作品タイトル不明
第八百五十五話 大型遺跡に辿り着こう
森の中を巨大な二本足の機械が進んでいく。
木々をメキメキと倒し、大地を揺らしながら、三機のバスターウォーカーがかつてガルーダ・ハイライダーの駐屯していた場所へと向かっていく。その場所へは先ほどバスターウォーカーから十を越える砲弾が放たれ、今では大地が抉れて土煙が上がっていた。
そこにバスターウォーカーは向かっていたのだが、動きの遅いバスターウォーカーでは辿り着くまでには、まだしばらくの時間が必要だった。だが、今は戦いの最中だ。仮に敵がその場にいるのであれば、その間に逃げられてしまう可能性は高かった。だからこそ、先行して動く部隊も当然存在していた。
「クギャッ」
「クギャアア」
それはガルーダ・ハイライダーが操作する戦闘車両とバイクの部隊である。彼らは10メートルの移動砲台とでもいうべき機械、バスターウォーカーの砲撃とほぼ同時に駐屯地へと向かい、すでにその場を取り囲んでいた。
「クギャアア?」
「ギャキャッ?」
だが、その場に敵の姿はなかった。バイクも車両もなく、倒された仲間の亡骸だけが砲弾に吹き飛ばされて散らばっていた。逃げられたか? そう彼らが思ったときである。
「ギャーッス」
唐突に仲間の一体から悲鳴が上がり、戦闘車両から転げ落ちた。地面に転がったガルーダ・ハイウォーリアーは、すぐさま立ち上がって森の方へと吠える。その姿から仲間たちは落ちたガルーダ・ハイウォーリアーが肩を矢によって射抜かれたのだと確認し、仲間の咆哮で森の中に敵がいることを悟った。それと同時に黒い矢が無数に森から放たれ、それを察知したガルーダ・ハイライダーの操るバイクと戦闘車両がすぐさま散開していく。
そして彼らは目撃する。攻撃を仕掛けてきたのは、森の中に潜んでいた三十体からなる水晶の騎士たちだった。それはクリスタルナイトーさんと呼ばれている、風音が訓練用に使用していた水晶化ゴーレムであった。
その手には黒炎装備の弓矢や槍、剣、盾など様々な武具が握られ、大盾を持ったディフェンス役が正面に一列並び、その後ろから弓手役が一斉に矢を放っていた。
「ギキィ」
「クギャアア」
それに気付いたガルーダたちが叫び声を上げて立ち向かおうとしたところで、さらに左右の森の中から足を馬の形にしたクリスタルナイトーさんケイローンたちが飛び出て、攻撃を仕掛けてきた。また、矢を放ったクリスタルナイトーさんたちも武器を槍に持ち替えて正面から駆けていく。
「クケー」
「ギャーッス」
三方向からの一斉攻撃。それもナビ指揮の元による、訓練とは違う完全殺傷モードのクリスタルナイトーさんたちの陣形である。
それにはガルーダたちも驚きの顔をするが、とはいえ彼らは第八十階層クラスの魔物である。迫るクリスタルナイトーさんたちに対して、彼らはすぐさま動揺を抑えて勇敢に立ち向かっていった。
その後の戦闘は一方的とまでは言わないまでも、終始ガルーダたちの優勢な展開となっていた。クリスタルナイトーさんは表面がツルツルで滑るために銃弾が効きにくいが、技量自体はそれほど高くない。クリスタルナイトーさんは所詮雑魚ゴーレムだ。ガルーダ・ハイウォーリアーたちに接近されて取り囲まれてしまえば、為すすべもなかった。
そうして、すべてのクリスタルナイトーさんが破壊され、水晶から土塊に変わるのを見て、敵を全滅させたと判断したガルーダたちはその場で勝利の雄叫びを上げたのである。
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『予定通りに全滅しました』
虹杖の 魔金剛石(マナダイヤ) からナビの声が発せられる。それはクリスタルナイトーさんが一体残らず倒されたという報告であった。
このナビは風音の生み出したゴーレムと繋がり、それらを風音の望むように動かせるようアシストするサポート精霊だ。『ゴーレムメーカー』のスキルレベル6で発動しただけあり、応用力の高い非常に強力な能力であった。
そのナビの知らせに、風音は特に残念な顔もせず「了解、あんがとねナビ」とだけ返す。
クリスタルナイトーさんがガルーダたちに倒されることは想定内のこと。風音も低階層の魔物が相手ならばともかく、クリスタルナイトーさんたちでガルーダ族に勝てるとは思ってはいなかった。水晶化に黒炎装備で武装した状態でのナイトーさん単体の実力は第二十階層クラス。それが陣形を組んで戦ったところで、精々が第四十階層クラスの魔物に勝てるか否かというところである。
囮として正しく機能したのだから、彼らは十分に役割を果たしていた。そのことに満足している顔の風音に弓花が尋ねる。
「終わったの?」
「うん。ナイトーさんは全滅したってさ。こっちに近付いてこないところを見るとバレずに済んだみたいだね」
「別に戦っても良かったのではないか?」
風音にジンライの疑問が投げかけられる。
白き一団の戦力であれば、真正面から戦闘になっても当然勝てるだろうとジンライは確信していた。それは風音も同様だが、ジンライの問いには首を横に振る。
「次から次に攻めてこられるかもしれないしさ。今回は、そういうのはスルーして、こっちはこっちの目的を果たした方がいいって思ったんだよね。キリがないし」
ジンライとライノーの乗るシップーに、ユッコネエに乗った風音が併走しながらそう返す。
その他の仲間たちもクロマル、タツヨシくんケイローン、ツインソード、アダミノくん、サポートスパイダーに乗って続けて移動していて、彼らはいつも通りのスキル『インビジブルナイツ』『空身』もかけられていた。それらは、今のところは第七十階層台のセンサー以外には引っかかっていない極めて優秀な隠密スキルだ。それは、この第八十階層群においても遺憾なくその性能を発揮していた。
「む、センサー発見」
もっとも、その第七十階層台のセンサーが、この階層にも時折設置されていることもあった。そうしたものを発見して避けつつ風音たちは目的地へと進んでいく。それから、いくつかの森を越えて、彼らは大型遺跡に辿り着いたのである。
◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第八十階層群 エリア80遺跡
「こりゃあ、なかなか見応えがあるね。地上の 金翅鳥(こんじちょう) 神殿に似てるかも」
森の中から風音が周囲を見回すが、そこはもう遺跡というよりは要塞に近かった。地図に載っていた通りにその遺跡は巨大で、周囲には広い敷地があって、さらにはその周りが石の壁で覆われている。
また、正面の入り口などのいくつかの場所でガルーダたちやバスターウォーカー、戦闘車両などが集まって待機しているようだった。また遺跡の入り口付近にはドン・ガルーダも立っていた。
その様子を観察している風音に、横から直樹が尋ねる。
「姉貴。遠隔視で探ってみるか?」
「うーん。いや、止めておこう。なんか直感がピリピリ来てる。多分、あの遺跡の周囲に探知系の結界が張ってあるんじゃないかな?」
少しだけ考えてから返された風音の言葉に、レームが嫌な顔をした。
「探知系の結界って……ケストラーデ大監獄のと同じやつか?」
それは、かつてレームが閉じ込められていた場所の名だ。そこは心臓球を動力として魔力の壁が張られていたのだが、その言葉に風音は首を横に振った。
「いんや。そこまで強力なもんじゃないよ。物体でも魔力でも、何かしらが侵入したら反応する魔術の壁だと思う。穴を開けたか否かで判断するから、インビジブルナイツと空身でも見つかると思う」
それを抜ける魔術なども存在はしているが、風音たちの中で使える者はいなかった。
「けど、そんなものが張られているということは、この場はやはり敵にとっては重要な施設と言うことのようですわねカザネ?」
「だろうね。中にどういう仕掛けがあるかは知らないけど。突破するとなると、気にせずに突っ込むか、地下から潜るか……」
風音は考え込みながら、遺跡を見た。そして、己の考えを頭の中で纏めると仲間たちに声をかけてミーティングを開始したのであった。