジンライ組に続き、弓花組も直樹たちから離れて森の中に消えていき、直樹も探索ポイントが記述されているマップウィンドウを開きながら「そんじゃあ目的地まで頼んだぜ」とユッコネエの頭をポンと叩いて走らせ始めた。

その後ろに乗っているモーラは強ばった顔をしながら背後をチラリと見て、直樹へと声をかける。

「凄まじい音ですね」

「ああ、姉貴の自慢の召喚馬車だからな。正直、目立ち過ぎているとは思うんだが、今は役に立ってるな」

本当に行く街行く街で恐る恐る見られているのだ。その視線が居心地悪いと直樹は思うのだが、対して風音もジンライも『カッコいい』と認識しているようだった。

「それに恐ろしい気配を感じます」

「それは姉貴の……威圧だな」

さすがに魔王の、とは言えなかった。

「最近は使ってなかったけど、今回は敵を呼び寄せるのに利用するつもりらしいな」

風音の『魔王の威圧』は雑魚戦では有効だし、強者に対してもそれなりに効くのだが、どちらかと言えば一対多数で効果を発揮する類のスキルだ。その上に相手のレベルや精神状況によって効果が安定しないし、仲間にも影響があるし、さらには大抵は普通に戦った方が早く終わるため、最近では出番がなかったのである。

「ま、ともかくさ。姉貴たちがガルーダ族を引き付けるように動いている間に、俺らがあんたらの仲間を見つけないとな」

「本当にこの場所のどこかにいると?」

モーラはマップウィンドウを撮った写真を見ながら尋ねる。こちらは分かれる前に風音にもらったもので、捜索ポイントもマーキングされている。

「確実とは言えないが、姉貴はダウジングで隠し部屋や温泉を何度も見つけている実績がある。無闇に探すよりは確率が高いはずだ」

「なるほど。白き一団のリーダーは多芸とは聞いていましたが、そこまでのものですか」

驚きの混じったモーラの呟きに直樹は自慢そうに笑い、ユッコネエは「にゃ」と鳴いてヒゲを揺らした。

「後、俺もユッコネエも探索用の能力を持ってるしな。近くにいれば察知できると思うから、そこら辺は期待してもらってもいいぜ」

「何から何まで済まない」

モーラが少しばかりうつむいてそう口にする。メカジンライに助けられてからというもの、ジンライが仇だからと反発する気すら起こせないほどに、ここまで白き一団におんぶにだっこの状態であった。そのモーラに直樹が「気にするなよ」と言葉を返す。

「冒険者は助け合いが常だろ。俺のお師匠さんもそう言ってたし、だから俺は生きているわけだしな。まあ、借りと思うなら後で返してくれればいいさ」

「師匠? それはジンライ……殿か?」

「いんや。ジンライ師匠も俺の戦いの師匠だが、お師匠さんは魔術師だ。この世界で生き方を教えてくれた。もう何年も会ってないけどな」

そう言って直樹は己の過去を懐かしむ。

ひとり、この世界に放り出された直樹が地竜モドキから必死で逃げた先で出会った人物、竜滅の魔女と呼ばれた豊満な胸の女性こそが直樹の師匠であった。

直樹の初めてを散らしたその人物は、とある事情で直樹と別れ、それから直樹はソロで冒険者家業を続けた後にライルやエミリィとパーティを組み、やがて風音たちと再会したのである。

(お師匠さん。今は何をしてるのかな……元気だといいけど)

そんなことを直樹が思い出して脳内では回想編が開始されていたが以下略である。

そして、直樹たちが指定されたチェックポイントを目標に移動し、三つ目のポイントに辿り着くと、そこにはモーラの仲間の姿はないものの、何かしらの動きがあった跡が残っていた。

「いた……みたいだな」

「ええ。この太刀筋。多分、ヴァリオのものだと思う」

モーラの言葉に直樹が周囲を見回し、感嘆の声を上げる。

「さすが、リサの兄貴だけはあるか。これは凄い……けど」

その場には、無数の切り裂かれたガルーダたちの亡骸と残骸となった車両が転がっていた。ジンライとの勝負には敗れたが、ヴァリオの実力は相当に高い。

どうやらこの場でヴァリオは敵と応戦して相手をほぼ壊滅状態に追い込んだようである。だが、直樹には気にかかることがあった。

「ユッコネエ。頼む」

「にゃっ」

それから直樹はユッコネエにヴァリオの匂いを探させると、トコトコと巨猫は歩いて、少し離れたところで地面に付いている血痕を見つけた。それは転々と森の中に続き、追いかけてみたが途中で途切れていた。

「血の跡はここまでか。ユッコネエ、匂いの方はどうだ?」

「にゃー」

ユッコネエが顔を第八遺跡の方へと向ける。それが匂いの先だとユッコネエは「にゃにゃっ」と鳴いて示した。

「なるほど。自ら第八遺跡に戻った……って、わけじゃあないよな。こりゃあ」

直樹が眉をひそめながらそう口にすると、モーラも険しい顔で頷く。

「仲間たちを助けに……という可能性もあるでしょうが、この出血量では」

「ガルーダ族を倒したけど力尽きたところを捕らえられた

か、或いは倒しきれずに捕まったか……だが殺されずに連れて行かれたってことか? こりゃぁ、どういうことだ?」

眉をひそめる直樹に、モーラも心配そうな顔をする。ヴァリオの状況は良くないようだが、何が起きたのかが分からない。

『敵がきます』

そのとき、ジュエルカザネがとっさに警告を告げた。そして、直樹にも戦闘車両のモーター音が聞こえ始めて、眉間にしわを寄せた。

「敵? くそっ、バレたのか?」

「そんな気配もなかったはずですが」

モーラが訝しげな顔をするが、直樹がふと上を見上げると、木の上の設置された装置に気付いた。

「クソッ、監視カメラか。ジンライ師匠がいつの間にか見つけられたって言っていたけど、あれのせいかよ。妙なところで頭いいな、あの鳥ども」

直樹は魔剣を飛ばして監視カメラを破壊すると、すぐさまユッコネエに乗ってその場から離れ始めた。

ガルーダ族の車両の音が近付いて通り過ぎるのを感じながら、直樹たちはそれらをスルーして次のポイントへと向かい、そこでシャークキラーの四兄弟のひとりとライトニングのメンバーふたりを発見することに成功したのである。