軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八話 薬の話を聞こう

リザレクトの街の冒険者ギルド隣接酒場の中央のテーブルでは風音と風音の膝に戻ってきたタツオ、それに向き合うブリックとライルという形で席に着いていた。その周囲には他の冒険者たちも囲んでいる。先ほどからの話題は、ここ最近で噂になっている白き一団の活躍の裏取りだった。

「最近じゃあアンタらの魔狼退治が一番ホットっちゃあ、ホットだぜ。 血染めの狂戦士(ブラッディベルセルク) さんだっけか。あの娘の名前を知らないヤツはここらじゃいないよ」

「ああ、やっぱり浸透しちゃったんだ、その二つ名」

弓花への良い土産話が出来たと思う風音である。

「彼女は大闘技会でも活躍だったからな。200体の魔物を狩ってその上に魔狼まで討伐した血に飢えた女槍使い。ま、話題にならないはずはないわな」

そう口にするブリックは、さきほどからブスッとしたライルを通して風音の前の席に座って話している。

「そもそもお前、カザネとも知り合いだったのかよ」

「坊ちゃんの方こそ鬼殺し姫と同じパーティになってるたぁね。世の中何が起きるか分からねえわ」

ブリックの横でライルが不貞腐れている。

「ライルの方こそブリックさんと知り合いだったんだね。で、坊ちゃんって何?」

風音の興味津々な顔にブリックが「ま、将軍様の息子様だからなー」と面白くもない返事を返した。何でもライルたちは出世払いと言いくるめられて格安で情報をもらってたらしくライルも頭が上がらないようである。

「坊ちゃんは将来有望だからなー。お手伝いしてあげてたわけだ」

その言葉にライルが反論しないところをみると手伝いをしていたというのは事実ではあるようだが、二人の空気を見る限りあまり仲が良さそうではなさげであった。もっとも単にブリックがからかってライルがふてくされているだけのようだが。

「ところで今日は 血染めの狂戦士(ブラッディベルセルク) さんはいっしょじゃあないのかい?」

「別行動で今は多分お買い物中だよ」

その言葉にブリックがホッと一息つく。

「ま、揉めて皆殺しにでもされたらおっかないから、いいけどな」

そう口にしたブルックの口調には冗談の色はなかった。

実のところ、ブルックも最初は 血染めの狂戦士(ブラッディベルセルク) の伝説は白き一団の噂話に花を添えようと誇張された話だろうと高を括っていた。だが、実際に魔狼討伐に参加した冒険者や、中でも弓花の行動によって救われた冒険者たちの真面目に話す顔を見て認識を改めざるを得なくなっていた。 血染めの狂戦士(ブラッディベルセルク) ユミカは強い。だが、恐るべき危険な女だと。そしてそれは今周囲を囲んでいる冒険者たちの共通した認識でもあった。

(弓花……)

風音は親友に対する世間の評価にそっと目を閉じて哀れんだ。ここ最近、完全に狼化したり色々と人間も辞めてきている親友である。今後もきっとこの手の問題は弓花を悩ませるのだろうなと風音は考えた。

(今の弓花が聞いたら、泣いちゃいそうだなー)

ジンライに泣いてしまった弓花は絶賛自己嫌悪中である。落ち着いたときに聞かせて上げようと風音は頷いた。

「ん、どうかしたのか?」

「いんや、別に」

ブリックの問いに風音はすまし顔でそう答えた。タツオは飽きたのかくーと鳴いて寝ていた。さすがに人も集まりだしたし黒竜の子供を預かってるとだけ説明しておいた。

「そんで、最近の面白い話だったか」

ブリックがそう口にして話を一旦区切った。

ここまでは、このハイヴァーン内での風音達の活躍というか起こした騒動の中で表に出ている部分についての話をブリックや他の仲間たちが尋ねては風音達が答えてきた。

竜の里での騒動や浮遊島のことなどは色々と問題があるので、口には出来なかったがオダノブナガ退治は伝わっていたようである。ジンライの姉のクロエがディアサウスの冒険者ギルドへ報告したことが広まったのだろう。そして、それには風音も後ろめたいところもないため、是と答えた。

もっともさすがに闇の森の中でも上位種であるオダノブナガ種を1パーティで倒したということを信じることは難しい話である。実際、風音も英霊ジークなしでは勝てたとは思っていない。だが証拠のオダノブナガ素材の太刀を見せたことで一応の納得は得たようである。ジークのことは伏せているため勝因はジンライが頑張ったからということにした。まあ、間違いではない。

そんなわけでいくつかの情報提供により(ちなみにブリックがもっとも聞きたがったのは主にクリオミネの街の騒動である)、今度は風音たちが聞くターンとなったわけだ。

「愉快な話ではないが、ソルダードの王が変わったってのがあってな」

そして、いくつか出た話の中で風音がもっとも気にかかったのが、ブリックのソルダードから流れる奇妙な薬の話であった。

「ああ、市民出の王様だったっけ?」

ソルダードの王位が簒奪されたことは風音もミンシアナにアオと向かったときに知っていたし、ゆっこ姉を通してある程度は詳しく聞いていた。

「まあな。現在では貴族様が根こそぎ殺されてるなんて話が流れてきてはいるんだが、それはそれとしてだ。それに併せて妙な薬がソルダードから出回ってるってぇ話があるんだ」

「薬?」

風音は首を傾げる。それはゆっこ姉とのメールのやりとりでは聞いたことがない。

「ああ、ポーションの一種らしいんだが、使うと身体能力が上がるものらしい」

「へえ。そりゃ、便利だね」

風音は額面通りの返答を返す。無論、ただそれだけではないというのはブリックの表情から察せてはいた。ブリックも風音の感想に頷いた。

「ま、便利だな。ただし、使うたびに身体の色が黒くなっていくのと常習性が高いらしいんだがね」

「黒く?」

どうもまともな薬ではないらしい。

「それに身体が次第にアストラル体に変わっていくらしいってことを考えなければだがな」

黒くとアストラル体のワードから一瞬ライルが、何かに気付いたような顔をしたが風音が睨んだので押し黙った。ブリックもそれには気付いていたが、指摘はせず、風音の言葉を待った。

「それで最終的にどうなるの?」

「実物を見たわけでも検証をしたヤツがいるわけでもないんだけどな。噂じゃ消えちまうらしいってことだ。拒絶反応が出たヤツが死んだってのも聞くな」

「黒くなるんだっけ?」

「ああ」

黒く、そしてアストラル化、であればそれが悪魔に根ざすものであろう推測はたつ。正しいか否かはわからないが。

「その薬の効果と同じかは知らないけど、黒くなった魔物とは戦ったことはあるよ」

そして風音はカードをひとつ切ることにした。その風音の言葉にブリックが「へえ」という顔をする。

「そりゃ、どこで見たもんなんですかい?」

「依頼内容にさわるんで経緯とかは秘密だなあ」

風音の言葉に、周囲がざわつく。もっともギルドの仕事は高いランクのモノは内容は守秘義務を課せられるモノも多い。

「悪魔の種子ってのがあるらしくてさ。それを埋め込まれると、黒くなって能力がアップして、そんで若干身体がアストラル化するみたいだね。私は専門外だけど悪魔狩りの人に聞いてみれば、も少し詳しく分かるかもね」

その風音の言葉にブリックが神妙な顔で頷く。

「なるほど。悪魔をルーツとしたものか。その可能性はあるか」

「もし、それが同じなら使わない方が良いだろうね。私たちの見たのは完全に悪魔に操られてたから」

東の竜の里を襲った死をも恐れぬ静かなる魔物の集団、それを今度は人を使って生み出そうとしている者がソルダードにいるのかもしれない。だが、その真相を知るすべは今の風音たちにはなかった。

また、その後はミンシアナやハイヴァーン公国内の話などをブリックや他の冒険者から互いにやりとりして、夜に入り始めていたところで風音とライル、タツオは宿へと帰ることとなったのであった。

◎リザレクトの街 宿屋サンバン

「ええと、どったの?」

風音が宿に戻ると一回の食堂でドンヨリとした弓花と、慰めてるティアラたちがいた。風音が首を傾げながら尋ねると「また、子供に泣かれたー」と弓花の哀しい声が返ってきた。噂は順調に育っているようであった。

あと直樹がライルをむっちゃ睨んでた。