軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八百二十五話 森に挑もう

◎メゾトルの森

暗い森の中を、半人半馬の鎧の騎士に牽かれた装甲列車が走っていた。

その森は、ロードゾラン大樹林に近いメゾトルの森という場所で周囲には魔物も多く生息しているはずなのだが、その列車に近付いてくる気配はまったくないようだった。

その理由は、半人半馬の鎧の騎士……タツヨシくんケイローンが握っているドラゴンホーンランスから放たれる竜気が魔物をはね退けているためである。このメゾトルの森は、闇の森であるロードゾラン大樹林に近いだけあり、危機に対して鋭敏な魔物が多い。魔物たちが列車を襲わずに逃げ出していくのも道理であった。

それから、風音とユッコネエのサンダーチャリオットを連結させた 装甲列車(サンダーチャリオットトレイン) が森の一角で止まり、乗っていた全員がその場に降りた。

そして風音はいつも通りに『ゴーレムメーカー』で穴をその場に堀って、風音コテージを喚び出して埋め、その上に隠し入口と偽装池を慣れた手つきで用意していったのである。

「瞬く間に」『便利ー』「さすが 大匠(おおだくみ) 様のご友人です」

その様子にやすとJINJIN、やすの曾孫であるカダスが声を上げて拍手をしていた。なお、やすの従者たちはゴルディオスの街でお留守番である。

それから風音がコキコキと肩を鳴らしながら、森の方を見た。

「そんじゃあ、 拠点(ベース) は完成したけど、あまり時間はかけたくはないし、さっさと探そうかな」

『ですねえ。闇の森の近くと言うだけでも、不測の事態が起こる可能性がありますし、それに今もレームたちはダンジョンを探索してるわけですから』

頭の上に乗っているタツオもそう言って周りを見回した。

実のところ、この場にいるのは風音、タツオややすたちの他に弓花、ティアラにメフィルスだけで、直樹、ジンライたちの姿はなかった。そして風音たちの言葉を聞いたやすが、少しだけ申し訳なさそうな顔をして口を開く。

「しかし、流れで鱗探しに来ちまったけどさ。良かったのか風音。直樹たちはダンジョンに行ったんだろ?」

その言葉の通り、やすの提案によって風音たちは龍神の鱗探しをしにこの場に来ていた。そして白き一団は現在、風音組とジンライ組のふたつに分かれて行動していたのである。

「ま、あっちはあっちで仕事があるしね。仕方ないよ。それにジンライさんがいれば大丈夫だと思うし」

「ああ、あのおっさんくさいヤツか。若いのに随分と落ち着いているよなぁ」

やすはジンライが普通に十代の若者だと思っているのでそう口にしたが、実際に倍以上はやすの方が生きているので言っていること自体は間違いでもなかった。

また仕事と風音が口にした通り、ジンライ組は『青の明星』からの第七十七階層チャイルドストーン持ち討伐の指名依頼を受けていて、それを果たしにいったのである。

そして先ほど届いた直樹からのメール報告によれば、今はクラン『青の明星』と共に第七十階層を抜けたところで、そのまま第七十七階層に向かって移動する予定だとのことであった。

それから、風音は頭の上にいるタツオに「調子はどぉ?」と尋ねる。

『はい。力が湧き上がってきます。凄いです』

そう返したタツオは姿こそ変わらないが、その身に宿している竜気と神力がこの一日でかなり増していた。それは風音がスキル『進化の手』を使い、タツオの竜気と神力にそれぞれ1ポイントずつ振ったためであった。

「無理がかかってそうなら言ってよね。タツオはまだ身体が出来上がってないんだから、無茶は駄目だからね」

その風音の言葉にタツオがくわーっと鳴いて頷く。

タツオは、まだ生後一年経っていない幼竜だ。あまり急激に変化があると成長を歪にしてしまうのでは……という懸念があったために、少しずつ『進化の手』を使い、成長を促すようにしているのである。

そして、タツオは風音の頭からヒョイッと横にいたタツヨシくんツインソードに飛び乗ると、その中からレールスナイパーライフルを取り出して、探索の準備を始めた。仲間たちが分かれた今、己が母を護らねばとタツオは燃えていた。

風音がタツオのそのやる気の表情に、うんうんと頷いてから、続けて後ろにいるティアラに声をかけた。

「で、ティアラの方はどう?」

「はい。快適ですわ」

『問題はありません』

返事はふたつ返ってきた。片方はティアラ。そしてもうひとつの返事は、ティアラが現在乗っている蜘蛛型のサポートゴーレムからのものであった。その声はカザネの声を電子音声にしたような感じで、それに風音は言葉を重ねて尋ねた。

「ナビ、報告はある?」

『各関節部位の負荷は想定値内です。また現在、大型蓄魔器改の魔力量は100パーセントに到達していますので、滅の炎の発動が可能となっています』

この風音とやり取りをしているものの正体はナビという存在である。それは風音が貯めていたスキル『技の手』のポイントを全振りして発現させた『ゴーレムメーカー』のスキルレベル6の能力であった。

スキルレベルの上昇に伴い、いつも通りの消費魔力量軽減に加え、ナビという総合ゴーレム制御システムが生まれ、ゴーレムの運用が円滑となっていた。また、音声による対話形式の指示が可能となったため、以前に比べてより正確な指示も可能となっていた。

そして、ティアラの乗っている蜘蛛型ゴーレムは、以前より開発を進めていた大型蓄魔器を乗せることを前提にしているサポートゴーレムである。大型蓄魔器自体も以前に比べて増量しており、蓄積率100パーセントであれば、蓄魔器の魔力だけでルビーグリフォンの『滅の炎』を一発放てられるように調整されていた。

「フフフ。なら良し。今日はそいつの試運転も兼ねてるから、ティアラも何か気になる点があったら遠慮なく言ってね。ゆっこ姉用のサポートゴーレムのフィードバックにもなるしね」

「はい。責任重大ですわね」

ティアラがキリッとした顔で頷く。ゆっこ姉用のサポートゴーレムはティアラの比ではない量の蓄魔器を乗せる予定なので、今回の運用実験は重要であった。

それから風音は森を見渡しながら、少し唸る。

「そんじゃ、これから龍神の鱗を探すけど。さて、どうしたものかな?」

「相当に広いからな。飛んで上から見るってのは……闇の森では危険だったな」

「うん。少しは見るつもりだけど、闇の森の中から迎撃される可能性は高いと思うよ。空の方が 魔力の川(ナーガライン) の影響は大きいし、森の魔物も飛び出してくるかも知れない。あ、やすくんたちは闇の森には行ったことあるんだっけ?」

「俺は、素材取りに浅いところなら一回だけあるな。死にそうな目にあったけど」

『ないー。無理ー。あ、でも今の悪魔の身体なら行けるかも?』

やすとJINJINがそれぞれそう返す。それは風音も予測していた答えであった。それなりの実力のあるプレイヤーでも、元々がカンストレベルのキャラでも危険な場所に単独で挑むのは無謀というものなのだ。

「ゆっこ姉も帰っちゃったし、ジンライさんもいない状態だからね。やす君たちの戦力を見込んでも……闇の森の魔物だとやれて一戦二戦行けるくらいかなぁ」

「何気にお前らが探索済みって事実の方がコエーよ。俺にはな」

やすは呆れ顔ではあるが「色々と成り行きもあったんだよ」と風音は返した。

それから、ひとまずは風音が撃墜覚悟で使い捨てゴーレムを空に放ち、大体の目処を付けて探索を行う運びとなったのである。