軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百三十話 鬼を追おう

前回、おいしいキノコ鍋が食べられそうだと書いたが、残念ながらソレは叶わなかった。

風音が手に入れたキノコはバンブーキノコという、口に入れれば死人も飛び起きて腰を振ると言うぐらいに強力な滋養強壮剤の元となるレア食材であったらしい。

魔物の多い魔素の濃い場所でなければ育たず、また木の上などの人に見つかりにくい場所にしか生えない非常に稀少な食材で、貴族相手に高額で取り引きされているものなのだと説いたのはルイーズである。

「メフィルスが枯れる直前にこれ使って頑張ってたのよねえ」

『うるさいわ。あれのおかげで枯れ果てたのであるぞ』

そんなやりとりもあり、そもそも食事に出したら色々と色々な部分がエラいことになるとのことで、食事には出さずにルイーズがすべてのバンブーキノコを高額で風音から購入していた。自分で使うつもりらしい。

ともあれレア食材は稀少で高価なだけあり、その効力も高いモノが多い。調理するのは十分に気をつけた方が良さそうであった。もっとも風音が採ったものは他にも山菜や山芋など色々とあったので、その夜の夕食は鍋にしてそれらもろもろを煮て食べることにした。風音も久方ぶりに山芋をすり下ろしてご飯に乗せて醤油を垂らして食べた。非常に美味であったという。

しかし、その夜のイベントは食事だけではなかった。それは深夜にやってきた。

森の中心部まで進んでいた風音たちは、距離のある森の外まで戻らず、今夜は森の中の開けた場所でコテージを出して泊まることにしていた。そこにマッドスパイダーたちの襲撃があったのである。

◎黒い石の森内 風音コテージ内 深夜

「あーまたー?」

外で戦闘の音が聞こえる。風音は己のスキルである『直感』により強制的に起こされて、布団から起きあがった。とはいっても危険度は軽微と感じられる。自分が出るまでもないというのも分かる。

そして3階の寝室の窓を開けて風音が外を見るとロクテンくんがマッドスパイダーに一撃を見舞っているところだった。

タツヨシくんドラグーンとノーマルも接近して武器やファイア・ヴォーテックスでトドメを刺している。また背後からは量産型タツヨシくんたちの投石やヒポ丸くんやヒッポーくんらのファイア・ヴォーテックスが発射されてマッドスパイダーを攻撃していた。スペル付与が大活躍である。

なお森の中と言っても、コテージの周辺は開けており、マッドスパイダーたちも木々を飛んでの攻撃などの立体機動攻撃は出来ない。故に地に着いた状態でコテージまで進んでの戦闘となるが、それは当然行動を限定されたマッドスパイダーに不利に働く。特に量産型タツヨシくんの投擲攻撃の餌食となっているマッドスパイダーが多いようであった。

「カザネェ、なんですのぉ?」

外を見ている風音の後ろからティアラの眠そうな声(実際に寝てたのだろうが)が届く。最近は風音、タツオと三人で川の字で寝ることも多いティアラである。ティアラの横でタツオはくかーと寝ているようだった。

「また、マッドスパイダーが攻めてきたみたいだね。あ、ジンライさんが飛び出てった」

元気な元老人である。このパーティの中でもっとも充実している生活を送っているに違いない。そのジンライ参戦でその戦闘はすぐさま終了し、風音たちも就寝に戻ったが、その後も襲撃は散発的に発生していたようだった。

なお、ゴーレム系統は自律個体扱いなのでこの戦闘で風音に経験値は入ってはこないが、ロクテンくん等も戦闘経験値は積むことは出来る。それにより行動ルーチンの最適化も行われ、消費魔力をわずかながら削減したりも出来るようである。

◎黒い石の森 中央付近 風音コテージ内 朝

そして一晩経ったそこはまさに戦場跡だった。

風音が外に出ると、そこら中に転がっているマッドスパイダーの死骸の中をロクテンくんたちが巡回していた。素材の回収も完了しており、しっかりコテージの横に積まれていた。

「傷とかは……ま、ないか」

ロクテンくんらの状態を風音はチェックするが、ロクテンくんやタツヨシくんドラグーン・ノーマル、ヒポ丸くんは攻撃力よりも防御力の方が優れているし、量産型やヒッポーくんたちも遠距離からの攻撃だけだったので特に傷も付いていないようだった。

(まあ、散発的にきたから保ってたとも言えるんだろうけどね)

この中で一番、戦闘を継続出来るのは、動力球(小)という大出力の動力源を持つロクテンくん。続いてはマッスルクレイ持ちのタツヨシくんシリーズやヒポ丸くんとなるが、どちらもマッスルクレイに魔力を蓄積させることが出来るが、戦闘後の溜め時間が必要となる。マッスルクレイを持たないヒッポーくんシリーズは移動用であり、そもそも戦闘としてはファイアヴォーテックスを撃つ以外は大したことは出来なかったりする。

なので今回攻めてきたマッドスパイダーが断続的ではなく、一斉に攻めて来ていたのならロクテンくんたちだけでは保ってはいなかっただろう。もっとも、そのような事態であれば、風音たちも寝てなどいられず、参戦していただろうが。

◎黒い石の森 闇の森方面 朝

「そんじゃ、今日はよろしく」

「がんばろー」

「うむ」

『おお、今日はライルもいっしょですか。捗りますね』

本日の組分けは、ふた組になった。

それは、前日、前々日に倒したマッドスパイダーと併せて、すでに200匹近くは討伐しており、相手の警戒も厳しくなってくるだろうということ、また夜中に襲撃してきたマッドスパイダーの中に普通よりも大きい個体も混ざっており、直樹組だけではそろそろ戦闘が厳しくなってきそうだろうという予測の上での変更であった。

その編成で風音組に追加されたのはライルとホーリースカルレギオンとヒポ丸くんである。風音の指示であるため直樹も(内心は兎も角)、何も言わなかった。

そして一行は出立したわけだが、昨日までの例で行けば、さらに数が増え、大きな個体の群れがやってくると風音たちは考えていた。だが、どうやらその予想はハズレだったようである。

「迫ってくる臭いもないね」

『ですねー。小動物の臭いがいくつかしますが魔物的なのは感じられません』

くんくんと鼻を鳴らしながら風音とタツオがそう口にする。周囲にはマッドスパイダーの蜘蛛の巣が張り巡らされており、ここが連中の 領域(テリトリー) なのは間違いないようであるのだが、しかし襲ってくる気配がないようである。

「俺らに恐れをなして逃げたとかないのか?」

そのライルの言葉に風音とジンライがうなる。

「……ないとはいえないかも」

「元々闇の森から抜けてきたわけだしな。遠征に失敗すれば戻るのは必然ではあるか」

日和見的なライルの言葉ではあるが、魔物というのは存外に賢く臆病な性質を持っている。ここまで散々マッドスパイダーたちが狩られているのであれば、逃げ出してもおかしくはない……と、風音とジンライも考えてはいた。

「まあ、それならそれで構わないけど、どこかで集まってるのかもしれない。警戒しながら進もう」

その言葉に全員が頷いて進んでいく。そして数刻した後のことだった。

風音がそれに気付いたのは。

「あ、魔物発見」

どうやら、風音が臭いをかぎつけたようである。だがその表情は微妙だった。

「どうした?」

「うーん。マッドスパイダーじゃないね、これ。オーガだわ」

その風音の言葉に呼応して、『竜喰らいし鬼王の脚甲』が光り出す。

「ちょっと、狂い鬼!?」

突然、風音の召喚に応じたわけでもないのに狂い鬼が顕現した。風音はその様子に目を丸くする。

「ぬ、どうした?」

ジンライの質問に風音が「さあ?」と首をひねるが、狂い鬼はそんなやり取りなどまるで気にせず、走り出した。それは風音の言う臭いのした方向であった。

「ちょっとー、狂い鬼ーー!?」

「仕方ない。追うぞ!」

そして、やむなく風音たちも狂い鬼の後を追い出したのである。

黒い石の森。そこは、かつてウィンラードの街を襲ったオーガの生息地である。そして狂い鬼はそこのボスであったのだ。