軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九話 クエストを受けよう

「うーん」

ギルドに登録した翌朝。コンラッドの街を風音と弓花は歩いていた。

「怠そうね風音」

「朝はやっぱりダメだね。人間は昼に起きて朝は寝るものだよ」

「いや、健康的にいきなさいよ。ただでさえ、こっちの生活リズムは朝早くて夜早いだから」

「うはー、まあ夜起きててもゲームも出来ないしいいんだけどね」

「ゲームはともかく娯楽は確かに少ないんだよね。こっちは」

「だねえ。まあ、とりあえずは冒険者ギルドでクエストとインストラクターを探そうよ」

「ラジャー」

という流れで風音たちはギルドの事務所に向かっていた。

「あれ?」

「どうしたの?」

「知った匂いがする。事務所にプランさんに、親方もいるみたいだねえ」

くんくんとする風音に弓花は「犬かお前は!」と心の中でつっこみを入れるが

(ああ、あのスキルか)

と実際に『犬の嗅覚』だったなと思い出す。

二人が冒険者ギルドの事務所に入ってみると風音の言葉通り受付にはプランと親方がいた。

「よう嬢ちゃんがた」

「おやあんたたちかい。ちょうど良かったね」

二人の挨拶に「おはようございます」と返す風音と弓花。

「親方どうしたんですか」

「おう、実はモンドリーの調子が思ったよりも良くなくてな。もうちょいこの街に残ることにしたんだわ」

「モンドリーさんが?」

弓花の心配そうな顔に親方は気軽に言葉を返す。

「そんなに気に病むこたぁねえよ。一週間もありゃ治るって医者にも言われてるしな。ま、そんなわけで滞在費稼ぎにクエストでも受けようと思ってよ」

「なるほど。それでプランさんのちょうど良かったというのはなんですかね?」

「それがね。こちらのジョーンズさんがあなたたちがいるなら組んでみたいって言っててね」

「いいの?」

風音は思わず聞き返す。親方のレベルは確か32はあったはずだ。昨日の戦闘も馬とモンドリーを守ってでなければ彼ひとりで十分対応できただろう。

「まあな。嬢ちゃん等には世話になったしよ。そっちもまだ初心者みたいだからインストラクター代わりに色々と教えてやれると思うんだが」

「本当に。それは助かるかなぁ」

風音は嬉しそうに親方にいう。その笑顔に親方もにんまりと笑って頷く。

「だろう?」

(ああ、出たわ。風音スマイル!)

その横で弓花が来たわねという顔で風音を見ていた。

中学からの付き合いだが、この無表情の中に時々現れる天使の笑顔にやられてしまう男のなんと多いことか…と弓花は思う。

ゲーム好きも高じて男子との会話の距離も近く、風音は中高ともに一部でアイドル化していたという事実がある。

恋愛感情よりも庇護欲の方が強く駆り立てられるようで、教師や女子にもそれは浸透していたのだからいじめにもあわなかった。

(きっと、それはこっちでも有効なんだろうな)

親方の反応を見るとそう考えずにはいられない。

風音は弓花を男の子と仲良くなるのが早いと考えているが、弓花にしてみれば正反対の感想がでるだろう。

「なあに。助け合いが冒険者精神ってヤツだからよ。ユミカもいいか」

「ええ。熟練者の方といっしょにやれるなら心強いです」

「そうこなくちゃな。それじゃあプラン、さっき言ったとおりこいつらとの共同クエストで行かせてもらうわ」

プランも特に反対することもなく頷く。

「あんたが一緒なら安心だよ。それでどの依頼を受けるのか決まってるの?」

その言葉に、親方は前もって見ていたのだろう閲覧用のボードに貼り出された紙をとり、プランに差し出した。

「おう。これだ」

それはアルゴ山脈に生息するグレイゴーレムの素材採集クエストだった。

***************

「馬車があるってのはいいねえ」

風音が外を見回しながら口にする。

「まあ、犬どもに狙われやすいってのはあるがな。うちのはエンチャントを付けてるからちょっとやそっとじゃダメージ受けねえ」

「エンチャント? もしかして首の鈴のこと?」

風音は馬の首についている鈴を見る。魔力反応があるのだ。

「よくわかるな」

親方が感心するがこれもウィンドウの機能の一つだ。

「魔力は馬自身のものを使うんだが、全身をコーティングするタイプでな。レイダードッグ相手ならそうそうやられることはねえよ」

「ほー、なるほど」

風音は興味深そうに馬の首に掛かっている鈴をみる。その横で弓花が親方に質問をする。

「そういえば親方さんって、なんの親方さんなんですか?」

ああ、そういえばと風音も思う。モンドリーが親方と言うのでそのまま口にしてたが、どういった職業の人なのかは聞いていなかった。確かプランはジョーンズと言っていたが。

「あん。言ってなかったっけか? 鍛冶師だよ。鍛冶師」

その言葉に風音が反応する。

「もしかして魔鋼も扱える?」

「おうよ。その鈴も俺が作ったヤツだぜ。魔術を込めたのは別だがよ。ま、今は移動準備のため休業中だけどな」

「そういえば襲われたときも街の方から来てましたよね」

昨日、レイダードッグに襲われていたとき、馬は風音たちの方を向いていたし、街とは逆から来るのなら風音たちとすれ違っているはずだった。

「ああ、モンドリーの怪我もあったから引き返したんだが、家はウェンラードにあんだよ。商売道具もそっちだから仕事が出来なくてな。こうしてバイトすることになったわけだ」

「そうですか」

「ああ、よし。着いたぞ」

親方が馬を止める。

アルゴ山脈への入り口。横にある無人停留所に馬を引き、止めておく。

「大丈夫なんですか?」

「ま、見とけ」

親方が鈴をチリンと鳴らすと馬が見る見る石化していく。

「うわぁッ」

弓花が悲鳴を上げる。

「これ、石化なの?」

風音も驚きの顔で親方をみる。

「いや石になったように見えるが命術の一種でな。存在の固定という術らしい。一定ダメージを受けても術が解けるだけで石みたいに壊される心配もないし、中の馬も特に苦しいわけでもないから術を解きゃピンピンしてるってえ寸法よ」

「そういうのもあるんだ。これって馬車とかの標準的な装備なの?」

「いやこいつはまだ試作品でな。それに市場にでても相当値が張るんじゃねえかな」

「ふーん」

「ともかくこれで犬ころに食われたり誰かに盗まれる心配もないってこった。さっさと行くぜヤロウ共」

「いや、ヤロウ違う」

風音の言葉にガハハハと笑って親方は歩き始める。

風音と弓花もその背中に慌ててついていった。