軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百三十五話 ユッコネエにあげよう

「グォォオオオオ!!」

狂い鬼が勝利の雄叫びをあげる。

そして自分を覆っている、今は生気をなくした植物の鎧をメキメキと破壊して外へと出てきた。

『ぐぉお……じゃないよ』

風音のあきれ顔に、だが狂い鬼は気にせず、今自分が抜け出したドラゴンイーターの残骸に手を伸ばす。すると木と草の集合のようだったものが急速に縮まっていき、やがては黒い棍棒へと変化して、狂い鬼の手に収まった。さらにその棍棒の先からは恐らくは竜の爪であろうものがニョキニョキと出てきたのだった。それは見た目はデカい釘付きバットのようであった。

『なんですの?』

その様子をティアラが目を丸くしてみているが、風音は『こういうことかなあ』と呟きながら、ティアラに自分の推測を口にした。

『多分、狂い鬼がドラゴンイーターのコアを食べたから、ドラゴンイーター本体も支配下に置いたんじゃないかなあ』

風音は狂い鬼に最初にあったときに大木の棍棒をもって暴れていたのを思い出していた。

『つーか、コアから本体まで狂い鬼に取られたか。素材取り出来る部分はないね』

なおさら風音はため息を吐いた。とはいえ、これでドラゴンイーター二体目は撃破。寄生されていたドラゴンの安否は分からないが、今はまだ生きている。だがまた種子に寄生されかかっているようなので、風音はティアラに頼んで種子を燃やしてもらって、その後は狂い鬼とタツヨシくんドラグーンにはドリアドリザードの討伐に参加させることとなった。

そして、最後の一体だが……

**********

「ゆくぞ、ユッコネエ!!」

「にゃあっ!」

ジンライの乗ったユッコネエが戦場を駆けてゆく。『情報連携』により風音たちが勝利したのはすでに伝わっている。ならば自分たちもここでチマチマと戦っているわけにはいかないじゃないかと、ジンライはユッコネエを鼓舞する。

そして成竜タイプのドラゴンイーターの吐き出す雷のブレスを避けて、ユッコネエは懐に飛び込んだ。

「小賢しいわッ」

ジンライはそう吐き捨て、二槍を持ってすれ違いざまにドラゴンイーターの横腹を切り裂く。

成竜タイプの頭部はジンライが最初のレールガンで破壊したのだが、まだブレスを生成する喉袋は残っていた。なのでドラゴンイーターは発射口としての頭部を作り上げ、ブレスを吐いているようだった。

「喉袋を何度切っても、木の根みたいなのに塞がれますね」

神狼化弓花がそう口にしてジンライに併走する。ユッコネエの速度に追いつける時点で神狼化のスペックの高さが窺い知れるが、だがジンライも毎日手合わせしているのだ。その非常識ぶりはすでに慣れたものだった。

「やはりコアを潰すしかあるまいが、ユッコネエよ。どうだ?」

「うにゃあ!!」

ジンライの問いにユッコネエの視線は二つのポイントを見ている。風音からアイムの腕輪を通して、狂い鬼と同様にユッコネエにも『食材の目利き』は効いている。そしてユッコネエは目の前のドラゴンイーターからコアを二つ感知している。それはつまりは二つコアを持つか、もしくは二体いるということだった。また竜の心臓も存在している。コアを破壊してもそちらをどうにかしなければ、活動し続けるかも知れない。

「あちらは鬼めがコアも素材も全部総取りしたらしいからな。こちらは残しておかねばならんよな」

「いやー、安全優先で行きましょうよ師匠。潰せるならさっさと潰しましょーよー」

そんな会話をしながらも、迫る尾の攻撃を避け、左足を、ジンライと弓花が同時に攻撃する。竜の鱗ごと貫くが浅い。しかも植物がすぐさま覆い、鱗がはがれた箇所を隠してしまう。

「やっぱり効果薄いですね。師匠、アレやっちゃいましょう」

「ふむっ」

そういってジンライは成竜タイプドラゴンイーターの千切れた右腕を見た。

実はこの成竜タイプドラゴンイーター、あのレールガンとルイーズの魔術を受けた後、すぐさま逃走していたのである。

対して残されたドラゴンイーターは逃げずに戦い始めていたのだから、風音たちが戦った個体は恐らくは捨て石だったのだろう。植物としては一株でも逃げ切れれば良いという考えだったのだろうが、しかしユッコネエと神狼化弓花の脚力には勝てず、結局のところこうして戦うこととなった。そして追いついてすぐにジンライはアメ玉ほどの鉄球で抉れた右肩を撃ち、右腕を完全に破壊していた。

その威力低減モードの 雷神砲(レールガン) だが、ジンライは衝撃でうめいたし、ユッコネエも仰け反りかけたが、少なくとも義手の足を使って固定化しなくとも発射は無事行えていた。

「ふむ。仕方あるまい」

ジンライは決断する。弓花の神狼化の時間も後5分程度、タイムリミットが近づいている。

現在もアオが後方から青い炎の魔術をかけて成竜タイプドラゴンイーターに牽制をかけているが、そのアオも同時に自身の周囲に蒼焔結界という攻勢防御を張って近付く種子を焼き続けている。この結界があるからアオはドラゴンでありながらドラゴンイーターに立ち向かえるのだが、張れる結界の規模の問題で竜にはなれないし、接近して直接接触でも寄生されかねないから、消極的な魔術に頼るしかないようだった。

なので時間切れで弓花が抜けると戦力は低下する。かといって任せられた手前、風音たちの加勢を求むなどジンライのプライドに障る。

「アオ殿、少し強めのを出してもらえますか!!」

ジンライの声にアオが「分かりました」と声をあげる。

「牽制しときますッ!」

そして併走していた弓花が離れ、ドラゴンイーターに向かっていく。

「ユッコネエ、少し集中する。頼んだぞ!」

ジンライの言葉にユッコネエも「うにゃんっ!」と頷いて走る。

(ふんっと)

ジンライが持っていた槍を背負って、義手に力を込めると、その掌から筒が現れた。そして腕がまっすぐ延びて動かなくなり、掌から肩部までが筒で繋がるのがジンライには分かった。ここまでは今までの 雷神砲(レールガン) のプロセスだが、筒の口径は今までのものよりも小さい。それは撃ち出すのが岩でも拳大の鉄球でもなくアメ玉サイズの鉄球だからだ。

「行きます。スキル・ラストマジック・プラズマヘイロウ!」

そしてアオの魔術が放たれる。

蒼い光の輪がいくつもドラゴンイーターを取り囲み、そして蒼い炎が燃えさかった。

(結界を張りながら強力な魔術は使えないと言っておったが存外に『派手』のようだな)

そうジンライは思いながらユッコネエに指示して、ドラゴンイーターに接近させる。ドラゴンイーターの全身から緑の霧が噴き出し炎を弾き飛ばしたのも気にせず、ジンライは義手から弾丸を二発放った。

「ぐぬぅぉおお!!」

「にゃっ!?」

その勢いにジンライとユッコネエが吹き飛んだが、だが効果は絶大だった。

メキ……ピシキシ……バキッ

ドラゴンイーターの右足は完全に打ち砕かれ、そしてドラゴンイーターが崩れ落ちた。

「連射はキツいのぉ、ユッコネエ」

ユッコネエから投げ出されたジンライが笑いながらユッコネエを見るが、ユッコネエは「にゃにゃにゃっ」と抗議の声をあげていた。一発ならともかく二発連射はユッコネエの身にも余るようだ。それを予告なしにやられてはユッコネエも抗議せざるを得ない。

「うーむ、すまん。しかしもう少しだ。我慢してくれ」

「にゃー」

しょうがないなーという風にユッコネエがジンライに背を向けて「にゃっ」と乗れと鳴いた。

そして一連の攻防を見ていたアオが「うわぁ」という顔をしていた。

「風音さん、ホント自重しないですねえ」

あのレールガンの威力は酷いなとアオは思った。救いがあるとすれば、ジンライの義手はレア素材のみで構成された量産などあり得ないシロモノだということだろう。あれを100人分ぐらい用意したら10分で街が壊滅して容易に国が滅ぶ。

ともあれ、これで寄生されたドラゴンの機動力は奪った。後は囲んで倒せば、とアオが考えたとき、突然ドラゴンに取り憑いていた植物、ドラゴンイーター本体がメキメキと竜の肉体から離れていく。それも離れたのは二体だ。

「やはり、二体おったか」

「師匠、一体逃げます!?」

弓花の言葉にアオが駆け出す。つまりは最初に逃げたのと同様に全滅を避けるために一株は逃がす算段なのだろう。そしてもう一体はそれを逃がすための何らかの手段をとる筈。それは恐らく捨て身の攻撃となるだろう。

「ジンライさん、弓花さん、そこから離れて!!」

アオが叫んだ。一体が走る中、もう一体が何かしらのエネルギーを収束させている。だがジンライは収束させている方に対し、一気に走り出した。

「ユミカ、逃げたのは頼む!」

「師匠っ!?」

弓花は一瞬躊躇したが、だがそれも僅かな合間、弓花はすぐさま逃げたドラゴンイーター本体を追った。そしてジンライは駆けながら、今にも爆発しそうなドラゴンイーターを見る。

(今のワシならばやれる!!)

かつてジンライが編み出した二槍の技の中で、実戦に使用できない大技があった。それは両腕の力を溜めて一気に解き放つが故に、まともな勝負の時には隙だらけで使い物にならなかった槍技だ。だが今はジンライは己の足で走っているわけではない。ユッコネエに移動を任せ、全身で魔力を練ることが出来る。

そして目の前にはドラゴンイーター本体。そのコアの位置は分かっている。爆発寸前でジンライにも見えている。であれば、

「行くぞ!槍技『心臓狩り』!!」

ユッコネエが突進し、ジンライが二つの槍を正面に突き出し、そして抉る。

それはあのクリスタルドラゴンからレインボーハートを抜き出した大技。半円ずつ切り裂いてコアを抉り取るという、ユッコネエという相棒を得てジンライがついに完成させた槍技だった。

そして爆発しかけたドラゴンイーター本体が急速に熱を失っていく。動力源であるコアを奪われた今、それをする力がもうなくなっていたのである。

「ふうっ、やったようだな」

「にゃー」

槍と槍の間に緑色のドラゴンイーターのコアをつかみながらジンライがそう言って、ユッコネエが賛同する。そしてジンライはユッコネエの視線がチラリとコアに向いてそしてためらいがちに離れたのを見た。

「ユッコネエよ」

ジンライはユッコネエから降り、そしてその前に出た。

「んにゃ?」

ユッコネエはジンライの意図が分からず、首を傾げるが、ジンライがコアを差し出したのを見て、目を丸くした。

「欲しいのだろう。食え!」

ジンライのその提案にユッコネエは確かにゴクリとのどを鳴らした。だがそれは今回の戦利品だ。弓花が取ってこれるか分からない以上、自分が食べてしまうわけには……というようなことを獣の思考でユッコネエが考えていると、

「ワシとお前の勝利だ。誰にも文句は言わせぬ」

ジンライは見透かしたようににやりと笑って、それをユッコネエの口に放り込んだ。

そしてユッコネエは「う、うにゃあー」とためらいがちに噛んだが、しかしその果肉の旨さにすぐさまシャリシャリとかみ砕いて食べて飲み込んでしまった。そのあまりにも美味しそうに食べて幸せいっぱいなユッコネエの表情を見てジンライの顔は尋常ではないくらいゆるんだのだが、ユッコネエのシッポが四又になり、毛並みが若干緑がかったのを見て「ほうっ」と声をあげた。

これは後で判明することだが、ユッコネエに光合成というスキルが増えたようだった。それは太陽がでていれば魔力生成が出来、日光の下であれば召喚し続けることが可能でほとんど風音の負担にならぬどころか、召喚獣とのパスを通じて風音に逆に魔力補給すらしてくれる便利なスキルであった。