軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百七十一話 探索再開をしよう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十階層 ポータルルーム

「ほいやっと」

転移の光が消えていく。そしてその場に出現した風音がポータルから下りて、仲間たちもそれに続いていく。

ここは 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十階層にあるポータルルーム。風音たちは長らく中断していたダンジョン探索をついに本日より再開したのである。

なお、 金翅鳥(こんじちょう) 神殿のポータルは、第六十階層以降は濃い魔素に阻まれて使用が不可となっているため、現状においてはこの場所が通常の転移で降りてこられる一番深い場所となっている。

「また、ずいぶんと懐かしい気もするが」

周囲を見回しながらジンライがそう口にする。

「まだ一ヶ月くらいしか空けてないけど、その間が濃かったからねえ。ジンライさんはその間にまたさらに若返ったし」

「そうだな。まあ、なんとなくではあるが、若さ故か以前よりも気力は充実しておるな。これよりも若くなってしまうのはさすがに困るかもしれんが」

風音の言葉にジンライがそう返す。今のジンライの外見年齢はすでに十代後半。筋力こそ以前よりも若干落ちたが、そのキレはむしろ上がっているようで、トータルで見た場合にはそれほどの変化はジンライの中ではないようだった。

「困るというか、もう命の危機だと思うんだけど。さすがに一桁まで若返ったらまともに槍なんて扱えないと思うし」

その風音の言葉にジンライは「はっはっは」と笑って返した。あまり笑い事でもないのだが、ジンライはそれほど気にしていないようだった。

「ま、そっちについてはミサリさんが念入りに調べてるみたいだし、その結果待ちだね」

「ミサリ殿か。わざわざ調べていただけるとは……ありがたいことだな」

ジンライはそう口にするが、実際のところミサリはジンライの若返りの秘密を解き明かし、己に転用したいだけである。そのことを知っている風音は苦笑いしながら「そうだね」と返した。

「そんじゃあ、ひとまずは先に進もうか。地図についてはカンナさんたちから買って共有化してあるし、久々だから十分気を付けていこう」

その風音の言葉に返事の声がいくつも重なる。こうして白き一団は再びダンジョン探索を開始したのであった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十階層

「コロコロコロー」

風音が赤い物体をその場に投げて転がしていく。

それが通路を流れるように通り過ぎ、周囲に飾られていた石像のいくつかがギロリとその物体に反応して動き出していった。それを遠目で見ながら風音が指を差していく。

「そんじゃあ、アレとアレとソレ。あ、あっちのは外して、他は一斉にどうぞー」

風音がそう言って右手を挙げると、タイミングに合わせて構えていたライルの彗星の投槍、弓花の神槍ムータン、それにジンライの 聖一角獣(セイントユニコーン) の槍がそれぞれ槍術『雷神槍』として放たれ、少しだけ動いた石像三体を破壊していった。それはまさしく一撃必殺。擬態化していたストーンタイタンもどれが本物か分かってしまえば、ただのマヌケな的であったのだ。

「出番取られちゃったぜ」

その様子をゴレムスキャノンに乗っているレームが少しだけ悔しそうに言い、背にジンライの義手である 雷神砲(レールガン) 『シンディ』を背負ったシップーも「なー」と鳴いて同意していた。

「 雷神砲(レールガン) は結構大きな音が出るからねえ。まあ数が少なければ周囲に気付かれにくいこっちの方が安全策なんだよ」

風音がそう説明しながら、残り一体のストーンタイタンへと近付いていく。その右手に持っている風音の虹杖の先にある、巨大な 魔金剛石(マナダイヤ) の周囲にはアダマンチウムのリングが付けられていた。それは先の方が崩れて微細な 金剛糸(アダマスワイヤー) となっていて、最後の一体であるストーンタイタンを絡め捕って動きを封じていた。

「し、いい感じで捕らえられているね。そんじゃあ素材回収させてもらうかな。旦那様クロー、ゴー!」

そして風音が虹竜の指輪に念じると何もない空間に水晶竜の腕が出現して目の前のストーンタイタンの胸元を貫き、そのまま核であるコアストーンシグマを抉り出して風音へと放ると、そのまま消滅していった。

『おお、父上の腕ですー』

ゴレムスキャノンの頭の上でタツオがはしゃいでいる。虹竜の指輪のナーガ召喚はレインボーハート入手による性能アップで利便性が向上していた。具体的には風音の魔力=竜気によって部分召喚が可能になっていたのである。

「コアストーンシグマは低性能なチャイルドストーンみたいなものだから、いろいろと使えるしね。傷ひとつないし持ち帰ろ」

そう言いながら風音がアイテムボックスへとコアストーンシグマをポイッとしまう。

「それで知恵の実の誘導でのストーンタイタンの発見だけど、問題はない? 引っかかって一緒に付いてっちゃいそうにはなってないよね?」

周りを見回しながらの風音の言葉にメンバー全員が問題なしと返した。会食パーティのときとは違い、紅蝶のアミュレットの効果は正しく機能しているようである。

そして現在の風音たちだがパーティとしては召喚体や一部のゴーレムを除けばフルメンバーとなっており、

前衛:風音、ユッコネエ、弓花、クロマル、ジンライ、シップー

中衛:直樹、ライル、レーム(ゴレムスキャノン搭乗)、タツオ(ゴレムスキャノン頭部搭乗)、ジン・バハル、メフィルス( 炎の騎士団長(フレイムナイトリーダー) )

後衛:タツヨシくんケイローン、アダミノくん、ティアラ(アダミノくん搭乗)、エミリィ(アダミノくん搭乗)

配置はこのようになっていた。

いつでも緊急離脱が可能なように 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) 持ちの直樹を中心とし、後衛のティアラとエミリィはアダミノくんの背の台座に乗っての移動である。そして一行は特に問題なく先へと進んでいく。

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「うーん、やっぱりだけど……あらかた取られちゃってるね」

ストーンタイタンを倒してしばらく進んだところで、風音がマップウィンドウを開きながらそう口にした。

横で歩いているジンライも、マップウィンドウが撮影された写真を見ながら「ふーむ」と唸る。第六十階層はそのほとんどが攻略されており、隠し部屋も含めてあまり実のある成果は期待できそうもなかった。

「六十階層からはポータルが使えんからな。特にここらは他のパーティも繰り返し進んでいたからかなり探索はされているようだな」

「他のパーティか。オーリさんたちとガーラさんたちのクランが今は七十階層越えしてるらしいからねえ。レイブンソウルとドッグソルジャーももうそろそろ七十階層にたどり着けそうって話だし」

その風音の言葉にジンライが渋い顔をする。

「……ドッグソルジャーか」

「ジンライさん、トールさんがレイブンソウルと組んでるのは不安?」

現在、ガーラやジロー、ギャオのいるパーティ『ブレイブ』は、オーリたちのパーティ『オーリング』とクランを組み、ダンジョン探索を行っていた。一方でオロチやミナカのいるレイブンソウルもまた、かつてジンライと因縁のあったプレイヤー、トール率いるドックソルジャーと組み始めていたのであった。

「師匠、気がかりならオロチさんに話はしておきますよ」

その弓花の言葉にジンライは「いや、それには及ばん」と返した。

「他のパーティのことに口を出すのは行儀の良い行為とは言えんしな。それに話を聞いた限りでは問題なかろうよ。性根が直っているとは正直思わんが、利に聡い男には違いない。現状に不満がなければ、何かしでかすとは思えん」

そう口にするジンライの顔はあまり納得しているという風ではなかったが、それでも言っている言葉自体は全く以て正しく、風音も弓花も返す言葉はなかった。

「まあ、そうだねえ。他にもマザーズナックル、シャークキラーにムータンメンバーのドドリアンと熊殺し団も五十五階層にたどり着いたんだっけ?」

「クラン『ムータン』ね。ウォーレッドのみんなも合流したらしいから、戦力的にはかなりのモノになってるみたいよ」

パーティ『ウォーレッド』は、かつてブラックポーションの密輸を疑われたパーティである。リーダーのウォーレンは治療を受けて今までは回復し、立派な 血塗れの狂戦士(ブラッディベルセルク) 信奉者になっているとのことであった。

そのウォーレッドのメンバーは、昨日に弓花が全身甲冑状態の、いわゆる銀狼将軍の姿でムータンの溜まり場の酒場『ユミカテンプル』に赴いたときには号泣して迎え入れてくれたそうである。

ちなみに風音によって改修されて弓花を崇める神殿そのものとなった、その酒場を見て弓花が愕然としたのは言うまでもなかった。レーム曰く「荒ぶる鷹のポーズがない分マシじゃねーか」とのことではあったが。

「それとダインス自由騎士団だな。ワシらがおらん間にきた連中だが、A級ダンジョン制覇パーティとのことだ。ポータルも使いこなし、この付近を今攻略中とのことだから、顔を合わせるかもしれん」

「うーん。チャイルドストーン持ちのゼロドライブピッグとイチオクマンバッファローも討伐されているし、他のメンツの動きが大きいな。少し先に進むのを早めた方が良さそうかもね」

風音の言葉に全員が頷き、そのまま先へと進んでいく。

そしてその日、風音たちはすでに得ていた地図の情報を頼りに第六十二階層の入り口まで最短でたどり着いたのだが、そこでひとつ問題が発生していた。

第六十二階層では、 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) の使用ができなかったのである。