軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十五話 新メンバーを加えよう

◎ウィンラードの街 ジンライ道場前

(ヤバい。帰りたい…)

ジンライ道場の前で風音は固まっていた。原因はマッチョの集団とそれを率いて走り込みをしている親友に近付きがたい何かを感じたためである。

「いっちに、さんし」

「「「いっちにさんし」」」

風音がそうこうしているうちに弓花は街の外に向けて走り出していってしまった。

「ふう、危機は去ったね」

「何をしているんだ。お前は?」

「へ、うわっ」

風音が裏を向くとジンライがそこにいた。

「ビックリした。ジンライさんじゃないか」

「ふむ。ここまで裏をとったのに気付かなかったとはな」

「うーん、危ない匂いじゃなかったから無視してたみたい…だよ?」

改めて考えてみると風音は自分がジンライを認識していたことに気付いた。努めて意識から除外していたらしいと自己分析をしてみる。

「そういうものか。便利な鼻だな」

「そうだねえ」

風音も頷く。このスキルには本当に何度も助けられている。

「それで弓花に会いに来たんじゃないのか?」

「そうなんだけど、なんか筋肉の集団を率いていて怖かったので」

「あれはうちの弟子どもだ」

憮然とジンライは答える。

「全員弓花に打ちのめされてな。あいつに心酔しちまったらしい」

そう切り出すジンライに風音は苦笑する。

「お弟子さんでも勝てないんだ?」

「たった一週間であそこまで伸びられちまえば才能というもんを考えざるを得ないだろうよ」

もっとも…と、ジンライは口にする。

「まだワシには及ばないがな」

風音はこの人もそういう人種なんだなあ…と目の中の闘志を感じて思った。

「まああがっていきなさい。弓花が戻るまでに話しておきたいこともあるしな」

◎ウィンラードの街 ジンライ道場内

「茶だ」

「どうも」

風音はジンライの出した茶をすすりながら、ここ最近のウィンラードの話を聞くことにする。

「お前が出ていった後ぐらいにオーガ討伐部隊と護衛部隊の割り振りが決められたというのは聞いているかな?」

「ギャオから少しは。結構な指定討伐報酬が出るって話だよね」

レイダードッグやホーンドラビットのような通常の指定討伐魔物とは別に臨時指定討伐魔物というものがある。これは異常大量発生や縄張り移動などの魔物被害を抑えるために国が臨時で行うものだ。

「ギルドにいったら今回倒した五体の他に、行くときに狩った二体も改めてお金がでてたよ」

「七体狩ったか。討伐部隊に参加していないのに討伐数トップになったとは、そちらも変わらずだな」

「偶然だよ。多分餌がよかったんだろうねえ」

この場合の餌とは商人である。

「餌にされた連中もあわれだな」

ジンライが苦笑する。

「そういえば討伐部隊にも何人か獣人を入れてはいるのだが、お前やギャオのように鼻が利くヤツはそうそういないようだな」

「獣人といっても千差万別だしね。それに混血化が進んで能力は低下傾向にあるんだって」

風音は犬の嗅覚を獣人のそれに偽装することを決める際に、そうした獣人の状況も調べている。ギャオとの食べたもの当てもその過程で知ったのだった。

「かと思えばお前のようなヤツもいるか。まあウィンラードの状況はそんな感じだな。オーガを放置すれば交易も滞る。それは街の死活問題だ。早急に対応する必要がある」

「ギャオと私で手分けすれば結構減らせるかもねえ」

それはさきほど寄ったウィンラードのギルドでも言われたことだ。

「うむ。それと、弓花のことだが」

「弓花がどうしたの?」

「そろそろあの異常な成長も頭打ちになってきたようだ」

ジンライの言葉に風音は首を傾げた。

「成長止まっちゃうの?」

「いやそうではないと思う。あるべき段階まで無理矢理引き上げられていたものに、ようやくたどり着きそうだという感じだろうか。少し説明が分かりにくいかもしれんが」

「うん、そうだね」

風音は正直に答える。遠慮をする性格ではないのだ。

「ふーむ。決められた段階までは一気にあがるが、以降は正常な成長に戻るのではないかな…というわけだ」

「決められた? 誰に?」

「知らん。まあ神様だろうな。この場合は」

神様ね…と風音はジンライにも聞こえないように呟く。

(この世界は実際にいるんだったっけ『神様』。もしかすると私たちがここに来たことにも)

…関係がある可能性はある。

「とりあえずその段階まではワシが仕込める。あとは本人の向上心次第というところだな」

「まあ本人の納得行くようにやってもらえればいいよ。私は」

「お前ならばそう言うだろうと弓花も言っていたよ」

ジンライはそう言って笑った後、考え込むようにして口を閉じた。

(む?)

なんだろうと風音がジンライを見るとジンライがゆっくりと口を開き、こう切り出してきた。

「ワシをパーティに加えてはもらえぬだろうか?」

***************

「というわけで新しくパーティに入ったジンライさんです。弓花も仲良くするように」

「よろしく頼む」

弓花が道場に戻って師匠に声をかけに言ったところ、親友が帰っていて妙なことになっていた。具体的に言うと師匠がパーティメンバーになっていて、親友と意気投合していた。

「おや? なんで? なんでこんなことに?」

「いや一緒に行きたいって言うからさ。弓花はいやなの?」

風音の返答も嫌にあっさりしたもので特に言うこともない。

「いや、いやいや、いやじゃないけど…師匠、どういうことなんです?」

「どうもこうもねえよ。ワシもそろそろ頃合いだと思ってたしな。旅にでるってんなら面白くなりそうなのがいい」

そうジンライはニヤリと笑う。

「道場は?」

「お前等がまだ街にいるなら開けておくが、出るならジンロに任せる」

「押忍っ」

弓花の裏にいる男が返事をする。

「ジンロさんもそれでいいんですか?」

「姐さん、ここは元々俺たちが無理を言って開いてもらってたんです。日頃師匠からはこういう日が来るってのは聞かされていましたし」

そう言うジンロの目は涙で潤んでいた。

(弓花、姐さんって呼ばれてるよ)

という風音の感想はさておき

「ならば笑顔で送り出すのが弟子の務めってもんです」

「すまねえな。まあ、まだしばらくはいるがよ。この風音と一緒にちとオーガを狩ってこなくちゃいけねえからあまりこっちにはいないかもしれんな」

ジンライがそう風音を紹介すると

「この人があの…」

「にらみ一つで鬼が即死する」

「…伝説の鬼蹴り姫!?」

噂が絶賛成長中だった。

「というわけで第4回パーティ会議を始めまーす。どんどんぱふー」

弟子達は練習に出して弓花とジンライを交えての会議である。ちなみに第3回は最初に狂い鬼の話を伝えたときであった。

「これはどういう風に返せばよいのだ?」

「いえ、普通でいいんです。普通で」

若干戸惑い気味のジンライに弓花は頭を抱えてアドバイスする。

「はいはい、新メンバーのジンライさんと弓花の仲も良いようで私も安心です」

「まあ師匠が一緒なら心強いし、私も旅しながら修行もできるしいいとは思うけど」

「ジンライさんは長年大陸を巡って武者修行していたそうだからね。旅のことなら任せろってもんだよね」

「ふむ。そこらへんはそうだな。ある程度は任せてもらって良いと思うぞ」

ジンライさんは二人の期待に頷いた。実際国や土地のことは風音も弓花も勝手の分からぬところなので、そうした熟練の同行はありがたい話ではあった。

「で、ここで問題になるのは私の能力になるんだけど」

風音は魔物からスキルを手に入れる体質(?)なのを弓花以外には話していない。

「とりあえず簡単な説明はしておいたから」

「あ…そう」

だが呆気なくジンライにも話したようだった。

「あんたがいいならいいんだけどね。結構知られないように嘘吐いてたりしてたじゃない」

「そりゃ説明が面倒だっただけだよ。一緒に旅するんなら知っておいた方がいいっしょ」

「まあ、そうだけど。師匠はどう思ったんですか?」

「どうってのはカザネの能力のことか?」

「ええ…」

「ま、珍しいとは思ったよ。けど特殊な能力者ってのは時折お目にかかることもあるからな」

「へえ…」

風音は興味深そうにジンライの話を聞き、この世界は知らないことがまだたくさんあるようだと思った。