軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71.【三年生】ヒロインの動向

冬休み、クリスマスは孤児院で孤児たちとパーティーをやって過ごし、短い三学期も順調に消化して、生徒総会も無事に終わりました。

生徒会長、前年度に引き続き僕が務めます。

現三年生を送り出す卒業式も終わりました。卒業パーティーのダンス、副会長を務めてくれたレミーさんと踊ります。

「一年間ありがとうございました副会長。いろいろ大変な目にあわせて申し訳ありませんでした」

「いいえ……。私、この一年で本当に『仕事をする』ってことを、殿下から学びましたわ。なによりも勉強になりました」

「殿下なんて呼ばなくてもいいってば」

「今は殿下と呼ばせてください。殿下と過ごした一年、私の宝ですわ。一生自慢できますもの」

「ありがとうレミー……」

「殿下も。引き続き卒業までもう一年、頑張ってくださいね」

二曲目、会計を務めてくれたオリビアさんと。

「会計の仕事ありがとう、オリビア」

「いいえ、まっとうな会計でしたんでなにも苦労なんてなかったですよ」

そう言ってオリビアさんが笑いますね。

「何の仕事でも、二重帳簿に不正会計、膨大な使途不明をいかにごまかすかが会計の腕の見せ所なんですけどね――!」

「君、ホントに学生? なんかやってた?」

「父上の仕事を少し」

「聞かなかったことにしとくよ……。卒業おめでとう」

「ありがとうございますシン君。……もうこの学園の門をくぐったら、『殿下』って呼ばなきゃいけないんですね」

「プライベートでは『シン君』って呼んでいいよ。これからも一生ね」

「感激です!」

ラストダンスは、セレアと。

なんだか元気のないセレアと、静かに、しんみりと踊ります。

「……どうかした?」

「……いえ」

曲が終わって、きゅっと、抱き着いてきます。

「来年は、こうやって踊れないんじゃないかと思って……」

ゲーム通りに悪役令嬢断罪騒ぎなんてのが起きたら、王子とダンスどころじゃないですもんね。

「大丈夫だよ……」

僕もセレアを抱きしめます。

「絶対に大丈夫。僕は君を裏切ったりしない。必ず君を守って見せる。約束するよ」

僕の胸でセレアがうんうんって頷きます。

ちらっと横目で見たところ、ヒロインさんはパウエル、フリード、ピカールの順で踊ってましたね。それが好感度の順ってわけじゃないとは思いますけど。

ラストダンスタイムは演劇部の卒業生たちと壁でご歓談していました。ラストダンスは想い人とってのがお約束です。逃げたってことになりますね。まだ誰を攻略するかは決めてないのか、それとも平均に好感度を上げているのか。謎です。

残り一年。正念場ですね。

うん、僕、ワクワクしてきました。いっそ楽しんでしまったほうが精神安定上、いいみたいです。

「セレア」

「はい?」

「笑おう!」

なんか涙目になってたセレア、びっくりしてます。

「心配するより、楽しんでしまおう、この状況。僕たち、いろいろ失敗したって、逃げ出す羽目になったって、そんなことちっとも構わないよ。二人っきりの幸せな人生が待ってるから、なんにも怯えること無い。君を孤独になんてしない。どこに行こうと僕も一緒だよ」

「……そうですね。はい、そういえばそうでした!」

笑顔で握り返してくれるセレアの手、今はそれが僕たちの、何よりの幸せなんだと思います……。

そうして始まった三年生。

生徒会長は僕。副会長はハーティス君に頼みました。

「ハーティス君、会長やってよ」

「いやいやいやいや! それは無理! 王子様を差し置いてそれは無理です!」って断られちゃったんですよ。しょうがないです。

そのかわり、書記を誰か紹介してもらうよう頼みました。

「あの、文芸部員でいいでしょうか」

「大歓迎だよ!」

文芸部の二年生の男子を連れてきてくれました。

「よろしくお願いします!」って最敬礼してくれるんですけど、「まあそう固くならなくていいよ。しつこく言ってるけどここでは身分とかホント関係ないから」って言っときました。僕も図書室しょっちゅう行きますし、セレアが文芸部員ですから僕とも前から顔見知りです。

カイン・エルプス君っていうんですよ。ハーティス君とタイプが似てるインテリ系です。ちょっと太ってて人がいい感じがします。伯爵家の次男だそうです。

会計は、思い切って一年生から抜擢しました。新入生代表挨拶をしてくれた入学試験首席のミーティス・プレイン嬢です。こちらも伯爵令嬢で、背はちっちゃいけど、とっても真面目そうな女の子です。期待してしまいます。

「ゆくゆくはカイン君もミーティスさんも、会長候補だから、鍛えるよ!」

「はい!」

「よろしくお願いします!」

下級生、かわいいですね!

僕は結局部活入って無かったし、生徒会の二人は上級生でしたから、僕、下級生にあんまり親しいよく知った人いないんですよね。王子でしたからパーティーとかお茶会とかでもみんな僕よりお兄さん、お姉さんばっかりでしたし。

セレアの話だと、ゲームでは生徒会役員、あの攻略対象たちがずらりと並ぶそうです。どうなんだそれ。実力的にあり得ないよ。どいつもこいつも、ハーティス君を除き生徒会の仕事任せていいヤツなんかいないでしょ。絶対女王、エレーナ・ストラーディス様みたいに生徒会をサロンにしてたんならともかく、僕の代の実務派生徒会では考えられない人選です。

かわいくないやつも入学してきてしまいました。

「兄上! この学園ちょっとヘンだよ!」

弟のレンです。

「なんかさあ、みんな俺の事『ミッドランド君』とか呼ぶしさあ、『殿下、殿下』ってちゃんと呼ぶヤツいないんだよな」

なに生意気言ってんの。

「学園の門に書いてあっただろ? 『この門をくぐる者は全ての身分を捨てよ』って。あれ、建前でも何でもなく国王陛下の本気だからね? 僕もこの学園ではみんなに『シン君』って呼ばれてるよ」

「兄上、学園でバカにされてんのか?」

僕が公務で忙しかったのであんまり遊んであげられなかったレン、ちょっと甘やかされて育ったもんで、なんかワガママで世間知らずな所があります。

「……そうだったら生徒会長なんてやってないよ。入学式の在校生代表で僕が挨拶してんの見てただろ」

「……わかったよ。学園では俺、兄上のことなんて呼んだらいい?」

「会長」

「なんだそりゃ」

「生徒会長なんだから生徒の半分は僕の事そう呼ぶね」

「……俺も生徒会長やってみるかな」

「僕、一年から成績ずっとトップを譲ったことがないんだけど」

「げえ」

はっはっは。生徒会長ってね、エレーナ様の時までは名誉職みたいなところあったけど、今は違うよ? 勉強頑張れよ?

生徒会の最初の仕事。予算編成。

去年の部活の活動実績を生徒総会で提出させていますので、それを参考に割り振っていきます。各部の部長さんを集めて、今年の活動予定と予算を提出してもらい、部長会議を開きます。

「前年度各部の部費の30%をプールしました。今年度も同じ方式にします。去年は校外活動が各部一件程度と大変低調とはいえ、成果は出ましたので、今年も外部の大会への参加、他校との交流試合、合同練習などの校外活動を年に最低一回は盛り込んでください。校外の部活動で消費した費用をプールした中から改めて配分します。よろしくお願いします」

この学園では部活動などやってない学生のほうが多いので、部活動をしている生徒のほうがより多く生徒会費を使っていることになります。使った分は働いてもらいましょう。

「校外で活動するたびに、フローラ学園の権威が下がっちゃうよ……」

「それが実力ってことです音楽部長。改善は現状の把握から始まります。貴族学園ってことにあぐらをかくのではなく、市民、領民に尊敬と信頼を集める貴族たれということを学びましょう」

「ハードル高いなあ、会長!」

今年から剣術部の部長になったジャックに文句言われます。

「働かざる者食うべからず。市民はそうしているんだよ?」

「はいはい」

ヒロインさんの噂は二年生後半以降、聞いていません。例の僕らの水かぶり事件以来、いじめが沈静化したようで、「触らぬ神に祟りなし」状態のようです。

バカ担当、ピカールと一番仲がいいのかと思っていましたがそうでも無いようで。なにしろピカール、ほとんど毎日見かけるたびに違う女生徒と歩いていますんでね。モテモテなのはそういうキャラなんだからわかるとして、一人に絞ってもらいたいものです。

脳筋担当、おとなしくなりました。あの武闘会の抜刀事件以来、アイツが将来、騎士になるのは絶望的という感じで、女子たちにも見放されている感じがします。騎士の家系が半数を占めるこの学園で、「騎士になるのはもう無理」って烙印を押されたら相手にされなくなっちゃうのか。厳しいですね女子の皆さん。

ダークホース的になぜかクール担当君と仲良くなっているようですヒロインさん。一緒にいる所をよく見ます。僕とジャック、ハーティス君が、ヒロインさんに全く興味を示さず攻略が全然進まないことをいいかげん理解したようです。

メイン攻略、王子ルート。つまり僕とベストエンディングを迎える条件には、セレアが言う「悪役令嬢断罪イベント」ってのが必須です。

当たり前ですよね、もう婚約者がいる相手と結婚するんだったら、その婚約者との婚約は破棄させないとね。

その断罪イベントを成功させるためには、協力者が必要です。つまり、他の攻略対象者もその断罪イベントでみんなヒロインさん側の味方に立たせて、セレアに数々の嫌がらせの証拠を突き付けて断罪しなければなりません。

この時、味方になってくれる攻略対象者の数が少ないと、断罪は成功しないか、イベントそのものが発生せず、ビターエンドあるいはバッドエンドとなります。

つまり逆ハーレムとは言わなくても、それなりにどの攻略対象者とも、仲良くなっていて、かつその中でお目当ての対象者との好感度が一番になっていなければいけないと。

「難易度高くないこのゲーム?」

王都のコレット家別邸で、セレアと二人でお茶をしながら、手作りのゲームの攻略本見直して久々にチェックしています。普段忙しすぎる僕たち、お休みは出かけたりせず、こうやってのんびりするのもいいものです。

「均一に男子と仲良くならなきゃいけないって、バランス感覚すごくないとダメだよねえコレ」

「そうなんですよ。そう考えるとけっこう鬼畜なゲームです。主人公に、八方美人なビッチプレイを強要するんですからね」

「公爵令嬢がそんな言葉使っちゃいけません」

「はーい」

「でもこれ、もうどのルートもほとんど可能性無くなってると思うな」

うん、二人でここまでの反省会、してみましょうか。