軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十二話 方針を決めよう

「というわけで第2回パーティ会議を始めます」

「何がというわけでなのかは分からないけど始めてちょうだい」

夜、クックの鍋処にて作戦会議。ちなみに第1回は昨日親方を交えてしていた。その際の内容は弓花の能力をどう伸ばすかだった。

「うぃ。それじゃあ今日ギルメンたちから教えてもらった情報を整理したんだけどね。いくつかのことが分かりました」

メモ帳を見ながら風音が話す。

「どうもこの世界にはゲームの仕様にはなかった『ダンジョン』というのがあるらしいのね」

「ダンジョン?」

弓花はRPGなら必ずあるだろう単語をなぜ風音が口にするのだろうと首をひねる。

「うん。魔力の吹き溜まりみたいのが固まってできた領域をダンジョンと呼ぶんだって。ここで採れる魔鋼とか魔物の素材なんかが高く売れるらしいんだ」

「ふーん。そういえば聞いたことあったかも。普通に遺跡潜ってると思ってたから気にとめてなかったんだけど」

「で、最近この国にも新しいダンジョンがいくつかできたらしくてここらの冒険者はみんなこぞって潜ってるんだって。そんでこういう田舎のギルドは人が少なくなったんだってさ」

「質問。ダンジョンって新たにできるもんなの?」

普通ダンジョンとは古代文明の遺跡とか誰かの墓とかどこぞの盗賊の洞窟とかじゃないのかと弓花は思う。

「そうみたいだね。ほらゲームで出てきたシドニア鉱山ってあったじゃない」

「えーと、確か青水晶をとるためのところだったよね」

「うん。もうずいぶん昔に廃鉱になってたらしいんだけど、そこも放置してたらダンジョン化したらしいよ」

「ダンジョン化ねえ」

弓花にはその意味がピンとこない。

「ダンジョンは最深部に高純度の大型コアストーンがあってそれを破壊するか外しちゃうと機能停止するとかで」

「コアストーン? てことはダンジョンってゴーレムの一種ってこと?」

「親戚みたいなもんじゃないかって言われてるね。基本的にはその大型コアストーン、心臓球っていうんだけど、それを目指してダンジョンに潜ってるんだって」

「へえ。そうすると私たちもそれを狙って潜るってこと?」

「うん。で、ここからが本題なんだけど」

風音の声に真剣なものが混じる。

「どうも最深部が異界に通じてるって噂があるらしいんだ」

「本当にッ?」

弓花が顔を乗り出して風音に尋ねる。

「攻略者たちの話だと見たこともない風景が見える穴があったらしいんだ。その中に入った人は戻ってこなかったって」

その言葉を弓花は目を見開いて聞いている。

「帰…れる?」

風音は弓花に対してゆっくりと頷く。

「まだ可能性にすぎないけど、なんの手掛かりもない私たちには目指してみる価値はあると思う」

まだ可能性に過ぎない…という言葉に見開いた目を閉じ、再び風音に向き合う。

「可能性でもいい。確かめてみたい」

風音もその言葉に頷く。

「そうだね。だから今後はダンジョン最深部到達を目標に進めていきたいと思うんだけど良いかな?」

「そうしよう」

「うん。ダンジョン潜って一攫千金は冒険者の夢みたいなものだしね。どちらにせよ潜る意味はあると思う」

そう言って風音はメモ帳をめくる。

「それと最深部到達にはどうしても力がいるのね。だからまずは私たち自身が力を付けなきゃいけない」

風音の言葉に弓花も頷く。

「それで弓花の天賦の才:槍を最大限に生かすためには竜と槍の国と言われているハイヴァーン公国に行くのが手っ取り早いと思うんだ」

「ハイヴァーンか。結構遠いね」

ハイヴァーンはここから北にある竜騎士たちの国だ。ゲーム中にも存在していたかなり歴史のある国でもある。

「ウォンバードの街から竜船が出てるみたいだから、それに乗っていけばそんなにかからないみたいだよ」

「竜船、あるんだ?」

浮遊石を用いた飛空船。ゲームでも終盤の移動手段だった乗り物だ。移動手段として便利なあの乗り物の名前を聞かないのでこの世界には存在してないのだと弓花は思っていた。

「無人の定期便が自動的に動いてるだけって話だけどね」

風音はメモ帳をさらにめくった。

「それと英霊召喚の指輪がこの世界にもあるっぽい」

「英霊召喚ってあの?」

驚く弓花。それはゲームの仕様に沿ったアイテムだったはずだ。

「ゲーム二周目の強くてニューゲーム用に相当するアイテム、前の周回のプレイヤーキャラを召喚するバランスブレイカー。これがあればダンジョン攻略も楽になると思うんだ」

「それは…そうね。本当に呼び出せたらだけど」

「そうだけど試してみる価値はあるんじゃないかな。これはグレイゴーレムたちのいたアルゴ山脈の奥のコーレル神殿にあるから比較的すぐに探しにいけるし」

元々が2周以降のプレイヤーが俺Tueeするためのアイテムだ。2周以降なら序盤で手に入るし入手難易度はそこそこ低いアイテムのはずだ。ゲームと同じならばだが。

「へぇ、あの指輪ってそんなところにあるんだ?」

「あれ、弓花は知らなかったの?」

「私はメインクエストとサブを少しクリアした程度だからね。二周目までは到達してないわ」

そう言う弓花だが、そこまででもプレイ時間は100時間は超えるので、ゼクシアハーツにハマっていないというわけでなかったりするのだが。

「そうなんだ。まあ、ここである程度鍛えたらとりあえずは探索に行く方向でいきたいけどいいかな?」

「ラジャー」

弓花の返事に頷きながら風音はメモ帳をパタンと閉じた。

「というわけで、今後の予定はこの街を拠点にレベル上げしてから英霊召喚の指輪を探索という感じだね。他に何かあるかな?」

「えーとね」

弓花が一旦考えた後、口を開く。

「その後は一度ウィンラードの街にいってもいいかしら?」

「うん。元々通る予定だったけどなんかあるの?」

「ハイヴァーンに行くのもいいんだけど、ウィンラードには牙の槍兵と言われる凄腕の方がいるんだって親方から伺ってるのよ。よければそこで稽古を付けてもらえってね」

「牙の槍兵ねえ。なんか強そうだね」

だよねえ、と弓花。

「了解。親方がそう言うんならそうしようか」

風音は頷き、そこで会議はお開きとなった。

夜中。

「うーん」

弓花が寝苦しいなと目を覚ますと横に風音の顔があった。

「ッ!?」

その光景に驚いた弓花だが、状況をすぐに思い出し声をあげるのを抑えた。

(ああ、ベッド一つしかないからってんで一緒に寝てるんだった)

にしてもだ。風音は弓花を完全に抱きしめて寝ている。

(抱き枕か。私は)

そうも思うが、ほどけない。がっちりである。

(うーん、動けないなぁ)

とはいえ、目の前の愛らしい寝顔を見ているとどうでも良くなってくる自分もいる。

普段無表情、時々笑顔の小さい親友。

クスっと弓花は微笑む。そしてチュッと頬にキスをする。

「ま、これからもよろしくね。相棒」

そう呟いて弓花も目を閉じた。

明日からは忙しい日々になるだろう。けれど弓花はこれからの日々がひどく楽しみだった。