作品タイトル不明
第八百十四話 応援に行こう
◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十四階層 廃ベガスシティ
「こっちも随分と倒したってのに、なかなか数が減らないな」
「ま、しゃーないでしょ。それが連中の取り柄なんだから。ほらいたわよ」
ジローの言葉にカンナがそう返しながら、路地裏を駆けていく。彼らの先にマシンナーズソルジャーの一団がいた。それは通りの方へと銃口を向けて撃っていて、銃口の先にいるのはマシンナーズブッチャーと対峙しているガーラと、魔術で防壁を張って護りに入っているアンナであった。
オーリングとブレイブの2パーティのクラン『青の明星』は、七十七階層までの探索を終え、地上に戻ろうとこの階層に戻ってきたのだが、途中で襲撃を受けてパーティは分断されていた。そして、ジローとカンナは建物の後ろを回りながら、ガーラたちを攻撃しているマシンナーズソルジャーたちを仕留めるべく動いていたのである。
「やれ、ビッグストーンワーム」
ジローのかけ声に召喚獣を反応し、まだ全長四メートルほどしかないビッグストーンワームが地面から飛び出してマシンナーズソルジャーの足に絡まっていく。それにマシンナーズソルジャーたちが混乱して、地面をライフルで撃っているところに、ジローとカンナがさらに加速して近付いていく。
「私、上から行くからね」
「了解。クソッ、やってやるよ!」
カンナが建物と建物の間を飛び蹴って空中から蹴りを仕掛け、ジローがふた振りの刀で正面のマシンナーズソルジャーを斬り裂いた。
だが、その奇襲に他のマシンナーズソルジャーたちが気付き、すぐさま銃口をジローたちへと向けた。そして、銃声が響き渡る。
**********
銃声が響いている廃ベガスシティの路地では、機械の固まりが駆けていた。
「倒してゴーレム」
そしてゴーレム使いのユズが声をかけると、機械が集まってできたゴーレムが迫ってくるサイバネドッグを殴りつける。また、同時にその拳が爆発を起こし、サイバネドッグがバラバラに破壊されて吹き飛んだ。そのメカゴーレムの拳に付けていたバッテリーが破壊されて暴発したのだ。
その衝撃でゴーレムの腕も欠損するが、他の部位からパーツが流れて腕が再生されていく。だが、それをエネミーたちも待ってはくれるわけもなかった。
「ゴーレム護って! クッ、間に合わない!?」
メカゴーレムの横を二体のサイバネドッグが一瞬で横切り、ゴーレムを操っているユズを狙って飛びかかる。だがそのユズの後ろから二本の矢が飛び出し、それぞれのサイバネドッグを貫いて空中で爆発を起こした。
「よしッ!」
「オッケー」
その様子に、ユズの後ろで弓を構えていた弓使いであるメロウとナイラが手を叩いて喜び合う。
それを見ながら、オーリが少しだけホッと息をついた。そのオーリの周囲にはバックス、アグイ、オルトヴァが並んでいる。やむを得ずガーラたちと分かれての戦闘となったが、今のサイバネドッグでようやく追ってきた相手の討伐には成功したようである。
「ようやくこっちは片付いたか。ガーラさんたちは大丈夫かな?」
離れた場所からは今も銃声やぶつかりあう金属音が響いてきている。
一番の強敵であるマシンナーズブッチャーを相手にしていたブレイブリーダーのガーラは、相手の押しの強さに後退を迫られ、オーリたちと分断せざるを得なかった。アンナ、ジロー、カンナが付いているはずだが、ガーラたちの戦闘は未だ継続中。であれば、こちらのエネミーは倒したのだから、すぐにでも救援に向かうべしとオーリは考えていた。
「オーリ。ジローたちにかけた私の魔法障壁が反応した。まだ破られてはいないが、反撃は食らっているようだな。しかし、まさか移動中の連中と鉢合わせするとはついてない。編隊を組んでの動きがあったということは、我々以外のどこぞかのパーティがこの階層に入ってきたということかね?」
「可能性はあるな。恐らくは白き一団だろうが、レイブンソウルたちのクラン『黒き牙』かダインス天使騎士団かもしれない」
アグイがそう言いながらも周囲を警戒している。建物が建ち並び、早々銃撃を食らうような場所ではないが、窓からいつ敵が飛び出てくるかは分からない。それらをオーリも警戒しながら仲間たちに声をかけようとしたところで、銃声が近付いてきて建物の角からジローとカンナが這々の体でオーリたちのいる路地へと飛び出してきた。
「怪我は?」
「問題ないけど、ガーラさんがやってるデブが硬いのよね。ちょっと私たちじゃあ対処が厳しくって」
カンナの言葉の途中で、まるで爆発でも起きたかのようにオーリたちの目の前にある建物が倒壊していく。
「光の障壁よ」
対して、神官であるアグイが瞬時に魔術の壁を造って瓦礫を弾き飛ばし、メロウとナイラが舞い上がった砂埃の中へと矢を構える。
「これは……ガーラさん?」
崩れ落ちる建物の中から、ガーラとマシンナーズブッチャーが飛び出てきた。
「すまん。止めきれなかった」
そう言って謝りながらガーラがマシンナーズブッチャーの肉切り包丁をハルバードで弾く。そして態勢を崩したマシンナーズブッチャーへとガーラの後ろにいたアンナが杖を前に出した。
「もうっ、効いてよね。雷よ。刃となりて彼の者を斬り裂け」
そして放たれた雷の魔術がマシンナーズブッチャーに命中するが、それでもマシンナーズブッチャーの動きを止められるほどのダメージではなかった。これまでマシンナーズソルジャーたちには有効であった雷の魔術だが、マシンナーズブッチャーは絶縁処理がされているのか、効果が出にくいようなのである。
また、同時に建物の角からマシンナーズソルジャーたちが何体もこの場にやってくる。それはジローたちを追ってきたエネミーたちであった。
「チッ。オーリ。こっちは押さえる。デブはお前が行け!」
「分かった。残りは頼むぞ」
ドワーフ戦士であるバックスの言葉に応えて、オーリがマシンナーズブッチャーへと駆けていく。
「さあ、来いカリバーン。あんなリビングアーマーもどき、さっさと仕留めてやろう」
そう言いながらオーリは、己の剣に自らのイメージした剣を重ねていく。
それは『斬心』と呼ばれる剣士としての最高峰の奥義のひとつ。以前は何もないところから剣を生み出したが、今は持つ剣をイメージによって書き換えることで安定性と継続性を上げている。
「ガーラさん、助太刀します!」
「オーリか。助かる」
ガーラとオーリがそれぞれの得物でマシンナーズブッチャーへと切りかかる。だが、マシンナーズブッチャーは右と左にそれぞれ持っている肉切り包丁で弾くと、その腕を真横に伸ばして上半身を駒のように回転させ始めた。
「不味いな」
オーリが眉をひそめる。そのパターンはここまでの戦闘の中でも経験済みだ。もっとも、マシンナーズブッチャーがその形態になると近付くことすら困難になり、力で押しとどめようがないために後衛まで突撃される可能性もあった。
「俺が止める。オーリは仕留めろ!」
そこにガーラが飛び込んでいく。そのままガーラの魔物と化した腕の筋肉がさらに盛り上がり、狂い鬼より得た『黒竜喰いのハルバード』を前に出してマシンナーズブッチャーの回転数が上がりきる前に止めたのだ。足元の道路が衝撃でヒビ割れ、さしものガーラがうめいていた。それから青筋を立ててマシンナーズブッチャーと力比べをしながら、オーリへと叫んだ。
「保たんぞ。早くしろ、オーリ!」
「任せてください!」
すでにオーリは周辺の建物を蹴り登ってマシンナーズブッチャーの元へと上段からカリバーンを振り下ろした。その刃がマシンナーズブッチャーを真上から切り裂いていった。
そして、オーリとガーラがすぐさま、跳び下がるとマシンナーズブッチャーが爆発し、爆風によって周囲に砂埃が舞った。
「倒したな」
「ええ。手強い敵だった。と、それでみんなの方は?」
それからオーリが仲間たちへと視線を向けると、すでにマシンナーズソルジャーたちの始末も終わっているようだった。敵の掃討は完了。仲間たちも欠けることなく合流できた。戦果としては上々である。そして、ナイラがオーリへと報告する。
「オーリ、マシンナーズソルジャーも全部倒したわ。けど、これだけ騒がしくしてはきっと」
「ああ、マシンナーズソルジャーが大量に来るだろうな。どうにか増援が来る前に、この場を抜けられればいいんだが」
そのオーリが横からカンナが「ああ、それね」と口を挟んだ。
「なんか問題ないみたいよ。ほら」
そう言ってカンナが指を差した先に一同が視線を向けた。
それは建物の屋上であった。そして、そこにはチンチクリンがひとり立っていたのだ。建物の角や、路地、通りからも次々と白き一団の姿が見え始めた。それから風音が「とぉっ」とジャンプして、道路に降り立つと、
「一応、近付いてきたのは掃討しといたよ」
と親指を立てて、口にしたのであった。