軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百六十九話 リストをもらおう

オーガ戦の後も何度かの戦闘はあったものの風音たちは夕方頃には無事ブルーリフォン要塞の入り口までたどり着いた。そしてダンジョンからベビーコアの反応が消えたことを魔力反応で把握していた地上の冒険者たちは、歓声をあげながら白き一団、オーリングとセラを出迎えたのだった。

◎ブルーリフォン要塞 入り口前 ギルド職員野営地

まず風音たちが最初に出向いたのは冒険者ギルドの野営地だ。そこで『ブルーリフォン要塞奪還』の報告をして、そして預けた素材の換金の状況の確認に入る。

「こちらが素材換金リストになります。私のサインももう入れてありますので、クリミオナのギルド事務所でこれを出せば、そちらの金額が支払われることになります」

それを後ろからエミリィが覗いて見た。そして「うっわ」と声をあげた。

「私たちの今までの稼ぎが何って感じになってるよ」

「まあ地核竜だからなぁ」

書かれている金額に引きつった顔で感想を述べるエミリィだったが、その横にいるライルはあまり興味なさげに相槌を打っていた。

どうも地上に戻ったライルはダンジョン内での自分の活躍を反芻しながら悦に 入(い) っているようで、心ここにあらずな状態のようだった。

まあ実際活躍はしていたのだ。地核竜に始まり、行き帰りの途中の魔物はほぼ三人で倒していたし、キュクロープス戦では目立った活躍はなかったものの、ストーンミノタウロスは量産型タツヨシくんのフォローがあったとはいえ、一体はライルが仕留めた。さすがに自分の実力だけではないのは分かっていても浮かれたくもなるのも無理はない。

もっともディアサウスに戻り、ジンライとの特訓に付き合うことになればその浮かれポンチな気分もすぐさま消え去ることになるだろうが。フルボッコさんである。その未来を的確に予想している直樹は(今はまだ良い夢を見ていろよ親友……)となま暖かい目で見ていた。

なお、リストに出ている金額の大部分は地核竜の素材が占めている。ドラゴンは他の魔物に比べて使用できる素材の部位が圧倒的に多く、その換金金額も総じて高い。

地竜一体でも相当な額になるのに、それが進化した地核竜はまさに宝の山そのもの。角や牙などの主立った部分は風音達が自分らで回収しているが、それ以外の部位でも換金すれば驚くべき金額となるのである。さらに竜葬土が現在買い占められて高騰化しているという事情も背景にはあった。

そして風音はダンジョン内で手に入れた素材も渡して、追加の換金を頼んだ。こちらはストーンミノタウロスのコアストーンの欠片とベビーコアの欠片に道中の魔物の素材である。一時間ほどで鑑定も終わり、追加のリストをロイは風音に手渡して、こう話した。

「一番の大物はストーンミノタウロスのコアストーンですね。ベビーコアも完全な形であれば、額も相当違うんですが、破片ではそのぐらいになります。申し訳ありませんが」

「あーうん。仕方ないよね」

なぜ破壊されたのか知らないロイの悪意のない言葉に、追記されたリストを見ている風音のテンションがだだ下がる。

「ところでカザネさん。少しお話ししたいことがあるのですが」

「何かな?」

ロイが改めて真面目な雰囲気で話してきたので、風音も傷心気分を振り払い、尋ね返した。

「風音さんが所持しているであろう『レインボーハート』のことです」

突然のその言葉に風音がピクッと肩を震わせた。背後にいる三人もあからさまに顔に出ていた。

「ロイさん、それは」

慎重に言葉を運ぼうとする風音にロイが手を前に出して待ったをかけた。

「いえ、確認ではありませんので話さなくて結構。というよりも情報源にはなりたくありませんので話さないでください」

ロイの拒絶に風音が頷く。

「なので、これはカザネさんが『レインボーハート』を所持しているという仮定でのお話とさせていただきますが、どうもアウターの界隈でカザネさんが『レインボーハート』を所持しているということが話題に上がっているそうです」

「マジで?」

風音の驚きにロイが頷く。

「そんなに驚くことではないでしょう。クリスタルドラゴンを退治したのはあなたたちで、未だに市場にそれが上がってきていない。であれば、どこかの個人的なコネクションを通じて売ったか、預けたか、或いは本人たちで持っているか」

簡単な推測である。現に今レインボーハートは風音が所持している。

風音もレインボーハートを売れば一生笑って暮らせるほどの財産が手に入るとは聞いていたが元々売る予定はなかった。金銭的な面で苦労はしていないし、何よりほとんど誰も扱ってないレア素材という点で今までにない何かができるのではないかと風音は考えていた。

「原型のまま手に入ったから普通には売れないのだろうなんて話も上がってますしね。まあ破損してない状態のものなんてここ50年は市場に出てないんですが」

クリスタルドラゴンの発生率は非常に低く、またクリスタルブレスのおかげで近付くのにも困難を伴う。そのコアであるレインボーハートを無傷で手に入れられるなど、あまりにも至難の技だといえた。

「うーん。もしかしてクリミオナで尾行されてたのって、その関連かなあ?」

風音達を尾行していたのは馬泥棒以外にも何人かいたのである。

「かもしれません。現在カザネさんは他の白き一団とも離れていますし、首都ならいざ知らずクリミオナの街などでは狙われる可能性がありますので注意していただくのがよろしいかと」

「そうだねえ。ありがとう」

風音が素直に感謝の言葉を返すとロイはいえいえと首を振った。

どうやら、またひとつ厄介ごとが増えていたようである。

その換金リストの確認等も終え、風音達がギルドの野営地から出ると、すでに祝いの祭りの準備が進んでいた。さすがに市場まであったオルドロックの黒岩竜討伐後ほどではないが、やはり冒険者としてはこういう時には祝って騒いで飲みたいものらしい。

直樹がしたり顔で「そういうもんさ」と言ってきたので風音はえいやっと蹴りを見舞ってやった。うざかったのである。

そして、その夜は夜半過ぎまでドンチャン騒ぎとなる。風音は酔った勢いで騒ぎのど真ん中にコテージを作ってしまい、そのまま千鳥足で中に入って寝てしまった。その様子を冒険者一同が呆然と見ていたが、しばらくすると何故かそのコテージを囲んでマイムマイム的な踊りが展開されていた。みんな酔っていたのだ。

◎ブルーリフォン要塞 入り口前 夜

「これで3回目か」

「何の話だ?」

再会の乾杯を交わしたオーリが直樹の言葉に反応する。

「ヨークにライルに、それにアンタだ。最近再会を祝して、こうして杯を交わしたのはな」

「そうなのか?」

直樹の言葉に少し驚いた顔でオーリは返した。オーリは直樹がしばらくミンシアナに行っていたことを知らない。基本的に冒険者というのは街ひとつに常駐することが多いがランクの高い冒険者は指名依頼が発生し、ひとつどころに留まらないことも多い。

今回のブルーリフォン要塞奪還のクエストもオーリたちがここ近辺にいる冒険者の中でもっとも優秀なパーティだったので指名がかかっていたのだ。そして直樹たちもそこそこ名の知れたパーティでいろいろと頼まれては街を転々とすることも多かった。

故に彼らは実に半年ぶりの再会だったので、オーリは直樹の現状を把握していなかった。

「野暮用……と、いうか、あんたには言っても問題はないか。プレイヤーらしき人物の話を聞いたんでね。ちょっとひとりでミンシアナに行ってたんだよ」

「なるほど、それで姉と再会できたってわけだね」

そうオーリは察して答える。実際には風音ではなくゆっこ姉を探していったのだが、直樹としては姉との再会の方が重要だったので、そうだと返した。

「それに随分と状況が進んだらしいじゃないか。元の世界に戻る方法も見つかったって聞いたよ?」

「それは姉貴……からだよな。いつ聞いたんだよ?」

その話を直樹はオーリにした覚えはない。であれば情報源は限られてくる。直樹の声のトーンが下がった。

「昨日の夜中にね。少し話す機会があったので」

妙にドスの利いた直樹の言葉にオーリが「???」という顔をしながら普通に返答する。

「そうか。夜中に……夜中にね」

「おい。直樹、どうかしたのか?」

「いや、なんでもない」

心配顔のオーリに直樹は平静を装いながら返答を返す。直樹は鉄の精神力で自制心を保っていた。少なくとも本人はそのつもりだった。

「それで、姉貴とは他に何を話したんだよ?」

「ああ、それは……というか本当に顔が変だぞ。大丈夫か?」

「オーケーだ。それよりも昨日の夜のことが聞きたい。話すんだ。もしくは死ぬんだ」

「死ぬ!?」

どうも直樹は悪酔いしてよく分からないことを言っているようだと考え、恐る恐るオーリは昨晩の風音との話を直樹に話した。結果として、直樹は情状酌量の余地はあると判断しオーリを解放した。友人を殺めずに済んだのである。