軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百七十三話 黄金の目を見つけよう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十二階層 隠し部屋(セーフルーム) 風音コテージミニ リビング

「粗茶です」

「いや、それヤバいくらい高いヤツだからな。マジで金と価値が変わらない重さのヤツだから。ダハスからのもらいもんだけどさ」

湯呑みに入ったお茶を風音がテーブルに置いて、横にいるレームがツッコミを入れていた。

そしてレームのツッコミの通り、それは一般人では一生縁がないような高級緑茶であった。それをかなりテキトーに注いで風音は出していた。もっとも『食材の目利き』の食材の活性化によりその味自体はプロが入れたものと遜色がないのである。不公平な話であった。

ちなみに風音はダハスに対して『食材の目利き』での食材の強化や、知恵の実、水珠の神軟水の提供などを行うことと引き替えに食材の提供を受けているために、こうした品が最近はゴロゴロと増えていた。故にもらいもんのカステラをお客さんに出すつもりで風音はそれを用意していたのだが、ツッコミどころ満載のシロモノであったようである。

「いや感謝する。ふむ、旨いな。金と同じ価値か……流石というべきか」

そんな風音たちと向かい合った席にいるのは、もう老人に入りかかっている年の男であった。その横には同じ年ぐらいの生真面目そうな男が並び、またコテージの外には今も二十名ほどの騎士たちが待機していた。

彼らの名はダインス自由騎士団。かつてA級ダンジョンのひとつを踏破し、今は 金翅鳥(こんじちょう) 神殿を攻略中のクランのひとつであった。

「しかし、こんなダンジョンの中でこのような空間を造り出せるとは恐れ入りました。しかもおなごの黄色い声が聞こえてくるとは思いませなんだ。まったく、何かの幻覚攻撃かと戦々恐々としましたぞ」

どうやら風音のキャッキャ声が聞こえていたようである。その言葉に風音も「いえいえ」と返す。

「まあ、うちはこういうパーティだからね。みんな、結構はしゃいじゃうことも多いし、少々うるさいかもしれないけど勘弁してね」

風音の言葉に仲間たちが苦笑いをする。一番うるさいのは当然、目の前のチンチクリンであった。

「なるほどな。今や冒険者の枠を越えて名の知れ渡っておるカザネ様ならではのお言葉ですな」

男はニヤリと笑ってからそう口にする。その言葉から目の前の男は風音が王族に属していることを知っているようでもあった。

「様付けはいらないよ。今は普通の冒険者だしね」

「ならばカザネさんとお呼びしましょうか。改めてこちらもご紹介をさせていただきましょう。私はダインス自由騎士団団長のモーリア・コーダー。横に控えているのは副官のラオンです」

「ラオン・モーテです。初めましてカザネさん。白き一団の皆様方。ご高名はかねがね聞き及んでおります」

モーリアに続き、ラオンも頭を下げ、白き一団のメンバーもそれぞれ挨拶をする。その中でティアラとメフィルスの挨拶の際には、なぜだか微妙な空気が流れていた。それはどちらともに、どこかバツの悪そうな微妙な空気を漂わせていたのである。

なお、モーリアとラオンたちダインス自由騎士団は、野営をするべく偶然この場に立ち寄っただけとのことで、特に白き一団に用事があるわけではないようだった。

そして、夜も明けた翌日には、白き一団とダインス自由騎士団は 隠し部屋(セーフルーム) 前で別れて、またそれぞれダンジョン探索に戻ったのであった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十二階層

「礼儀正しい人だったね」

ダンジョン内の通路を進みながら、弓花がそう口にする。朝に別れたダインス自由騎士団は、団長であるモーリアを始めとして全員が規律正しく騎士然としており、一介の冒険者とは一線を画しているように感じられた。

『まあ、あの者たちは少々事情が複雑ではありおるからな。ああして、冒険者となっても騎士であることを誇りとしておるのだ』

そこに口を挟んだのはメフィルスであった。またティアラも若干堅い顔をしていた。そのことに一同が訝しげな顔をしていると、ティアラが続けて口を開いた。

「実は、あの方々はかつてツヴァーラ王国の隣国であったダインス王国の騎士たちなのです」

「かつて?」

さらに首を傾げた風音にティアラとメフィルスが頷く。

『うむ。我が国同様に闇の森である『ドーン森海』に面した国でな。二十年ほど前に魔物の群れに国を蹂躙されおったのだ。結果として王都は消え、国としての機能を失い、今は領土も周辺国が分割管理する形になっておる』

その言葉を聞いて風音たちも理解する。周辺国、すなわちその中にはツヴァーラ王国も含まれているのだと。その反応を理解したティアラが少しばかり悲しそうな顔で口を開いた。

「彼らは王国の再興を願い、そのために各地のダンジョンに潜って資金を集めているんです」

「うーん、それで返してもらえるの?」

その風音の言葉にメフィルスが目を細めて答えた。

『王都も未だ魔物の巣窟となっておる。現在ダインス王族はアシェラ王国の保護下におるし、各国が一度手に入れた領土を返すかと言えばそれも難しかろうな』

「ん、そっか」

風音はそう返し、それ以上は誰も何も言わなかった。そうしたものには色々と事情が絡む。それは恐らくはティアラが女王となった後に向かい合う必要のあることなのだろうと理解したのだ。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十三階層

それから風音たちは順調にダンジョンを進めていく。おおよそ最短ルートで第六十三階層へと降り、さらに先へと向かおうとしたところで風音が眉をひそめて呟いた。

「あれ、マップと少し違う?」

「ホントだ。カンナさんと共有したマップとは少しだけズレてるね」

弓花もマップウィンドウを見て首を傾げた。微妙にマップウィンドウの地図と実際の通路がズレているようなのだ。

「どういうことだろう? あ、これね」

風音がカシャッとカメラで撮って写真を見せるとジンライが「ふむ」とそれを眺めながら考え込み、その写真をのぞき込んだライルや、自分のマップウィンドウを開いた直樹が目を細めて思案する。

「確かに姉貴の言う通りだな。東側の方に向かって少し位置がおかしい」

「誤差や偽装の可能性はないのかよ?」

「誤差はこのウィンドウで出たことなんてないし、偽装も不可能だ。この地図は確実に正しいんだよ」

レームの疑問に直樹がそう答える。例えプレイヤーといえど、ウィンドウの機能を誤魔化すことができないのは、プレイヤー共通の認識だ。

「となると、マップ自体が変化したってことかな。うーん。ちょいと調べてみようか」

その風音の言葉に反対する者はおらず、彼らは第六十四階層へ向かうルートを変更し、マップ上のズレの大元の確認のための探索へと目的を変更したのであった。

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「こりゃ通路が伸びてきてるね。まっすぐ進めてたのが壁ができて迂回する必要が生じてる」

風音たちがズレのある方へと歩いていくと、やはりダンジョンの形状は変化しているようで、途中まで進むと壁に遮られて進めなくなっていた。

「確認の必要はあるが、どうやら部屋がひとつできておるようだな」

ジンライが再び撮影されたマップウィンドウの写真を見ながらそう口にした。横で共に見ているライルやメフィルスも同じ意見のようで、ジン・バハルは目の前の壁を見ながら『崩しますか?』と尋ねた。だが、それにはジンライが首を横に降る。

「いや、ひとまずは通路を回って調べてみた方が良かろう。壁を壊して妙な場所に繋がっても困るからな。それにダンジョンに傷が付くと魔物が押し寄せてくることも多い。敢えて危険を冒す必要もあるまいよ」

ダンジョンというものは亜空間の中に存在している。壁や天井を破壊することは不可能ではないのだが、万が一壁の先に部屋や通路がない場合、空間の外と繋がり、そこに吸い込まれれば二度とは戻ってくることはできないとも言われていた。

そして一行は新たに発生したらしい部屋を探索しようと迂回して進んだのだが、その途中で風音が手を挙げてその進行を止めた。進んだ先に魔物がいるのを発見したのである。

**********

「ストップ。いたよ、例のヤツ」

そう口にした風音は通路を左に曲がった先に今まで嗅いだことのない臭いがあるのを発見していた。その言葉に全員が止まり、風音へと視線を集中させる。

「多分、ゴールデンアイってやつだと思う。ようやくの遭遇だね」

それは第六十階層前後で出現すると言われていたが、今まで遭遇したことがなかった魔物である。

「うーん。キモい」

ゴールデンアイは金色の眼球をギョロギョロとさせながら、触手を使って移動していた。その姿を風音は遠隔視で確認して、どう対処しようかと思案していたのだが、その途中でビクリと肩を震わせた。

「あ、ヤバい。バレた!?」

「なんだと?」

ジンライが眉間にしわを寄せて尋ねるが、風音はゴールデンアイが遠隔視している自分を知覚したのを察知していた。

そして、ゴールデンアイがどこから出しているのか分からぬ悲鳴のような鳴き声を唐突にその場で発生させると、風音は自分たちの周囲の通路から唐突に無数の魔物の臭いが発せられたのを感じた。

どうやら、ゴールデンアイが仲間を呼んだようだった。