軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十九話 新武器を造ろう

◎ゴルディオスの街 バトロイ工房前

「おう、来たな」

「うん。来たよー。例のモノ持ってきた」

風音たちがバトロイ工房の前にまで行くと、そこにはホクホク顔の親方がセリオンハンマー二号をキュッキュと磨いていた。

「今日も乗ってきたんだね」

「まあな。こいつはアガトのヤツのよりはえーしな。絶好調だぜ」

すでに風音のゴーレムメーカーによって動ける状態になっているそのゴーレム馬は、軍に接収された一号よりも大きく、力強く、そして事実としてその戦闘力も速度も向上した最新モデルであった。

「つまりは今日も朝から風になってきたわけよ」

親方が満面の笑みでそう言い切った。

実のところセリオンハンマー二号ができてからというもの、親方は毎日のようにこのゴーレム馬を街の外で乗り回しているようである。

この付近はダンジョンがあるために魔物は出没せず、野生動物がいるのみであるため危険も少ない。A級ダンジョンに挑もうとしている冒険者たちが多くいるのだから盗賊団も寄りつかない土地柄となっている。

また、セリオンハンマー二号に付与された魔術は結局アガトのマイティーウルティマス一世と同じ『フライ』となっていた。

特に親方のセリオンハンマー二号には第六十階層クラスのチャイルドストーンを動力としているために飛行時間もマイティーウルティマス一世よりも長い四十秒は飛べるようであった。

「おーし、セリオンハンマー。お前は一旦ガレージに戻ってな。また後で磨いてやっからよ」

親方の言葉にセリオンハンマー二号は頷くと、パカランパカランとそのまま工房の中に入っていった。

『見事なものよの。まあ余にはフレイムグリフォンがいるから羨ましくはないが』

メフィルスが去っていくセリオンハンマー二号を見ながらそう口にした。その言葉には親方も「へへへ、そうですかい」と言って笑う。言葉ではそう言っても羨ましがっているのは表情ですぐに分かったのだ。ともあれ、風音たちが工房に来たのは別にセリオンハンマー二号の自慢を聞くためではない。

親方も頭を切り替えて風音に口を開く。

「うーし。あのブツの設計図だろ。見てやるから中に入ろうぜ」

そして、親方に案内されて風音たちはバトロイ工房の中へと入っていったのである。

◎ゴルディオスの街 バトロイ工房内

「モンドリー。いるか」

「はい親方」

親方の言葉にモンドリーの元気な声が返ってきた。親方が風音たちを案内した部屋はモンドリーの研究室であったのだ。

「例の話の件だ。お前の意見も聞きたいからな。ここを借りるがいいか?」

「ええ、今は経過観察だけですし問題はありませんよ」

そう言葉を返すモンドリーの横にあるテーブルの上では、小さな土人形が動いていた。どうやらモンドリーはそれを観察していたようである。

「あ、随分と動かせるようになってるみたいだね」

『ちっこいですねえ』

風音と興味深そうに首をフリフリしながら見ているタツオが口を開いた。

「うん。思ったよりもうまくいってるみたいでね。すぐにでも量産に取り掛かれそうだよ」

そう満足そうに言うモンドリーの横で土人形がペコリと頭を下げていた。それはモンドリーのゴーレム魔術で動いている 土人形(ゴーレム) である。グリモアでゴーレム魔術を得て、ミンシアナの王都でゴーレム魔術を覚えたモンドリーはこうして自ら造ったゴーレムを制御できるまでになっていたのだ。

「あら可愛らしいですわね。それは……ええと、マッスルクレイですの?」

じっと土人形を眺めていたティアラの問いに、モンドリーは首を横に振る。そのリアクションにティアラが首を傾げると、横から風音が口を開いた。

「ちょっと違うけど、似たようなものだよ、ああ、次の新製品ってとこ」

目の前の土人形を構成しているモノはマッスルクレイとは別の素材であり、どうも風音が関わっている案件らしかった。

風音はティアラにそう言ってから部屋に立て掛けてある竜骨槍を見る。

「それで親方。それはどうだったの?」

元々はジンライの所有物であったソレは、ジンライが竜牙槍を得たことでティアラへと渡り、今はメフィルスのものとなった武器だ。風音は竜骨槍を先に工房に持ち込んでいて、想定している武器に組み込めるかどうかの確認をしてもらっていたのである。

「おうよ。そいつは以前に折れちまったもう片方の竜骨槍の二の舞を演じないようにってより硬く進化がされているもんだからな。まあ、使うには問題はねえってのは確認が取れたぜ」

親方の言葉に風音が少しだけホッとない胸をなで下ろした。

設計図に描かれた武器は竜骨槍が骨子となっていたのだ。元々は火竜の骨であったその槍は炎の召喚体との相性は良く、メフィルスの力を十分に乗せるためには必要なものであった。

「そんじゃあ、そいつを見せてみな。話には聞いていたが、実際にどういうもんなのかは見てみねえと分かんねえしな」

親方が風音の持っている設計図に視線を向けながらそう口にする。

その言葉には風音も頷き、テーブルの上に設計図を置いて広げた。

「うん。これが動力石設置型武装の設計図」

そう言って周囲の視線を集めた紙に描かれたのはランスらしき武器であった。しかし、その内部には『竜の心臓』やマッスルクレイ、ヒヒイロカネを加えた謎の機構が描かれていた。そして、それの意味するところが分かる親方や、まったく理解ができないティアラなどの前で、風音はニヤリと笑ってこう口にしたのだ。

「つまりはお爺ちゃんの新しい武器。ドリルフレイムランスだよ」

◎ゴルディオスの街 白の館 中庭

「あ、ありやしたー」

「はい。お疲れさまでした」

風音が設計図を広げている一方で、弓花は玄関からボロボロになって出て行く剣士の背に、特に疲れもない顔で手を振りながら見送った。

(あー、ちょっと物足りなかったかなあ)

弓花はそう思いながら、中庭へと戻っていく。

試合は思ったよりも早く決着が着いていた。言ってはなんだが大したことのない相手ではあったのだ。まだ若い(とはいっても弓花よりも歳は上だが)剣士である。ランクは最近になってBに昇格したとのことで己の剣の腕を試してみたいと言っていたが、直樹やライルでも問題なく倒せてしまう程度の腕だった。

(それでも収穫はあったよね)

弓花はうんうんと自らに頷いている。基本的に弓花は白き一団メンバー以外との模擬試合以外は魔物相手の戦いがメインで、対人戦の経験数は少ない。なので他流の剣士との闘いは相手の実力とは関係なくこなすだけでも価値があるとのジンライの言葉に従い、挑戦もいやがらずに弓花はこうして受けていた。

(まあ、以前に比べると人当たりは良くなってるしね。ファンクラブもできたし)

その弓花のファンクラブとは、正確には『弓花と言う名の暴力の化身』を崇拝したい人たちが集まった後援組織『ムータン』のことであり、弓花自身のアイドル性を重視してできたものではないのだが、今の弓花は幸いなことにそのことについてはあまり理解できていなかった。

ともあれ、白き一団の中でもっとも腫れ物に近い存在として認識され続けてきた『 血塗れの狂戦士(ブラッディベルセルク) 』への周囲の反応にも多少の変化が起きているのは確かではあったのだ。

まだ 水晶の竜姫(クリスタルプリンセス) の存在こそ人々の間ではよく分からないものと捉えられていたが、こうして挑戦しても殺されない相手だという程度には認識されるようになっていたのである。

もっとも一昨日から来た挑戦者四人の実力はランクCからBの適正な実力に相当する程度。一般的に見れば強い部類だが、今の弓花には物足りなくもあった。

(うーん。もっと強い人、来てくれないかな)

そんなことを考えながら先ほどの闘いを反芻し、ひとり槍を振るっていた弓花は、いつの間にか家の外に気配があることに気が付いた。

「あれ……」

その気配に弓花が玄関の方に視線を向ける。そして、視界に懐かしい顔を捉えたのだ。

「えーと。もしかして、ミナカ?」

「お久しぶりですねユミカ」

弓花が視線を向けた先。白の館の玄関にいたのはハイヴァーン公国のリザレクトの街で別れた少女ミナカ・ライドウであった。

それは実に約八ヶ月ぶりの再会であった。