軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百六十八話 告白をしよう

さて、風音が先の戦闘で手に入れたスキルは『メガビーム』と『空間拡張』のふたつであった。風音も『メガビーム』はキュクロープスのものであるだろうことは分かったのだが、もうひとつのスキル『空間拡張』については心当たりがなく首をひねった。だがダンジョンも一種のゴーレムのようなものという昔聞いた話を思い出し、どうやらこのスキルはベビーコアのものではないかと思い至った。

そしてこの『空間拡張』の能力だが、これはアイテムボックスの機能拡張スキルのようだった。風音がアイテムボックスを確認したところ、収納力が十倍になっていた。

さらに大型格納スペースというものが3つ追加されていた。これは簡単に言えば1スペース分消費することで先ほどまで風音たちが入っていた大浴場をそのまま仕舞うことができるような能力だ。対象となるものをグループ化して認識することでまとめて収納することも可能だが、出し入れもまとめてなので頻繁に使うものを一緒に収納するには使い勝手が悪いようだった。

(コテージと大浴場に……後なんか入れられるかなぁ)

ここ最近のコテージは構造を複雑にしすぎたことにより作る度に魔力をほぼ全部使うぐらいにバカ喰いしていたので正直言って非常に助かるスキルだった。

もっとも使ってみて分かったことだが大型格納スペースは大浴場クラスを収納するのに10分ほどかかるようである。その光景は魔法陣が上から少しずつ降りて陣の中に入れていくもので、少しずつカーテンが降りて隠れていくような感じであった。

なお、その様子を見ていたその場にいた全員が何事かと驚いていた。あまりおおっぴらに人に見せるものではないなあ……とは風音も途中で思ったりもしたのだが、後の祭りである。

そしてもうひとつの能力だが……

(メガビーム、めがビーム、目がビーム……)

明らかにさきほどキュクロープスが使ってたあの技だろうが、危険そうなのでお試しは後回しとした。ただでさえユズに不審な目で見られてるのだ。このメンツの前でこれ以上の目立ったことはやるべきではないだろうと考えたのだ。

そして就寝の準備も完了。その夜は白き一団とセラで交代で見張りをすることにして、オーリングの面々にはそのまま寝てもらうこととした。仲間も失っているのだ。精神的にも肉体的にも疲れ果てている彼らには休息が必要だった。

◎ブルーリフォン要塞 心臓球の間 深夜

「ふぁ~」

風音がアクビをしながら不滅の水晶球を置いて入り口前で見張っている。今は夜半過ぎ、風音は先ほどライルと交代で番についていた。タツヨシくんドラグーンもいっしょである。そしてその場にはオーリも座っていた。

「オーリさん、疲れてるんだろうから、別に無理に起きてなくてもいいんだよ?」

風音がオーリにそう声をかける。

「いえ。さきほどはドタバタしていてキチンとお話もできませんでしたから。ここでちゃんとお礼とお話をさせていただきたく思いまして」

「むう、お礼とかそういうのはさっきので終わりって話だよ?」

素材も分け合ったし、パーティとパーティとしてはきっちりと片を付けたと風音は考えている。ベビーコアを壊してしまった件で風音は落ち込んでおり、今の時点でもお礼を言われるなどとんでもない状態だった。むしろ今も土下座したい気持ちを鋼の精神力で抑えているのだ。

「いえ、そうですか。まあでしたらそちらの件については今は言いません。であれば純粋にお話だけでお願いしたいのですが」

「それなら歓迎。話してる方が気が紛れるからね」

そう言って風音がオーリにちゃんと向き合った。

「それで、何かあるの? 話したいこと?」

「ええ。というよりも少し告白したいことがあるんですが」

風音は告白という言葉を聞いてちょっとだけドキンとした。思春期である。

「私はプレイヤーの子供です」

「あー、なるほどね」

オーリの告白に風音はそれほど驚くことなく、頷いた。

「驚きはしないんですね」

「日本人のハーフっぽい顔立ちだしね。過去にもプレイヤーが何人もいたのは知ってるし、まあそういうこともあるのかなって思ってただけだよ」

その風音の言葉にオーリが笑う。

「ニホン人のハーフですか。それ、ナオキにも言われましたね」

何がおかしいのかオーリが笑う。

「まあ、ナオキともその縁で知り合ったのですよ。あいつは父に会いに来たんですが、すでに父は亡くなってましてね」

ナオキも元の世界に帰る方法を探してたんだな……と風音は頷いた。

「ニホンっていう国も父から聞いています。つまり俺もニホン人なんですね。ハーフだけど」

その言葉に風音が頷いた。

「まあこっちだとジャパネスの人間とのハーフにしか見えないんだろうけどね。お父さんもジャパネス人だと思われてたんじゃないの?」

ジャパネス人は基本日本人ベースの種族だ。

「まあ、そうですね。ニホンという国には鉄の車やケイタイ?というものがあるんですよね。ナオキから聞いてようやく父の言葉が冗談の類ではないと理解できたんです。そうでなければ俺は今でも父は妄想癖のあるジャパネス人だったと思っていたかもしれない」

「お父さんは他のプレイヤーとは会えなかったの?」

「ええ。父は他の同郷の人間とは会えなかったと言っていました。ナオキと会えたらさぞかし嬉しかったんだろうなって思うんですけどね」

オーリはそう言って遠い目をする。生前の父親のことを思いだしているのだろうと風音は思った。

「そうだねえ。私は最初に弓花と会えたけど、直樹も結局三年経って私たちと初めて会ったらしいしね」

最初の頃は風音たちも誤解していたのだがプレイヤーは風音や弓花のように始まりの町であるコンラッドの近くに落とされるわけではないらしい。直樹がハイヴァーンに落ちたように、どうやらランダムで様々な場所に落とされているらしいことは風音もなんとなくには理解していた。

その後は風音が元の世界への帰還のことを話すとオーリが想像以上に興味を持ったらしく、身を乗り出して聞いていた。どうやらオーリも日本に行きたいと考えているようだった。

◎ブルーリフォン要塞 第6階層 翌朝

「やるぞ! タツヨシくんノーマル!!」

ライルが声をあげて、竜牙槍を持ってオーガたちに突進する。それに併せてタツヨシくんノーマルも、以前にライルの使用していた竜骨槍を握って走り出す。

流石に息を合わせてとまではいかないが、ライルとタツヨシくんノーマルはひとり一体と分担をして、目の前のオーガ達に挑んでいた。

今がちょうど昼の頃合い。ダンジョン攻略完了した翌日であり、風音たちは地上帰還を目指してダンジョンを進んでいた。

そして現在の状況だがライルはタツヨシくんノーマルと組んでオーガ戦に入っていた。なぜライルにタツヨシくんノーマルがついているかと言えば心臓球の間を出る前に風音がライルにタツヨシくんノーマルを譲ったからである。

地上で戦った地核竜のチャイルドストーンを仕込み、ノーマルの能力を風音が魔力を注いだのと同程度の出力にできるように調整されたタツヨシくんノーマルが入っている不思議なポーチを風音はライルに手渡した。直樹が羨ましそうに眺めていたが、当然風音は無視した。なお譲渡ではなく貸し出しである。

それに今回は学習機能を強化してライルの戦闘を学ばせるように設定している。最初はぎこちないかもしれないが、鍛え上げれば現状の風音の操るタツヨシくんシリーズよりも強くなれる可能性もあった。

そして、そうこうしているうちに戦闘は終了した。オーガは二体とも倒された。一体はライルが、もう一体はエミリィが竜牙の矢で倒していた。

「うわ、スッゴイね。これ」

エミリィは自分で撃った矢の威力に驚きながら、残りの竜牙の矢を見ていた。昨晩に弓使いのナイラに指導されて作成した地核竜の牙を加工した矢尻の付いた矢である。魔鋼を加えてないので魔術は込められないが、竜気を纏うため普通の矢に比べて威力が段違いに高い。こちらもストーンミノタウロス戦の反省を踏まえ、威力を増大させる手段を考えて対応させたものだ。

「一応貴重品なんでちゃんと回収しといてね」

「分かってるわよカザネ。こんなもの使い捨てになんてできないって」

風音の言葉に苦笑しながらエミリィが答える。地核竜の牙を加工したものを使い捨てにできるわけもない。普段エミリィが使用している魔鋼の矢と比べればその金銭的価値は桁が二つは違うのだから。

そして風音はさきほどの戦闘を反芻する。

今はまだ仮に対応させた程度なので荒削りだが、だが方向性としては問題なかろうと考え、直樹組強化計画(※弟最強計画をさらに発展させたもの)のメモ帳に今後の展開を書き込むとパタンとそれを閉じた。