軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百八十九話 返信をしよう

風音たちがドルムーの街を出て、もうじきドンゴルの街に着こうかという夕方頃、風音と弓花にそれぞれ同じ文面のメールが届いていた。

「何々、『心臓ヤバイ。七つの大罪、超ヤバイ。来る。黒い悪魔たちが』だってさ」

「七つの大罪とか、ゆっこ姉も厨二力溢れてるわねえ」

「黒い悪魔ってなんだろう?」

「あんま考えたくないけど、あれじゃないの。ほら、ゆっこ姉って結構下ネタ好きだったし」

「ああ、あれかあ。それじゃあ私は『頑張ってください。我慢のしすぎは良くないよ』って送っとこ」

「私は『お通じには繊維質のものを食べましょう。あまり下品なネタをふるのはどうかと思います』って返しとこう」

「これでいいかな?」

「いいんじゃない。そんじゃ送信……と」

「ポチッとな」

「年取ると恥じらいってなくなってくのかなあ」

「ゆっこ姉の女子力は徐々に減少しつつあるんだねえ。もうオバチャンだものねえ」

そんな好き勝手な会話が馬車の中であったとか。

◎ドンゴルの街 近郊の街道

「うーん。風音の竜気の方が綺麗だなあ」

馬車の中で竜結の腕輪を眺めながら弓花がそう口にした。それは弓花の竜気を込められていて若干の放電を帯びていた。だが風音の竜気が込められているときの方が綺麗だと弓花は思う。風音の竜気は若干冷え冷えとした冷気と共にキラキラとした虹色の輝きが見られるのだ。

「私のは多分クリスタルドラゴンのスキルを手に入れた影響なんだろうねえ」

そう風音は弓花に言う。

「それに変身後も風音の竜気の方が綺麗なんだよねぇ」

風音の竜気で変化した竜人化はその身に虹色の光を纏わせているのだ。それはクリスタルドラゴンの輝きそのもの。その効果は闇属性以外の魔法耐性強化と若干の水晶化効果のようだったのは確認している。

「あれ、レインボーカーテンとかいうものらしいわよ。クリスタルドラゴンの魔法防御なんだってさ。まああたしたちが戦ったときは物理メインだったから、あっちもその技を出すことはなかったみたいだけどね」

ルイーズもブレスガードの魔術をずっとかけていたので攻撃系の魔術は使用していない。

「なんでも魔術師相手だとほとんどダメージ通らないらしいって話よ」

「うーん、私の竜気は雷属性で速度と攻撃力の両立ができて良いんだけど、キラキラもしたいなあ」

「雷はあれはあれで綺麗だとは思うけどね」

そう風音は言う。実際自分の竜気で竜人化した弓花は、全身を雷で覆って薄く輝いていた。特に黄色い輝きに包まれた髪は美しかったと素直に風音は思う。

「あんがと。それはそうとしてアンタは大丈夫なの?」

前日の夜に風音は風邪に近い症状で寝込んでいたが、今ではもう元通りのようだった。

「やっぱり原因は魔力の使いすぎだったみたいだねえ。今はすっかり元通りだよ」

そういってグッと拳を握る。

「ま、おっぱいは大きくならなかったけどね」

「ぐっ、これからだよ」

ルイーズの言葉に風音はぐぬぬとなる。その横でエミリィはホッと胸をなで下ろした。

(なんかカザネなら本当に大きくなりかねないもの)

ワースト一位か二位かの差は本人たちの間では大きな問題なのだ。

そしてとりとめもない会話が続きながらも一行はドンゴルの街へと入っていったのである。

◎ドンゴルの街 冒険者ギルド隣接酒場

ドンゴルの街に着いた風音が最初に向かったのは冒険者ギルドの酒場であった。他のメンバーが修行に入ってしまったので、風音はひとりで高ランク冒険者が集まったという状況の顛末を聞きに酒場に来ていた。

そして風音が中に入るとテーブル席の一つに以前にクリスタルドラゴン退治に同行したエイブラがひとりで飲んでいるのを発見したのであった。

「エイブラさん、お久しぶりー」

「よおカザネ、お前さん、ひとりかい?」

ジョッキ片手にすでにやっているエイブラの正面に風音が座る。

「うん。みんな、特訓に行ったりしてるからね。今は私ひとりだよ」

「そんじゃあ他の白き一団のメンツも揃ってるってワケだな。地竜狩りか飛竜狩りでもするつもりかい?」

エイブラの質問に風音は首を横に振る。

「いんや。東のドラムスの街に用があってさ。今回はちょっと立ち寄っただけなんだよ」

「なるほどなあ。ま、ここ最近はお前さん等の後に来た高ランクの連中がかなり狩っちまってあまり旨みはないしな。それに面倒なのも居着いてな」

「面倒なの?」

「ああ。ランクAのやつでな。高ランクの連中は大体はもう帰ったんだが、やたらうるさいのがいてな。街に居着かれると面倒なんだが、かといって追い出すこともできんし困ってる」

そうエイブラが口にしている途中でなにやら外からガヤガヤと声が聞こえてきた。

「ほら、来た。トンファー使いアンガスだ」

バタンッと扉が開いて、大男と、取り巻きらしき連中が入ってくる。

「ようっし。今日もまた俺様大活躍だったぜい」

「ホント、兄貴のトンファーっぷりには痺れましたぜ」

「まさかトンファーからビームが出て飛竜を撃ち落とすなんて、さすがアンガスの兄貴のトンファーはモノが違う」

「ちっ、あんま誉めるなよ。自慢に聞こえちまうだろ」

そしてアンガスと言われた男が「なっ?」と店の中をチラ見する。

「さっすが兄貴。おいおい、恐れ多くて誰も声が出せねえらしいぜ」

「まったく兄貴の超ウゼ……いや、超すげえ活躍にビビって、声も出ねえらしいや」

「おいおい、照れるぜ。照れるぜ」

アンガスはそう言って取り巻きの男の背中をバンバンと叩いて笑いながら、空いてる席へと向かった。

「なにあれ?」

その様子を風音が目を丸くしてみる。あからさまなアホがいた。

「あれでもランクAの実力者なんだ。なんというか面倒な男でな。害はないんだが、凄くウザいんだ」

エイブラがため息を吐く。

「どうもこの街が気に入ったらしくてな。未だに離れる気がないらしいし、狩りを終えてこの酒場に来るたびにあの様子なんだよ」

「それはひどいね」

「だろう?」

風音の素直な感想にエイブラがため息をはいた。

そんなエイブラと風音の様子をよそにアンガスたちは異様に盛り上がっている。

「兄貴のトンファー、すげえな。どうしたらあんなにカッコ良く使えるんすか?」

「へっ、そりゃあオメエ、ソウルってやつがここに籠もってるかどうかっていうかよ。大体ワカンだろ。おめえらも」

「すげえぜ、分かるぜ兄貴。超リスペクトだぜ。トンファーとかマジ意味ワカンネーし」

「兄貴しか使えねえよ、あんな棒っきれ。すげーよ」

「そうだろー。そうだろー」

風音がチラ見してるとそんな会話が続いていた。というかあの取り巻き、誉めてない。

「ま、まあ。本人たちが好きでやってるんならいいんじゃないのかな?」

棒読みでそう言う風音にエイブラはさらにため息を吐いて「まあなあ」と返した。

「頭が悪いワリに強いから、絡まれてもパッパッと返り討ちしちまうし、ダーレもなんも言えねえんだよな」

そう言うエイブラに風音も苦笑いだ。

「ところで兄貴、聞きやしたか? あの鬼殺し姫の話?」

その言葉に風音の耳がぴくっとなる。

「あん。あの迷惑な連中だろ。確か首都のディアサウスでドラゴンを騒がせて迷惑かけたとかいう」

「それだけじゃあねえんでさ。なんでも昨日だか一昨日にドルムーの街の店を一つ潰したらしいでっせ」

その言葉にエイブラが風音を「えっ?」という顔で見る。

「ちゃ、ちゃうねん。潰したのは部屋一つで、ちゃんと直したから」

風音、ブルブルと顔を横に振りながらそう答える。エイブラは(ああ、壊したのは本当なんだぁ)と心の中で呟いた。

「ま、シロディエでも問題起こしたらしいっすよ。別荘ぶっ壊して権力でもみ消したとか聞きましたぜ」

ちなみにバーンズ家の別荘のことである。ジライドが「大丈夫だから」と訪ねてきた衛兵に告げて強引に帰したのも事実である。

「ワリいやっちゃな」

アンガスが呆れた声を上げると取り巻きも「ですよねえ」と頷く。

「まったく俺らみてえに真っ当に生きる冒険者にとっちゃあ、迷惑この上ない連中ですわな。クリスタルドラゴンだってさっさと倒しちまうし。後から来た俺らは何だって言う」

だが取り巻きのその言葉にはさすがのアンガスも手を広げて「まあ待て」と言う。

「クリスタルドラゴンの件は仕方ねえさ。水晶漬けの連中を助けなきゃあいけなかったみてえだしな。そういう意味では義に厚い連中なんだろうよ。俺たちみたいな……な?」

「さすが兄貴。そういう見方できる、兄貴こそスゲエ。尊敬するぜ」

「まあな?」

チラッとアンガスが周囲を見る。ウザかった。

「でも兄貴、そういや、鬼殺し姫って胸がないそうなんですぜ」

ガンッと何かがぶつかる音がした。それは風音がテーブルに突っ伏した音だ。

「ないのかい?ボインじゃないのかい?」

アンガスが意外そうにそう返す。

「へい。ありません。どうも以前に聞いたボインの女ってのは同じパーティの召喚師だか魔術師の女だそうで、鬼殺し姫本人は、そもそも姫?って感じの板みたいな胸だそうです」

「そいつはかわいそうだな」

「なんでも大きくなーれ大きくなーれって口ずさみながら服の上から自分で揉んでたのを見た奴もいるそうです」

ガンッとさらにぶつかる音がした。「み、見られてたのか」と屈辱に耐える声がどこかでした。エイブラが憐れみの目で、目の前の少女を見る。

「泣けるな。そりゃあ」

「へえ、なんだか俺らも悲しくなってきやした兄貴!」

「よーし、テンション下がったし、帰るか」

「帰りやしょうか」

「ちょっと待てやテメエラ!!」

なんだかテンションも下がって早々に席から立ち上がったアンガスたちに怒鳴り込む男たちがいた。

「なんで、てめえら」

「兄貴がトンファー使いのアンガスだって知ってのことか?」

取り巻き二人が男たちの前に立ち、ガンをつける。

「んなもん関係ねえんだよ!カザネさんの貧乳をバカにする奴ぁあ、俺らが許さねえ!!」

ガンッとさらにぶつかる音がした。エイブラに心配そうな顔をされながら風音は死にたくなっていた。