軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十七話 旅に出よう

◎ウィンラードの街 宿屋リカルド

名前:カザネ・ユイハマ

称号:オーガキラー

職業:魔法剣士

レベル:19

ランク:C

風音は自分のギルドカードを見てニマニマと笑っていた。

横で本を読んでいる弓花はそんな風音をチロリと見ると(気持ち悪い方の笑顔だな)と失礼なことを思ってまた本に目を向けた。

戦いが明けてすでに翌々日。

翌日は風音たちもさすがにダウンしてたことと戦後処理もあり、本日午前にこの街の領主から奇襲部隊への授賞式が行われた。

そこで風音たちが得たのは風音が今見ているギルドカードに記されている『オーガキラー』という称号。称号とは国内外問わず何かしらの功績を挙げた人物に与えられるもので、それ自体に何の効力もないが国家認定の信頼を手に入れたことは今後様々な状況に役立つことになる…というシロモノである。

とはいえ、風音が先ほどからにやついているのは二つ名とかそういうのが大好きだから…というだけなのだが。

しばらくだらしない顔でギルドカードを眺めていた風音だが、何事にも夢から覚めるときはくる。正気を取り戻した風音は弓花の読んでいる本が気になって質問をした

「弓花、何読んでるの?」

「槍術の教本よ。ジンライ師匠から借りたの」

弓花はジンライを師匠と呼ぶことに決めたようだ。

「あんだけ使えるのに?」

「使えるっていっても私が教わったのは親方と師匠だけだもの。それもごく短い期間だし。だから部分的に未熟な部分も多くてチグハグなんだって」

「そういうもんかな」

素人剣術の風音はまだ違いが分かるほどの経験を積んではいない。

「それで私は今日、明日は師匠のところに行って訓練するつもりだけどあんたはどうする?」

「うーん、私は今日は親方のところに行ってくる予定だよ」

「親方の?」

「狂い鬼の角で装備を作ってもらおうと思って」

「ああ…」

「それと明日からちょっと遠出しようと思ってるんだよね」

「遠出って?」

弓花がギョッと風音を見る。

「いや、ちょっとだよ。アルゴ山脈に行って英霊召喚の指輪をゲットしてこようかと思ってるんだよね」

「英霊召喚の指輪って前に言ってたヤツだよね」

それは周回プレイヤーが過去の自分のプレイヤーキャラを呼び出すことが可能になるバランスブレイカー。当初の予定ではウィンラードに来る前に手に入れてるハズだったアイテムだ。

「そ、それなら私も行った方がいいんじゃないの?」

その弓花の言葉に風音は首を振る。

「思い出したんだけどね。英霊召喚の指輪のあるコーラル神殿は周回プレイヤーしか入れないようになってるはずなんだ」

「それはゲームの話よね」

弓花はそう風音に問う。

「うん。ただそのルールが働いてる可能性がある以上、それに近い条件で挑んでおきたいってのはある」

シグナ遺跡のように何かの力が働いている可能性を否定できないと風音は考えている。

(一周目は門が閉まってて入れなかったはずなんだよね)

仮にゲーム通りの仕様だと弓花が入れない可能性がある。最悪なのはパーティ単位で認識されて風音も入れない場合だ。

「それと弓花もせっかくまともに槍術を習えるんだから今のうちに覚えられるもん覚えた方がいいよ」

「む…」

弓花は顔を膨らませるが、プシューと口から空気を出すと

「分かったわよ。あんたが戻ってくる頃には『雷神槍』くらい覚えてるんだから」

と言った。ちなみに雷神槍は魔力を身体制御のみで雷に変え槍に纏わせて投擲する技だが、風音は本当に覚えてそうだなあ…と思っていた。習得難易度は『閃』よりも低いので十分に可能性はあるのだ。

「それでどれくらいかかりそうなの?」

風音はうーんとうなって考えて答える。

「一週間くらいかなあ。行きと帰りにコンラッドで泊まるだろうし」

「ああ、リンリーさんへの挨拶してないんだよなあ。私」

「私から伝えとくよ。コンラッドまでは1日ぐらいでたどり着けるし今度また一緒に行こう」

「そうね。分かったわよ。私の分までリンリーさんによろしく言っておいて」

「あいよッ」

****************

◎ウィンラードの街 正門前 翌朝

「おはようございますカザネさん」

「うん。おはよー」

正門前の見張りの兵がカザネを見るなり頭を下げて挨拶をしてくる。そしてカザネがそれに手を振って答える。

授賞式を過ぎてからカザネはこの街では大体そんな扱いを受けていた。

狂い鬼を倒したのは風音とガーラだ。そして様々な功績を考えればもっとも活躍したのが風音であることは誰もが周知の事実であり、つまりは今の風音の立場はこの街の英雄そのものだった。

「どちらか出かけるんですか?」

「うん、ちょっとね。コンラッドを越えてアルゴ山脈まで」

それは結構遠出ですねと若い兵士が答えると

「まあねえ」

と風音も答えながらヒッポーくんを呼び出す。

「まっ、さっさと行ってさっさと帰ってくるよ」

突然の石馬の出現に驚く兵士に「じゃあ行ってきまーす」と言いながら風音はヒッポーくんに乗って、そして駆けていった。