軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百九十話 場所を決めよう

その日、トルダ温泉街から西に向かう馬車が4つあった。

それはヒポ丸くんとサンダーチャリオットに、水晶馬2頭と不滅の馬車と白石馬ヒッポーくんハイとユッコネエの出したサンダーチャリオット2号。そして最後にパーティ『シールドバース』の所有する地竜と竜車である。

「グアッ」

『はー、マルクスさんもご苦労なされてるんですねえ』

そして最後尾にいるパーティ『シールドバース』の乗る竜車を引いている地竜マルクスの頭の上にはタツオが乗っていて、くわーと鳴きながら話をしていた。

「おう、鬼殺し姫の息子さんよ。マルクスはなんつってるんだ?」

竜車の御者席にいる盾士のハン・モックが、さきほどから話しているタツオとマルクスの会話が気になって話しかけてきた。

タツオが風音を母上と呼ぶのをハン・モックは何度も聞いていたし、竜騎士の竜の育て方には親子関係の刷り込みを行うこともあるとは聞いている。

幼体の頃から喋れるドラゴンは珍しいが、ハン・モックもランクA冒険者。不思議な者にも見慣れているし、そういうものなのだろうと認識していた。

なお、ハン・モックもマルクスを従える竜使いであり、竜騎士とは同類と言えた。そのハン・モックの質問にタツオがくわーと、何を話そうかと首を傾げると、マルクスが「ぐががー」と声を出したので、頷いて、そしてハン・モックへと口を開いた。

『えーとですね。ここに来てからご飯がおいしくないって嘆いてます』

その言葉にはハン・モックも目をパチクリとさせた。元々はミンシアナの北の方で活躍していたハン・モックたちはこのツヴァーラに来たのは最近のことであった。どうやら、以前の場所で食べていた物の方が美味しいとマルクスは訴えているようなのだ。

「うん、そうなのか? いや、そうか。ここらへんの魔物はあまり強いのもいないしな」

地竜は主に食事に魔物を食す。

街に長期滞在する際には普通に肉を購入したりもするが、基本は魔物を倒して食べるのが一般的だ。実際に魔物と人間の生息域は異なっているし、であれば普段魔物が何を食べているかと言えば別の魔物というわけだ。特に魔物は、食べるのが強い魔物ほど美味しく感じるらしい。

ちなみにハン・モックはマルクスの餌用にかなり巨大な冷却付与付きの不思議な袋を購入していた。

「そうか。まあ今回はたっぷりと食わせてやれると思うぞ。なにしろブルートゥザだ。上手く行けば進化するかもしれん」

ハン・モックの言葉にグォォオッとマルクスがうれしそうに鳴いた。

『楽しみだと言ってますね』

「はっはっは、そうかそうか」

『私もそろそろご飯を食べられる時期なので、今回は挑戦してみようかと思います』

フンスッと意気込みながらタツオが言った。その意味は分からないが、やる気のタツオを見て、ハン・モックもうなずく。

「なんだか分からねえが、肉食えば強くなるさ。特にドラゴンなら間違いねえ」

『はい。頑張ります!!』

そして意気込むタツオとハン・モック、そしてマルクスの、2匹とひとりの話はしばらくの間続いていたようであった。

**********

そのタツオたちが馬車の列の後ろで話をしているとき、風音たちも当然久方ぶりの馬車の中での会話を楽しんでいた。

「んー、ユッコネエのサンダーチャリオットも普通に動いてるね」

風音が窓から後ろをのぞき込んで、そう口にする。なおユッコネエは今は風音たちの乗っている馬車ではなく自前で召喚した馬車の上で寝ている。

風音と能力同期がとれるようになり、サンダーチャリオットの召喚もユッコネエは可能となり、そして 自然魔力(マナ) 吸収と光合成があれば、召喚の維持にも問題はないようである。

「途中で召喚解除されたら困るわよ。乗ってるの私たちじゃなくて、テラスさんたちなんだし」

風音の言葉に弓花がそう口にする。

スピードは『シールドバース』の竜車にあわせているのでそこまでの速度ではないが、それでも急に馬車が消えてはひどいことになるだろう。なのでユッコネエも今は自分で出した馬車の上で寝ているのだ。それならば自分も落ちてしまうのだから無意識に消したりはできない。

なお、不滅の馬車にはパーティ『流星の雨』、サンダーチャリオット2号には『風の使い』が乗っていた。それはテラスがユッコネエを気に入っていたためである。

「む、動いたのではないか!?」

「落ち着いてジンライくん、そりゃ中で進化してるんだから動くわよ」

そして、風音たちの話している横では、ジンライが繭をなでながらルイーズと話していた。

「ふむ。ワシのために生まれる猫か。どんな猫なのであろうな」

「ユッコネエの眷属だけど、チャイルドストーンを核にしてる魔物だからねえ。召喚獣じゃないからジンライさんがそのまま育てることになるけど、大丈夫かな?」

「ならば常に共にいるということだな。ああ、素晴らしい。最高じゃないか」

風音の言葉に目を輝かせるジンライに、周囲が生暖かい目で見ている。

(ユッコネエに 雷神砲(レールガン) に、それでこの新しい猫か。そりゃ風音のせいってわけではないけどさ)

風音は風音なりにジンライのことを考えて動いてきたわけで、それは悪いわけではなく、普通に考えて良いことであり、実際にジンライも助けられている。

しかし、最近の師匠がだんだん何かおかしなモノに変わっていくような気がして弓花は心配であった。実際のところは変わっていくような気がしてというか、もう相当なモノだと思うが。

そして一行は、西のユイヘサルの森の入り口近くにあるミリティアの町へとたどり着いた。時間は夕刻に入ろうという頃だが、事前に連絡があったのだろう。町全体での歓迎があった。

◎ミリティアの町 町長の屋敷

「いや、まさか本当に来ていただけるとは思いませんでしたよ」

風音たちが町に到着した日の夜は、町長の屋敷を貸し切られての歓迎会が行われた。

とはいえ、今回集まった冒険者の人数も多いので町長と話しているのは各パーティのリーダーと討伐の切り札とされているランクSのジンライだけである。ついでにタツオが風音の頭の上に乗っていた。

「ま、俺らがここに来られたのはそっちのランクSのジンライさんと、白き一団のリーダーのカザネがいるからだ。さすがに俺らだけじゃあ、あれを相手にするのは無理だしな」

そう口にするのはハン・モックである。実際、彼らは戴冠式後の討伐に参加する腹積もりでトルダ温泉街で待機をしていたのである。彼ら単独、あるいは冒険者たちを集めても討伐は難しいと判断するほどにブルートゥザは恐ろしい魔物だということだった。

「いえいえ。こうして来ていただいたのです。ありがたい限りでございますよ」

そういう町長の顔は、ホッとひと安堵という感じの表情である。

ユイヘサルの森は目の前。ここがブルートゥザの犠牲になる可能性が一番近い町だ。すでに逃げられる住民は一時避難をしているらしく、町の中は閑散とした雰囲気があった。

「それで、ブルートゥザは今のところ、どんな様子なのでしょう?」

その町長にテラスが尋ねる。町長はその言葉には「そうですね」と前置いてから話し始める。

「現在は森に入って、三時間といったところでしょうか。ブラッドベアの生息域で狩りをしているようです」

(そういえばトリケラトプスって草食だったよねえ)

とは今更ながら風音は思ったのだが黙っておく。ちなみにブルートゥザは雑食で、捕食対象のブラッドベアは熊型の魔物の中ではレベルは高くはないが、そこそこには強い魔物である。

そして風音はウィンドウのマップを開きながら、町長の言っている場所を把握する。トルダでルイーズの用意した地図データが自動で記録されたそのマップには、ブルートゥザのいる地域より南に行った場所に開けた大地があることを示していた。

「町長さん、ブルートゥザの居る場所から南側に木の生えてない地域があるよね?」

「ええ、ありますな。何故か草木が生えぬ場所で、魔物たちも近寄らんので狩人の休憩場所になっておりますが」

その言葉に風音がフームとうなった。作戦の想定している状況にマッチしているが、魔物が近づけないとなると条件としてはよろしくない。

「そこはまったく魔物が近寄らないの?」

「いえ。そういうわけでは。休んでいる者が襲われることもありますし」

その町長の言葉に風音は「じゃあ、そこにしようか」と口にする。

その言葉に、ハン・モックもテラスもヴァッカ、そしてジンライも頷く。すでに作戦内容は告げてある。故に風音が何を思って、そう口にしたのかは理解していた。

『母上、そこで倒すのですね』

「うん。」

タツオの言葉に風音は強く頷いた。そして戦いの舞台が決まったのであった。