軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八百七十五話 ワイフと戦おう

そして、戦闘が始まる。

風音の方へと迫ってくるのは二十体のガルーダ・ハイナイトと二体のドン・ガルーダ。それらを従えてピヨピヨというよりもドムドムという感じで走ってくる巨大ひよこのイライザだ。

「てか、マジででかいひよこなんだけど……あれもガルーダなの?」

『イライザは昔から幼く見られていたからな。ベビーフェイスと言われてよくからかわれたものだ』

ハハハハハ……と軽快に笑うカルラ王に風音は「ベイビー!?」と驚愕するが、風音たちを狙う瞳は明らかに殺し屋のソレであった。どう考えても無垢な赤子ではない。純粋な気持ちではあるようが、それは100パーセントの純粋な殺意であった。

「ともかく、あれが強そうなのは確かだよね。とりあえずハイナイトには狂い鬼とダークオーガ軍団を当てるよ。いっといで!」

風音がそう声を上げると、イライザとドン・ガルーダの後ろに付き従っていたガルーダ・ハイナイトの前に、瞬時にベヒモス・ビーストに乗った狂い鬼とダークオーガ軍団が並び立った。なお、黒曜竜ジーヴェが鬼皇の竜鎧に宿ったことで、ダークオーガ軍団も地味にパワーアップはしている。

それでもガルーダ・ハイナイト相手では力不足な面は否めないが、狂い鬼とベヒモス・ビーストのコンビの力があれば抗することは可能なはずだった。

「続けてはっと」

そして風音が視線を向けたのはイライザを護るようにして動いているドン・ガルーダたちだ。

ドン・ガルーダはデップリとした体格をしているが、強力なパワーと見た目以上の俊敏さを誇っている。魔物を生み出すだけではなく、大きなメイスを振り回して自ら戦うことにも長けたガルーダ族の中でも強力な存在だ。

それから風音は横を走るユッコネエへと声をかける。

「あいつはユッコネエ、ドラゴンになって攻撃して。それにタツヨシくんツインソードもフォローでお願い! タツオはクリスタルシールドでふたりの防御に回って」

「にゃー!」

『分かりました母上』

風音の指示によりユッコネエは黄金のドラゴンへと変わって飛び上がり、ドン・ガルーダたちへと高熱ガスブレスを吐く。

「クケーーーッ」

だが、それは魔力や闘気の攻撃を相殺する能力『相殺共鳴』によって防がれ、ドン・ガルーダたちはブレスを吐き終えたユッコネエドラゴンへと飛びかかった。

『させません』

そこにタツオの乗るタツヨシくんツインソードが一体のドン・ガルーダの攻撃を受け止めるが、もう一体はユッコネエドラゴンの腹へとメイスをブチ当て『にゃぁああああ』という咆哮が轟き、地面へと落下する。

「ユッコネエ!? くっ、イライザさんが来るか」

そんな状況の中であるにも関わらず、十騎士であるイライザは構わず風音へと直進してくる。イライザは敵の中心が誰であるのかを本能的に悟っているのだ。両手に握られているゴツい斧を持つ翼にも力が入っている。

その様子を見て、風音が冷や汗をかきながらもどうするべきかを思考する。

(さーてと、ロクテンくんは大剣装備の改修で今はないし、ケイローンとホーリースカルレギオン、アダミノくんは直樹たちと一緒だしね。ん?)

風音が考え中に、『ふんっ』と言いながらカルラ王が風音の頭の上に乗った。

「あれ?」

『私はこちらだ』

「まあ、いいけどさ」

できればタツオの護衛をしていて欲しかったが、もう状況は動いている。それからカルラ王が風音に尋ねる。

『それで、リーヴレント化で挑むか?』

その言葉に風音は即座に首を横に振った。

「うーん。あれは使い勝手はいいんだけど使いこなせていない私だと決め手に欠けるからね。よし。ナビ、ジュエルカザネでイライザを足止めして」

『了解しました』

虹杖の先にある 金剛石(マナダイヤ) の塊が飛び出して、風音の形をして駆けていく。途中で 魔金剛石(マナダイヤ) のボディの内部を空洞にし、全体を大きくしたお相撲さんのような姿になってジュエルカザネはイライザと激突すると、風音は虹杖を掲げてスキルを発動させる。

「そんで、スキル・ソードレイン!」

空中に大型格納スペースの入り口の魔法陣が出現し、その中から剣が集まってできた東洋竜が飛び出してくる。

それはハイヴァーン公国でのガイエル戦とは違い、形を保ったままの姿の刃竜だ。それが上空からジュエルカザネと戦っているイライザへと突撃していく。

「よし刃竜。やっちゃえ!」

己の頭の上に旦那を乗せているにも関わらず、風音はジュエルカザネで足止めしている隙に上空から一気に串刺しにする腹積もりであった。だがその状況を見てカルラ王が叫ぶ。

『マズいぞ。避けろッ』

「うえっ!?」

その言葉は決して妻に向けられたものではない。

そして、風音は見た。両手に持った二つの斧を振るったイライザが最初に接近していたジュエルカザネを吹き飛ばし、それから降り注ぐ大量の剣を次々と弾き、剣の雨を風音の方へ飛ばしてきたのだ。

「嘘!? そんなのありなの」

『防御しろ。あれではイライザには勝てん』

凄まじい勢いで剣の雨が風音に降り注ぐ。大部分は暴風の加護によって逸らされるが、すべてを防ぎきることはできない。

「あぶなっ」

風の壁を抜けた剣を風音はマテリアルシールドで弾き、その繰り返しが終わった頃にはもう剣にかけられたスキル『ソードレイン』の効果も打ち消されていた。その光景に風音が愕然とした顔をする。

「まさか力業で!?」

『来るぞっ』

「うぉっとぉ。スキル白金体化」

続けて風音は全身を 白金(プラチナ) 色に輝かせて己の身体能力の強化を行うと、背から生やした黄金の翼にドラグホーントンファーを持たせて構えた。

「クケェエエッ!」

「負けないよッ」

迫る斧を風音はトンファーを回転させて受け流す。

風音は近接戦は得意ではないが、それでもトンファー術の研鑽を毎日積み続けている。そこに『直感』などのスキルが加わることで、強敵の攻撃を受け流すことすらも可能にはなっていた。

だが、それでも攻撃にまでは手を回せない。だから風音は空いた手でマテリアルシールドを放ってイライザの身体を弾き、そのまま接近して蹴りを見舞った。

「おおおおおっ!」

続けて、トンファーを、蹴りを、虹杖を振るって暴風の加護でイライザの構えを解き、さらに回転蹴りで斧を弾いて懐に飛び込んで、次々と攻撃を繰り出していく。

「クッケェエエエ!?」

そのコンボにより風音の身体の闘気が徐々に濃くなって攻撃の威力が増し、それには先ほど剣をすべて弾いいたことで疲弊しているイライザも防御一辺倒に回るしかなかった。

「一気に決めるよ!」

そして15コンボを達成してスキル使用条件が整うと、風音は真っ赤に輝く拳を突きだして、スキルを発動させる。

「スキル・爆神掌!」

溜められた闘気が技に乗って一気に放出される。だが、イライザが同時に咆哮した。

『クケェエエエエッ!』

それはドン・ガルーダと同じ『相殺共鳴』と呼ばれる能力。集束した闘気を放つ『爆神掌』はそれで消滅し、風音の身体は無防備となった。

「しまっ」

『ええい。翼よッ』

そして、イライザの両手の斧が風音を切り裂こうと振るわれたが、それが風音に届くことはなかった。カルラ王の翼が伸びて斧の一撃を弾いたのだ。それはカルラ王のスキル『神速の守護翼』。その状況に風音の『直感』がイライザの隙を教えてくれる。

「食らえ。スキル・黒曜角!」

そこに風音が虹杖を突き出しながらスキルを使用すると、杖の先に黒い角が出現したのだ。

それは黒曜竜ジーヴェのスキル『黒曜角』。黒い光を放つそれを風音はイライザへと一気に突き刺した。

「クケーッ」

その攻撃にイライザが苦痛に顔を歪め、斧で角付きの虹杖を叩き抜こうとするが、それは虹杖に付いている鷲獅子竜の羽根から発生した暴風の加護の力で弾かれ、届かない。

「そんで、これで終いだよ」

風音は『ハイパーバックダッシュ』で残像を残して瞬時に後方とへ下がると、両手をかざして必殺のスキルを放った。

「スキル・神の雷!」

そして、白き雷が虹杖へと当たるとそのままイライザの体内へと通り、その全身が白い光に包まれたのであった。