軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百四十二話 シンクロをしよう

「凄い……」

エミリィが思わず息を飲むほどに、目の前で発動された魔術はばかげた威力であった。

それはユーコーが召喚した英霊ユーケイとユーコー自身が同時に放った『コロナゲート』を合わせた相乗破壊奥義『サンライズ』。

目の前で発生した小さな太陽がセンチピードカノンの一体を燃やし尽くし、『残り』一体のセンチピードカノンも三分の一ほどがその炎によって消失する。それはあまりにも圧倒的な破壊の炎。エミリィの知る限り、ティアラの滅の炎に匹敵するほどの強力なものだった。

「まあ、こんなものね」

もっともその魔術を放ったユーコー自身の表情はあまり晴れ晴れとしたものではない。魔力増幅エンチャントも蓄魔器も装備していない現状では最大値の三分の一程度の威力でしか放てない上に、連続で出すこともできない。ユーコーの望む威力に今の一撃は到底届いてはいなかった。

「まあいいわ。後は行けるわね」

「ほとんど出番を取っておいてよく言いますな」

「まったくだな」

そんなやり取りをしながらユーコーの横をジンライとライノーを乗せたシップーが駆け抜けていく。それからユーコーが己の後ろに控えている英霊ユーケイに声をかける。

「私はちょっと疲れたから、ユーケイはあのふたりの補助をお願い。それと砲弾を撃ってきそうだったら破壊してちょうだい。アレは当たったら死んじゃうから」

「ええ、承知したわ」

そう言って英霊ユーケイは炎の馬を呼び出して乗りながら補助魔術を発動させ、それを受けて炎に包まれたジンライたちが攻撃を仕掛けていく。

そこにアダミノくんに乗っている面々からの援護射撃も放たれ、メフィルス率いる 炎の鷲獅子騎士団(フレイムグリフォンナイツ) も囲みながら敵のヘイトを分散していった。

「む、来るぞ」

「任せなさいッ」

ジンライの警告の言葉に英霊ユーケイが馬を走らせて正面に出る。そしてセンチピードカノンが再び砲弾を放とうとする瞬間に合わせて、英霊ユーケイは魔術『ヒートブラスト』を発動させて砲弾が口から出た瞬間に爆発させる。

「ピギィィイイイッ」

その爆発によりセンチピードカノンの頭部の殻にヒビが入りダメージを負っていく。それを見ながらユーコーが満足そうに頷いた。

(さてと。これで砲撃も潰したし、もう大丈夫かしら。『サンライズ』で倒したのは跡形もないけど、風音の倒したヤツは回収できるわね)

そう考えるユーコーの視線の先には風音の『新必殺技』により『抉り削られた』センチピードカノンの死骸があった。純物理攻撃でその威力を出されてはさすがのユーコーも舌を巻かざるを得ない。

「こんなのがゲームでできたらバランスブレーカーもいいところよね。ホント、あの子はどこに行こうとしているのかしらね」

「まったくだな。じゃあ俺は行くぜゆっこ姉」

「行くな。後、私はユーコー」

背後で森の中に向かおうとしている直樹をユーコーは手で掴んで止める。レベル96からこの森の戦闘で97になったユーコーのパワーは常人のソレを凌駕している。魔術師メインで成長させているとはいえ、直樹よりも腕力は高い。

「ご、後生だ。姉貴が、俺が行かないと姉貴が!?」

「あなたが二重遭難になったらそれこそマズいでしょうに。自重しなさい」

「くそー。ライル、姉貴に抱きつきでもしてたらぶっ殺してやるーー!」

そんな直樹の叫びにユーコーがやれやれと肩をすくめるも、戦闘はもうじき終わる。英霊ユーケイの補助魔術を受けたジンライとライノーのコンビ攻撃は強力で、一緒に戦っている弓花の活躍が霞むほどであったのだ。

◎ロードゾラン大樹林 沼地

「ブルッ……なんだ、悪寒が?」

「ほら集中する。ライルの悪い癖だよ」

「おっと、ワリイ」

風音を背に乗せながらライルが槍を持って駆けていく。目の前には無数のガーメとエンジェルヘア・デトネイターの群れがいるが、ドラゴンの身体能力を持つライルであれば風音を背負って戦うこともそれほど苦ではない。

「そんじゃあユッコネエはエンジェルヘア・デトネイターをお願い。クロマルとジンさんはガーメたちをかき回して。狂い鬼はテキトーに」

ライルにおぶさりながら風音がそれぞれに指示を出し、それに従って全員が動いていく。それから風音はライルに視線を向けて口を開く。

「ライルはジンさんとクロマルが牽制したのを撃破ね。ほら、そこっ!」

「うぉぉおおっ!」

その風音の指示に従ってライルが槍を振るい、切り裂かれたガーメの首が宙を舞った。

「そいつらはガーメ・スッポーン。甲羅は頑丈で攻撃は噛み付きだけだけど顎が異常に強いからね。噛まれないように気を付けて」

「あいよっ」

風音の指示に従ってライルがまた一体の首を落とす。風音のスキルを駆使した周辺の把握能力はライルのような前衛職にとっては凄まじく有用なものであった。また、近接戦での訓練を他のメンバーほどに積んでいなくとも風音が前線で活躍できる理由がこれであったのだ。

「楽しょ……うぉっ!?」

そのことに気を良くしたライルだが、次の瞬間にはその顔が強ばる。一斉に五体のガーメ・スッポーンが飛びかかってきたのだ。それに対して風音は手をかざし、ノーマル型のマテリアルシールドを発動させてガーメ・スッポーンたちを弾き飛ばしていく。

「メタルカザネJ、行って!」

その風音の言葉と共に背後からアダマンチウムと 金剛石(マナダイヤ) が組み合わさって造られたメタルカザネJが飛びかかる。

「そしてスキル・ドリル化からの触手ドリルッ!」

そのままメタルカザネJの腕が伸びて先がドリルとなり、弾いたガーメ・スッポーンの二体の比較的柔らかい腹の甲羅を貫いて、そのまま内部へと侵入していった。

「グゲッ、ゲゲ」

「ガブァッ!?」

そしてふたつに分裂して侵入したメタルカザネJはガーメ・スッポーンの口から飛び出して再度合体して風音の姿へと形を戻す。

「いや、いいんだけどよぉ。ちょっと、アレは……」

「ツッコミを入れない優しさって大事だと思う」

『勝っているのだからケチを付けるな我よ』

ライルのツッコミに風音とジーヴェの槍から同時に言葉が返ってくる。今は戦闘中なのだ。それもこちらが優勢になっているとはいえ、闇の森の魔物相手なのだ。使える手はすべて使わねば……と風音は動いていた。

「ともかく、続きだよ続き。ユッコネエがエンジェルヘア・デトネイターを押さえてくれてるんだから。さっさと倒すよ」

「ああ。けど、ユッコネエも凄いな」

ライルがそう言うと風音も頷く。

「まあ『最速ゼンラー』の速さがあるにせよ、スキル『毛根殺し』がここまで効くとは思わなかったけどね」

「なんだ、その恐ろしいスキルは?」

ライルが思わず自分のフサフサの毛を触ってしまう。

「エンジェルヘア・デトネイターから手に入れたスキルだよ。ユッコネエはそれを発動させてるからエンジェルヘア・デトネイターをああも簡単に倒せるわけ。毛根こそがエンジェルヘア・デトネイターの魂だからね」

「そういうもんなのか?」

ライルが首を傾げながらも、ガーメ・スッポーンの攻撃を避けていく。会話こそしているが、風音のスキルにより強制的に戦場を完全把握させられているライルには敵の動きが正確に見えている。

「そういうもんだよ。本当だったら空中からのエンジェルヘア・デトネイターの攻撃に足止めされてガーメ・スッポーンに喰われるってのがオチだからねッと。ジンさん、避けて」

『ぬぉっ!?』

次の瞬間に風音の目からビームが放たれ、囲まれていたジン・バハルの周囲にいるガーメ・スッポーンたちを灼いていった。

「倒せてないから今のウチに退いて」

『済まんカザネ!』

風音の言葉の通り、攻撃を喰らったガーメ・スッポーンたちはその身を甲羅の中に隠しているだけで倒されてはいない。ジン・バハルが離れてすぐに首を出して再び動き出していた。

「アレが効かねえのかよ」

「あの甲羅はかなりの硬度を持つからね。それにここまでやっちゃうとね」

風音の言葉と共に森の奥から何かがやってくる音が響いてきた。それにライルが眉をひそめながら、音の方を向く。

「今度は何だ?」

「来るよガーメ・スッポーンマザーが!」

「デッケエエエ!?」

ライルが声を上げるのと同時にそれが沼地へと飛び込んできて、水しぶきを周囲にまき散らす。それはガーメ・スッポーンの十倍はあろう巨大な亀だった。それにはライルもジン・バハルも驚きの顔をしているが、風音はすでにそれを分かっていたようで、手をかざして対抗できる存在の名を叫んだ。

「来てポッポさんッ!」

そして、天空より巨大な雷の鳥が突撃し、ガーメ・スッポーンマザーへと激突したのであった。