軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百五十四話 村へ向かおう

風音たちがディアサウスへ着いて4日目。

ジライドの件もあったが、それもすでに終わり、その後に風音が何をしていたかというと、まずは王宮建築士であるマーベリットと、コテージで使用されていた技術についての使用契約を正式に結ぶべく大学へと行っていた。またそこで発生する金銭についてはバーンズ家に代理として管理をしてもらうことで話が付いた。また以前にディアサウスを発つ前に、依頼をしていた地核竜の牙を用いた竜牙鋼の矢200本も無事納品された。

そしてもっとも重要なことだが風音は久方ぶりのマーベリットの筋肉を堪能することが出来た。筋肉は良いものだと風音も久方ぶりに満足いくリラクゼーションタイムだった。

その他では以前にマナポーションを購入した道具屋で再度入荷していたマナポーションを2つ購入する事が出来たようだった。

また他のメンバーの状況だが、

弓花は昨日、ついにこの街にまで 血染めの狂戦士(ブラッディベルセルク) の名が広まり、うめいていた。バーンズ道場の門下生も「スゲーぜ姉御」等と持ちあげまくってきて、たいそう居心地が悪いらしい。

もっとも、そんな弓花だったが、背中に妖怪チラチラさんがいるのが風音には見えていた。チラチラさんとは「目立ちたくないなー、あたしすごいんだけど目立ちたくないなー。目立つと見る目変わられちゃうしー。けどバレちゃったかー。ああーーバレちゃったかーーー。あたし強いのバレちゃったかーー。参ったなー。すごく参ったなー、モテちゃうのかなーー。そんなつもりないのになーーー」的なことを無意識に考え、時折口にして周囲を苛立たせる妖怪のことである。

風音はあーはなるまいと心の中で思ったが、妖怪チラチラさんは取り憑かれた本人には見えないという特性がある恐ろしい妖怪なのだ。その事実を風音は理解していながら理解できていなかった。

直樹は水晶竜角の魔剣を解析中。名は『虹角』とつけたようだ。まんまであるが。

ライルとエミリィは城に呼び出され、正式にハイヴァーン騎士に任命されていた。その任務は神竜皇后の護衛である。

元々騎士の道に進む予定であった二人にしてみればその後の行程をひとっ飛びで越えたのだから、願ったりかなったりではあるが、いきなり従騎士を飛び越えての正騎士の立場になったことには目を丸くしていた。

これには新たにパーティに別の騎士を参加させることは風音に拒否されているため、元よりパーティであったライルたちに白羽の矢がたったという事情があった。もっとも唐突ではあるが、誰も損のない話なので、問題はライル達の気構えくらいなものである。

ティアラとルイーズ、そしてメフィルスは、ディアサウスにいる間はエルマー家で過ごしていた。すでにツヴァーラに戻ったティアラの母ケイランはいないが、祖父であるマイセン・エルマーは当然いるのだ。また、ルイーズの息子でありライノクスの父でありすごいマザコンであるハイヴァーン前大公が遊びに来ていたらしい。

タツオは風音達が来て以来バーンズ家に入り浸っているハイヴァーン三騎竜と呼ばれている閃輝竜ゴード、飛雷竜モルド、牙炎竜フォルネシアとお稽古中である。

もっともビームひとつ出すだけで「さすがタツオ様」「天才じゃ、この子は天才じゃーー」「これが神童っちゅーんかいのー」という風に褒め讃えるので風音としては「もう少し厳しくね」とため息が出ていた。

もっとも竜のスキルを学ぶには竜を頼るのが正解だ。特にドラゴンの必須スキルである『矢除けの加護』と『空中飛行』を安定して使用可能となったことはタツオにとって大きくプラスであった。

最後にジンライだが、ライノクス大公との模擬試合で、遂に一勝をとったそうだ。それを聞いた風音は義手を見ながらドヤーーーーーーー!!!!という顔をしていたが、実際にジンライがライノクスに勝利したのは『義手を外した』一戦のみである。なのでジンライは風音に苦笑いで返した。

(ふっ、私の力が加わったせいで自分だけの勝利と思えないみたいだね。まあ、しょうがないかな。あの義手すごいかんね。まあ作ったの私だけどね)

ジンライの苦笑いを見てますますドヤヤーとなった風音だが、ジンライも特に訂正はしない。そしてライノクスより授かった二つ名『 一角獣(ユニコーン) 』の名は一旦は自分の中だけに仕舞い込んでおくことにした。目の前の少女を孫可愛がりしているジンライにとってはこうしたあからさまなドヤ顔もかわいいものなのだ。『バカな子ほどかわいい』、それはお年寄り属性すべてを虜にする風音の魔性の力である。なので、それを崩すような無粋を行いたくなかったのである。

またジンライの奥さんにしてライル達の祖母であるシンディは、ジンライの義手を複雑な表情で見ているようだった。自分の名が付けられたことは愛情表現の一つとして喜ばしいが、自分よりも愛情を向けられているようでは嫉妬の炎がわき上がるのは無理もない。その分、夜の稽古は念入りに行われたらしい。

そして、神竜皇后であることが国の上層に知れ渡っていることもあり、風音は居心地も良くないことだしさっさと街を出て次の目的地へと向かうことを提案し、特に異論もなかったので4日目にディアサウスを発つこととなった。

向かう先はジンライの故郷であるソラエの村、そして続いてはエルスタの浮遊王国である。

◎ハイヴァーン公国 竜爪街道

「ああ、4日で出立かぁ」

ライルが後ろを見るともうディアサウスの街並みが小さく見えている。人生の大半を過ごした街だ。愛着はある。そしてこのままミンシアナに向かうことになれば当面は戻ってはこれないだろうとライルも理解している。

「もう少しいても良かったんだぜ。姉貴だって急がなきゃいけないワケじゃあないんだし」

そう言ったのは併走している直樹だ。その言葉にライルは首を振る。

「いや、ちょっと周りもうるさくなってたしな。ほとぼりが冷めるまでは離れてた方がいいかもしれねえよ?」

ライルが直樹の言葉にそう返した。元々若手の冒険者としてはそこそこ名の知れたライル達だが、ここ最近の状況はそれまでとは桁が違う。白き一団に入ったこともそうだが、つい先日には騎士に任命までされてしまっている。その理由が明らかではないのだから同年代からの視線が痛いことこの上ない状況だった。嫉妬というのもあるが、バーンズの七光りと言っても限度を超えている状況に、不審がられていると言った方がよい。特に魔狼討伐での 血染めの狂戦士(ブラッディベルセルク) のことが街にまで届いてしまっては周囲もライルとエミリィに対してどう接したらよいのか測りかねていた。

「ま、お前がそういうんならいいんだけどな」

そういって直樹は目の前を走るサンダーチャリオットを見る。中では女子組でワイワイやっているのだろう。直樹も姉のそばにはいつもいたいが、あの場は完全なアウェーである。

(ま、こうして走ってる方が性に合ってるけどな)

直樹が乗っているヒッポーくんハイの乗り心地は普通の馬と比べるまでもなく、衝撃も少なく、体に負担をかけない動きをしている。サンダーチャリオットの紫電結界からは離れているが、風を受けて走るそれは結局バイクの免許を取れなかった直樹の男の子の部分を刺激してくれていた。

そんな直樹たちは現在ディアサウスを出て、ジンライの故郷であるソラエの村に向かっていた。距離はそこそこあるが、特に滞在予定のある街はないので、コテージで泊まりながら最短ルートで進んでいたのである。

(さて魔剣『虹角』の解析もそこそこ出来てきたし、そろそろ実戦訓練もしたいところなんだけどな)

そんなことをヒッポーくんハイに乗って考えている直樹の横で、ライルが正面側の空を見る。

「おー今日は晴れてるから、よく見えるなー」

そのライルの言葉に直樹も「そうだな」と頷いた。

エルスタの浮遊王国。遙か昔からハイヴァーンの地の上を浮遊し続けている浮遊島がここからでもよく見えていた。

「これからアレに挑もうってんだから、人生ってのはワケ分からんことばかりだよな」

そう言ってライルが笑う。もっともライルがそんなことを口にするのも無理のない話ではある。あれこそはハイヴァーンの冒険者の憧れの場所。いつも空にあって、人の手の届かぬ冒険の地なのだ。そこに足を踏み入れるのだから、興奮せずにいられぬはずがない。

そのライルの心境を直樹も知っているので、さきほどと同じく「そうだな」と同意の言葉で返していた。姉の絡まぬところでは普通にクール系イケメンの直樹は、それこそ「ふっ」とでもニヒルな笑みを浮かべそうな顔で浮遊島を見ていた。

「あー直樹、ちょっと来てー」

もっとも唐突に馬車から聞こえた姉の言葉に、クールイケメンの顔は崩れる。そしてそこにいたのはご主人様に呼ばれて尻尾を振りまくるワンちゃんのような少年であった。それを見ていたライルは「変わったな。アイツはー」と口にしながら呟いていた。