軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八百五十話 交戦をしよう

「なっ!?」

直樹が叫んだ。己の操作した魔剣とのパスが消え、そのフィードバックにより精神に衝撃を受けて、膝を突いた。

一方でふた振りの魔剣は物理的なダメージにより魔術式が乱れて飛竜化が解け、操作不能となって墜落していく。

その状況に風音が目を細めると、後ろにいた弓花から声がかかる。

「風音、周囲から勢いのついた何かがくるよ。多分、音と振動から戦闘車両だと思うわ」

「それ、どういうこと?」

そう返しながらも、風音の耳にも迫るモーター音が聞こえてきていた。

「分かんないけど、ようするに第七十階層の兵器で武装してるってっことでしょ」

「となると、厄介だね。全員警戒。一斉に来るよ」

パーティに指示する風音の言葉と同時に、森の中から四台の戦闘車両が飛び出してきた。

「ヒャッハー」

それぞれの戦闘車両にはトサカを生やし、トゲのついた鎧を着た筋肉質なガルーダマッドソルジャーがいて、みなミサイルランチャーを構えていた。そして彼らは、風音たちを捉えると同時に一斉にミサイルを撃ち放ったのだ。

「やばっ」

それに全員が息を飲む中で、風音が真っ先に飛び出していく。

「ふたつ潰す」

「師匠」「応ッ」

風音の言葉に反応して、ジンライと弓花も続いて動き出す。

「ていやっ」

宙に飛んだ風音が、両手を突き出してマテリアルシールドを張ると、その場に不可視の障壁が発生してふたつのミサイルが激突し、大爆発が起きた。

さらに弓花とジンライが、それぞれ槍を投げてミサイルを破壊する。その様子を見て舌打ちしているガルーダマッドソルジャーを乗せた戦闘車両はドリフトしながら風音たちの周囲を回り始めた。

もっとも、白き一団の仲間たちもすでにやる気だ。

「レーザーバルカンの力、見せてやる」

「ナオキッ、俺らも行くぞ」

「分かってるさ」

「お爺さま」

『護りは任せよ』

各メンバーが一斉に動き出していく。

レームのレーザーバルカン砲が吠えて戦闘車両を牽制し、ドクロ魔人化した直樹と鎧に竜気を込めて全身甲冑化させた竜装化ライルが敵に向かって駆けていく。

その間にメフィルス率いる 炎の騎士団(フレイムナイツ) が出現して大盾を構えて周囲への防御を固めた。

そして、敵と膠着状態となったところで銃声が響いた。

それはタツオのレールスナイパーライフルから銃弾が放たれた音だ。

その銃弾の向かった先が見えているのは、遠隔視を使っていた風音とコマンドゴーグルで敵の位置を拡大しているタツオだけだったが、ふたりには遺跡に隠れていた狙撃手が倒れたのを確認していた。

『仕留めました』

「よくやったよタツオ。ロクテンくん、ケイローンと後衛組は私を中心に固まって周囲警戒。タツオはクリスタルシールドで後衛のガード。別の狙撃手に備えて」

その言葉に、タツヨシくんケイローン、それに後衛組が乗っているアダミノくんやサポートスパイダーが風音の周囲に集まり、暴風の加護の範囲内に収まる。

魔法耐性(レジスト) で威力を軽減できる魔法攻撃と違って、物理攻撃である銃弾は一発の威力が高く、場合によっては即死しかねない怖さがある。

それを警戒した風音が防御に回るのも仕方のないことだった。とはいえ、風音も防御の傍らでジュエルカザネを操作し、遠隔操作で前衛組と共に戦ってもいた。

『この者たち、背後からの攻撃が効きにくいぞ』

炎の騎士団長(フレイムナイトリーダー) となったメフィルスが苦い顔でそう叫んで仲間に伝える。

ガルーダ族の戦士たちは背に黄金の炎、つまりは風音も所有しているスキル『カルラ炎』を背負っていた。それは炎の化身であるメフィルスたち、 炎の騎士団(フレイムナイツ) とは非常に相性が悪いスキルだ。

「にゃー」

また、共に攻撃しているユッコネエの声にも苛立ちが混じっていた。カルラ炎には炎の爪が効かない。八つの尻尾からそれぞれ火の玉を撃つが、それもカルラ炎を通せることはできなかった。

(あれ、結構優秀なスキルだったんだねえ)

その様子を見ていた風音はそう思ったが、炎メインで戦う相手は今まであまりお目にかかっていないし、そもそも攻撃は受けずに避ける主義ではあるので、今後も風音が『カルラ炎』を使うかというと微妙ではあった。

『うぉぉおおおっ』

「やってやるぜ!」

そんな中でドクロ魔人化直樹と、竜装化ライルが駆けていく。物理攻撃を通さぬ直樹と、強固な鎧に包まれたライルに銃弾は効かない。銃器で武装している相手であれば有意に戦えるはずだった。

『ヤバイッ。ライル!?』

「森の中から? ウワァアアッ」

だが、次の瞬間にふたりはその場から吹き飛ばされた。

彼らを襲ったのはライフルの弾丸でも、ミサイルランチャーのミサイルでもない。魔術の攻撃だった。黄金の炎の爆発をふたりは喰らったのだ。

「なんだってんだ?」

『我よ。森の中だ。魔術師がいる』

爆発のダメージに顔をしかめつつも地面に着地したライルに、ジーヴェの槍がそう助言をした。

そしてライルが森に視線を向ければ、そこにはライオットシールドらしき透明の盾を持つガルーダハイウォーリアーたちと、その後ろに護衛されているガルーダマジックマスターの姿があった。

『がぁああああッ!?』

一方で一緒に吹き飛ばされた直樹だが、こちらはライルとは違って致命傷に近いダメージを受けていた。

「直樹ッ!?」

叫ぶ風音の前で、直樹は全身を黄金の炎にまみれながら、ドクロ魔人化が解けて地面を転げていった。

放たれた黄金の炎の属性は太陽。それは光と炎の因子の混合であり、光の因子は闇の因子の天敵であった。闇の上位精霊と化していた直樹にとって、それは手痛い攻撃だった。

「タツオ、ツインソードで直樹を回収。ナビ、フォローをお願い」

『はい、母上』

『了解しました』

声に焦りを交えながらも風音は、冷静に指示を出していく。そしてツインソードがダッシュで直樹の元へと向かい、同時にジュエルカザネが追い打ちをかけようとしたガルーダの戦士や魔術師の攻撃を自ら盾となって防いでいく。

魔金剛石(マナダイヤ) でできたジュエルカザネの身は、その身を薄くしていようとも物理攻撃や魔法攻撃のほとんどを弾くほどの防御力がある。それに護られてタツヨシくんツインソードが直樹を拾うと、Uターンして風音の元へと直樹を運んでいった。

「スペル・ハイヒール」

それから、風音がすぐさま回復魔術を唱えると、直樹の全身が光に包まれ、その傷が癒えていく。

その様子を見ながらジンライが口を開いた。

「なかなか手強いな。ライノー、ユミカ。早々に決着を付けるぞ。長引けば危険だ」

「ああ、分かった」

「了解です。となれば、初陣だよキング」

そう言って弓花が鎧の腰に下げた竜神の片手斧を取り出すと、そのまま振りかぶって敵の群れへと片手斧を放り投げた。

『主の御心のままに』

空中でゴブリンゴッドキングのキングが出現し竜神の片手斧を手に取ると、着地と同時に大地へと斧を叩きつけた。

『神の雷に焼かれろ、鳥ども』

その言葉と共に大地が割れて中から白き雷が全周囲に放たれると、正面の戦闘車両が爆散し、周囲のガルーダハイウォーリアーが吹き飛ばされていく。

「グォオオオオオオオッ」

そこに全身に雷を受けて火傷を負ったガルーダマッドソルジャーが二丁のチェーンソーを振り上げて飛びかかったが、それをキングは竜神の片手斧を一閃して破壊すると、一歩踏み込んで接近して首を跳ねた。

「戻ったら、手合わせしておきたいな」

「確かに」

それを見てジンライとライノーが、笑みを浮かべていた。ふたりは戦いの中に強敵を見いだしたのだ。対象は仲間であったが。

ともあれ、その一撃で戦場の空気が変わった。このまま攻勢に……とジンライたちが考えて動こうとした次の瞬間である。森の中からパシュッという情けない音と共に閃光弾が打ち上げられたのは。

「今のは?」

「カザネ。連中が逃げていくぞ」

風音が森の中から飛び出てきた閃光弾に目を向けていたが、ジンライの指摘でガルーダマジックマスターを中心に敵が下がり始めたのに気付いた。

「あーもう。逃がさないよっ……て、バイク?」

それを追いかけようとした風音だが、どこからともなくサイドカー付きバイクの集団が森の中から現れたのだ。そのバイカー集団はガルーダたちを次々と乗せると、足早に森の中へと去っていってしまう。その手際の早さにジンライが目を丸くしながら、風音に尋ねる。

「お、追うかカザネ?」

「いや、ケイローンなら追いつけるけど、止めておこう。誘い込まれて、さらに厄介なことになりそうな気がする」

風音はそう言って周囲を見回すが残っている敵の姿はもういない。

つまり戦闘はこれで終了。この戦いで白き一団は敵の半数を倒していたが、逆に言えば半数は逃がしていた。それは殲滅を常とする彼らにしては珍しい結果であった。