軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百十九話 整理をしよう

◎ツヴァーラ王国 王城グリフォニアス

「結論から言うと今のカザネの身体は以前と変わりはないようね」

シュルッと上着を羽織りながら風音はルイーズの言葉を聞いている。

ここはツヴァーラ王国の王城グリフォニアスの一室。風音はルイーズに体の異常がなかったかどうかを調べてもらっていた。

「角の跡とか、そういうのもないっぽいねえ」

風音も自分の頭をポンポンと叩くが何も出っ張ったりしている感じはない。

風音自身は夢中で自覚はなかったのだが、風音が空の上で弓花たちを救った際に、頭には角と猫耳が生えていたらしいのである。

「それで、あの姿にはもうなれないの?」

「なれないワケじゃあないけど、今は無理だよ」

今は戴冠式から既に3日後。昨日までは色々と催し物やらなにやらがあり、風音も特に変身後の疲れも見られないようだったので、そちらに参加していた。

そのため、後回しにしていた身体検査を今日ようやく行ったのだが、ルイーズの診断は何も問題なしである。普通の健康体、チンチクリンのAAAカップであった。まったく大きくなっていない。成長が見られない。ノーモア成長であった。

(まあ、ステータスに変化はなかったし、分かってはいたことだけどね)

風音は弓花のように耳がちょい伸びたということもなかった。見た目は完全に人間のままであり、おなかに口が出来たり、スキルをオンにしてないのに複乳になったりもしていない。もっとも職業は『竜と獣統べる天魔之王(見習い)』へと変わり、それに付随して『見習い解除』『無の理』『技の手』『光輪』『進化の手』のスキルも増えていた。また、これらのスキルはユッコネエには適用されない風音専用スキルであるようだった。

その中でも『見習い解除』というスキルは風音が変身した、弓花曰く『僕の考えた最強のキャラ』になるためのスキルである。発生条件は同レベル時に1回使用可能というもので、つまりは風音がレベル41になればまた一回使用できるが、すでに変身をしてしまった現在のレベルのままでは変身は不可能であるということだった。

また、『技の手』というスキルはレベル上昇時にスキルレベルを1上昇させるポイントが追加されるというもの。ただしレベル2からレベル3になるには2ポイント必要で、レベルが上がれば必要ポイントも増えてくる。風音も『オッパイプラス』ならばすぐにでもレベルが上げられるが、ストーンミノタウロスをレベル3にする場合には、レベル41になってポイントが増えてからでないと上げられないようだった。

『進化の手』スキルはタツオやユッコネエや狂い鬼のような自分の側の魔物に該当する存在の能力を上昇させるもののようで、スキルに限らずステータスにも効果は及ぶが、条件としては『技の手』と大体同じである。

続けて『光輪』スキルは光攻撃系の吸収と封じ込めた術を威力減衰半分程度で使用できるというものである。また、見習い解除時の『竜と獣統べる天魔之王』の状態ではゴーレムメーカーのスキルを封じられたので、成長の余地はあると思われた。

最後に『無の理』だが、これは『炎の理』『癒しの理』と同様に魔術のスキルである。八つの因子に頼らない無属性魔術の使用解除。光輪を転移させたのも無属性魔術のようで、空間や転移に関連する魔術が扱えるようだ。もっとも、その魔術を覚える手段がないので現時点においては完全な死にスキルとなっていた。

(『無の 理(ことわり) 』はともかく『技の手』と『進化の手』はどうしようかなぁ)

未だにスキルレベル1のスキルでも、使えるモノはいくつかある。それに『魔王の威圧』のようにそろそろレベルが上がりそうなモノに使うのももったいなくもあった。タツオたちをパワーアップさせることの出来る『進化の手』も有用ではあるが、誰の、何に使うかが悩みどころだ。

「どうしたの、カザネ?」

「え? あーいや、考え事」

気が付くとルイーズが心配そうな顔で風音を見ていた。

「ま、ここ三日はパーティやらなにやらと色々とあったしね」

「アオさんがとりあえず喋らないでおいてくださいとか失礼なこと言うんだよね」

風音がそうプリプリと怒って言うが、それにはルイーズは苦笑するしかなかった。

風音は白き一団の鬼殺し姫ではなく、神竜皇后として、『竜喰らいし鬼軍の鎧』の変身スキルでボイン姉ちゃんバージョンでの参加である。それは風音もすっかり忘れていたが、ゆっこ姉を起こしに王都シュバインに行ったときに使っていたオーガのスキルである。そもそも変身して潜り込むようなクエストもないので使いようがない。似たような理由で使われない『そっと乗せる手』も泣いているのではないだろうか。

その姿でいつもの口調で話されては適わないというアオの意見はもっともな話であり、魔王の威圧を若干かけていたこともあってよけいな虫も近寄らず、実際問題も起こらなかったのだから文句を言う筋もないのである。

ともあれ、何事もなかったのは事実で、街はまだ戴冠式に合わせたお祭り騒ぎとなっている。風音も今日からはフリーとなったので、見に行くことも出来る。ここまでの間に弓花に屋台菓子で餌付けされているタツオとの親子の愛情を取り戻すべく、風音は頑張らなければならないのだ。

『母上、ユミカと一緒に串焼きを食べました。串は食べられないそうですが、肉は美味しかったです』

『母上、ユミカに綿菓子というモノをいただきました。すごく甘いです』

『母上、ユミカが……』

などと、パーティ終了後に笑顔で聞かされる悔しさを今日こそ払拭するのだと風音は意気込んでいた。

なお、ジーク王子はすでに帰国し、アウディーンは今は『アウディーンの塔』の見学へと向かっている。アウディーンについてはハイヴァーン出身のケイランから「恐れ多い」と大反対を受けたこともあり、風音は后候補からは外れているらしく、風音の認識的に状態異常:ストーカーは解除されていた。

ジーク王子とはあまり話す機会もなかったが、またミンシアナに戻った際に会う約束はしていた。風音としてはお付きの筋肉部隊に目がいっていて生返事だったために覚えていないのだが、そう答えていたらしい。不思議なことだ。

「なんにせよ、これでひとまずはフリーの身の上だよ。今日は遊ぶよ」

「けど、明日はまた、魔法温泉街に戻るんだから大忙しよねえ」

ルイーズの言葉に風音も「うぐっ」と言ったが、まだ住民のための家造りが終わってはいない。

「まあ、それも数日ってところだし、ゆっこ姉からも温泉街の方はフォローしてくれるっていうからね。ソレが終わったらまたいつもみたいになれるよ」

風音たちが向かう予定のA級ダンジョン『ゴルディ黄金遺跡』攻略はゆっこ姉としても優先したい課題である。そしてそれを手早く成し遂げるには風音たちの力が必要だろうとはゆっこ姉も考えていて、そのためであればカザネ魔法温泉街への協力も惜しまないと話も付いている。それにカザネ魔法温泉街は今もマッカとやりとりをしながら実質的な運営は出来ているし、最悪、直樹を置いておけば何とかはなる。

確かに領主は風音だが、風音が領主である理由は街の温泉のオーナーであるだけではなく、白剣を扱えるために現在はほとんど存在していないミンシアナ王族と見なされているからだ。当然、血の繋がっている弟の直樹も形の上ではミンシアナ王族であり、代理としての統治も認められている。

こうして見ると権威的な裏付けのないのは今や弓花ぐらいであった。まあ、弓花にしてみれば特に羨ましくもない話ではあったが。

ともあれ、風音としては久方ぶりの休日だ。タツオと共に街を渡り歩こうと風音は張り切っていたのである。