軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百七十八話 飛竜と戦おう

ヴォード遺跡の入り口の外、僅かに離れたこの森の中に待機組はいた。

召喚騎士に集中しているティアラをヒポ丸くんと繋いだサンダーチャリオットに乗せ、その周囲をヒッポーくんらとタツヨシくんらで護衛。そして直樹とライル、そしてタツオがティアラの周辺警戒に当たっていた。

とはいえヒポ丸くんの持つ衝角の竜気は低級の魔物を寄せ付けない。そのためもあって、現時点で直樹たちは魔物と対峙どころか、近づかれることもなかったのである。

「ヒマだなぁ」

そう言いながらライルが空を見ている。もっとも口ではヒマとはいうもののその顔は決して緩んでいる様子はない。何しろここは島の外側に位置する場所であるため、グリフォンやワイバーンといった類の高ランクの魔物も出現する可能性がある。確かに遺跡の中に入れてもらえなかったことはライルにとって悔しい話ではあるが、ここの護衛というのもギルドの依頼ランクで言えばランクBには相当するものと考えてもよかった。遺跡の中ほどの死傷率の高さはないが、地域そのものが難易度の高い場所であるには違いないのだ。

『魔物の臭いはなしですライル。母上はまだですかねー?』

タツオが空を飛びながら下にいるライルに尋ねる。グルグルーと回りながら周囲を警戒している。

「いや、さっき入ったばかりだろ。ま、夕方ぐらいには戻ってくんだろ。この中はダンジョンみたいな休憩部屋もねえらしいし」

階層ごとにボス格の魔物がいるらしいが、それと戦っているときでもアダマンスカルアシュラは入り込んでくるそうだった。なのでボス戦ですら速攻で倒さなければ囲まれて死亡するのがヴォード遺跡という場所だった。

『ですかー。母上、大丈夫ですかねー』

「お前の母ちゃんは大丈夫だろー。何やっても死ななさそうだし」

致命の救済という強スキルがあるため、ある意味ではライルの言葉は真実ではある。防げるのは即死の一撃だけではあるが。

『ですかー。あー私も中に行きたかったーー』

そういってクルクルと飛ぶタツオに「あんま高く飛ぶと魔物を呼ぶから気をつけろー」と声をかけるとタツオがクエーと言って地上に戻って来た。

それは脅しでもなんでもなく、タツオという存在は人間にとっても稀少で正体が知られれば様々なところから狙われることが確実ではあるのだが、実は魔物にとっても楽に狩れそうな小さな身体な上に食べればほぼ確実に進化出来るはずの美味しい存在なのである。

『ていやっ』

そしてライルの肩にバッサバサと翼をはためかせながら止まるタツオ。生まれてから一ヶ月は経つが未だその姿は変わっていない。現在は魔力体から肉質を得て、それを物質として固定中らしいとのことで、本当の成長が始まるのはもう少し先のこととなる。とはいえ、己の内側にあるスキルをそこそこ引き出しつつある現在のタツオは、生まれたばかりの頃よりも格段に強くはなっていた。

特に威力を調整して連続で撃てるメガビームは遠距離攻撃の少ない『白き一団』の貴重な戦力となっている。

「ま、お前は母ちゃんと同じ臭いを嗅ぐ力があるんだからよ。飛び回ってねえで、そっちで警戒しといてくれよ」

ライルの言葉にタツオがクワーっと返事をする。ライルはライルで周囲を警戒するが、ライルの友人である直樹はその横で目をつぶって座っている。

「まさか寝てないよな?」

「……寝てない」

ライルの言葉に直樹がブスッと口を開いた。

「遠見のイヤリングで周囲を見てるんだよ。さっきも言っただろ」

そういって直樹が耳に付けた丸い玉石のイヤリングをコンッと叩く。このイヤリングは風音の遠隔視と同じ能力を持っている。直樹はそれを使って上空から周囲を警戒していた。

「なんか、見えたか?」

「ああ、ワイバーンが来てるぜ。こっちに気付いてはいないみたいだけどな」

「マジかよ!?」

ライルの目が丸くなる。 飛竜(ワイバーン) とは地竜同様の下位竜ではあるが、それでも3~4メートルはある体格と吐き出されるブレスは驚異だ。

「タツオをそろそろ降ろさなきゃいけないと思ってたからちょうど良いタイミングではあったかな」

ライルの横でタツオがクワーと鳴いてプルプルしていた。飛んでいるところをワイバーンにパックンチョされる自分を想像しているらしい。

「まあ、ここは木々に隠れてはいるから通り過ぎていってくれると思うが。少し静かにしていてくれ」

「お、おう」

『了解であります叔父上』

直樹の言葉にそう答えるライルとタツオ。そしてしばらくするとバサバサとした翼の音が聞こえてきた。

(来たかよ)

ライルはそう心の中でつぶやいて空を見上げる。そこにいるのは3体のワイバーン。獲物を探しているのか、空中を旋回しながら移動している。タツオもクワーとは鳴かずにそれを見ている。竜としての格はタツオの方が上だが、実力もそうとはいかない。

なお、基本的に知性を宿していない野生種のドラゴンは竜族とは認められていない。人間で言うならば蛮族とでも呼ぶべき存在であってタツオもアレを仲間とは見ていなかった。

(さてと、過ぎてくれよ)

直樹も緊張した顔で、空の 飛竜(ワイバーン) を見る。

直樹の倍はある身長である。その色は緑がかったグレーで、長い首を振りながら周囲を伺っている。

なお、一般的なドラゴンというのは基本的には首の長いトカゲに翼を生やしたような姿をしているが、今直樹の目の前を飛んでいる 飛竜(ワイバーン) は翼が腕代わりになっている。

だが 飛竜(ワイバーン) が上位種となり、さらにもう一段階進化をすると腕と翼が分離し通常のドラゴンへと変化する。これは地竜も同様で地核竜からさらに一段階あがると翼が生えてくるのである。

個体によっては、そのまま変質する場合もあるので一概にそうとはいえない場合もあるのだが、ドラゴンと言うのは飛竜、地竜を含めたいくつかの下位種を抜かせば総じてユニーク個体と呼べるもので、属性や特性によってカテゴリーこそ定められるがすべて別種であるのだ。

風音を青竜、アカを赤竜と属性がわかりやすいため色で定める場合もあるが、アオのように青色でも炎を扱う竜種も存在していたりもする。

また下位種を超えたドラゴン同士が 番(つがい) になった場合、生まれる子供は親の特性を受け継いだドラゴンであり、地竜や飛竜となるわけでもない。

ある意味では下位のドラゴンとは幼生体ならぬ幼生種とでも呼ぶべき存在ともいえた。

とはいえ危険度から言えば、並のドラゴン一体よりは 飛竜(ワイバーン) 3体の方が驚異だ。直樹たちは祈るように 飛竜(ワイバーン) たちが立ち去るのを木々の陰から隠れて見ていた。どうやら自分たちのことには気付いていないと警戒は解かぬまでも、直樹たちには若干の安堵があった。

しかし、 飛竜(ワイバーン) たちがこの場を通り過ぎそうになったところで、

ドォオオオオオオオン……と、遺跡の入り口から凄まじい爆音が響き渡ったのである。それはまるで少女が爆弾を抱えてバンザイアタックを仕掛けたような轟音だった。神風が吹いたのである。

「は?」「え?」『ほへ?』

二人と一体が目を丸くして、遺跡を見る。そして 飛竜(ワイバーン) を見る。

「マッズイ!?」

ライルがそう口にする。 飛竜(ワイバーン) の視線がギロリとこちらに向けられていた。遺跡の爆発音でこちらの方に目を向けたときにでも気付かれたのだろう。

(ここにいるのは不味いか)

ライルが馬車の方を見る。ティアラはその中で 炎の有翼騎士(フレイムパワー) の操作に集中している。

「直樹、離れるぞ」

「分かってる。ドラグーンは俺、タツオとノーマルはライルといっしょに行動してくれ」

『分かりました!!』

タツオがくわっと叫んだ。タツヨシくん二体も頷く。タツヨシくんは命令を受け付けるとそのように動作するように出来ているのだ。

(やるしかないか)

直樹は舌打ちをするが、だが嘆いていても状況は変わらない。

ティアラはサンダーチャリオットの中にいるし、紫電結界で多少のブレスならば耐えられる。いざとなればヒポ丸くんで逃げることも出来るし、周囲にいるヒッポーくんハイ・クリア・クリスにはそれぞれ黒岩竜の牙を用いた一本角が付いている。しかし護衛としての戦闘力はそれなりではあるが、空を飛ぶ相手をどうこうするのは難しい。

直樹たちが囮となって離れて、ついてくる 飛竜(ワイバーン) を撃破していくしかないと考え、直樹はその手に繰者の魔剣と水晶竜の魔剣を取った。

「さてとそろそろ姉貴のギミックも試させてもらうぞ『虹角』!」

直樹が水晶竜の魔剣『虹角』を天へと投げ、そして魔剣は 飛竜(ワイバーン) へと虹色の輝きを発しながら飛び出した。