軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

色々、解せぬ……

「だから貴族って嫌いだったんだ」

「わかる。偉そうだし腹黒いし、いけすかないやつ多いよな」

「それに作法とかしきたりとか、絶対めんどくさそうだし」

「だよな。俺も無理だわー」

めっちゃ話が弾んでる目の前の二人。

俺も時々「わかるー」ってうんうんしてたんだけど、すっげー「なんでお前が頷いてんだよ」って目で見られた。仲間外れ、よくない。

仮にも貴族の前で平然と貴族の悪口トークに励むのは、リオとソラだった。

カフェで話を聞いたあと、そのまま「サヨナラ―」ってわけにもいかずひとまず城へ、つーか騎士団へ連れてった。

事情聴取ももちろんのこと、そもそも身内が行方不明の子供を一人っきりの家へ帰すわけにもいかないし。なにせリオ自身も充分リックの人質として狙われる恐れがある。

そんなこんなでリオは騎士団所有の施設預かりになった。

仮面舞踏会の人身売買の被害者保護した時もそうだけど、一時的に犯罪被害者とか関係者を保護できる施設があるので、そこで生活してる状況だ。

念の為の護衛と連絡役につけたのがサスケとソラだ。

人選の理由?

初対面のシュタッ!で取り囲まれたからか、リオがちょっぴし影たちに怯えてたから。

本当は一番威圧感がなくて、人当たりが良さそうなのはランなんだけどね。

ランは……うん、穏やかだけどその実、一番物騒なお兄さんだからね!!

もし不審者とか来て、笑顔で血塗れスプラッター状況にでもなったらリオがトラウマになること請け合いだ。

なので年が近いサスケとコミュニケーション能力に長けたソラが担当に。

一人じゃだめかって??

サスケは人見知り?だし、ソラじゃ逃がすのは出来ても護衛は務まんないから!

俺も時々顔を出してる。

肘をついてボリボリとクッキーを 齧(かじ) るソラは随分とリオと打ち解けたようだ。ソラとしては危険のある任務と違って気が楽なのだろう。

そしてなにより……スケベな貴族の父親がお遊びで手を出して生まれた子供で異能持ち、という似たような境遇からか一気に打ち解けた模様。

本日も貴族の悪口トークが大盛り上がりだ。

お湯を貰いに行ったリフが帰ってくるまでには終わるだろうけど。

「まぁ、身分なんて関係なく、いい人は居るし悪い奴も居るよ」

「それは……そうかも、知れないけどさ……」

ごにょごにょと言葉を濁すリオに少し笑う。

「だけど確かに、偉そうで腹黒い人間が多そうっていうのは同感だけどね。取り繕いも腹の探り合いも日常茶飯事だし、笑顔で遣り合ってなんぼな世界だし。……時々人間不信になりそうにはなるかな」

「「うわー……」」

同情の視線をありがとう。

「それに立場が人を変えるっていうのはあるんだろうね。貴族と平民では持てる力が違う。同じ“悪”を行うにしろ、力の大きさに被害は比例するし、金も権力も、動かせる人間の数も違う。恵まれた立場が人を 堕落(だらく) に引き落とすっていうのもあるかもね。手に入れればもっとと望む、人はどこまでも欲深くなれる生き物だから」

加えてさっき言った日常茶飯事なアレやコレ。必要に迫られて水面下の攻防を熟していれば、貴族の腹の中が真っ黒くなりがちなのはある程度は仕方のないことでもある。人間って染まり 易(やす) い生き物だからね。

だからリオたちのイメージも納得なんだけど、それが貴族に生まれたからかというとちょっと違うと思う。

「でも善良で優しい人間が権力や地位を手に入れた途端、人が変わったように醜悪になる場合だってあればその逆もある。だから身分立場に左右されることもあるけど、結局はその人次第じゃない?どう生まれたかでなく、どう生きるか。それが大切なんじゃないかな。

あと私の弟妹なんかは、貴族だけど物凄く素直でいい子たちだよ?」

「結局それか」

頬杖をついたソラの呆れた視線なんて気にしませーん。

「いい子じゃないか」

「まぁそうだけどよ」

素直じゃないソラも認めずにはいられないレベルでウチの子たちは天使。

コンコンとノックが響き「お待たせしました」の言葉と共に、机にだらしなく頬杖をついていたソラの姿勢がぴしゃりと伸びた。教育されてんなー。

そして何気にリオも 若干(じゃかん) 姿勢を正した。

……いつの間にかこっちも??

少し大きめのポットを手に入ってきたリフと、その後ろに菓子が盛られた皿を手にしたサスケ。廊下で合流でもしたのだろうか。

「サスケっ」

笑顔を浮かべたリオはぱっと席を立ってサスケへと駆けていく。

菓子皿を覗きこみ、俺が手土産にもってきた菓子を礼と共に口にし、サスケにも勧めている。出会った時と違い、随分と表情豊かに話しかける姿は年頃の少女そのものだった。

俺とソラはチラリと視線を合わせる。

ソラの口元は意味深な笑みが浮かんでた。

「アイツ、気づいてないだろ?」「そうだね」そんな言葉をアイコンタクトで交わした。

ズボンに短い髪、てっきり少年だと思っていたリオは実は女の子だった。

会話の一人称は「俺」だが、心の声では『私』だったから、あれっ?と思って確認したのだ。

そんなリオちゃん、サスケくんに懐いてます。日を増すことに分かり易く好意が増してるんだけど……当のサスケくんは全く気付いておりません。

うん、サスケはちょっと対人関係とか苦手だしね。

輝く笑顔であれこれと話しかけるリオに対し、邪険にはしないけど無表情で淡々と返すサスケ、そして年下の恋模様を面白がってるソラ。

「あんま 揶揄(からか) うんじゃないよ」

こそっと告げれば、ソラはその笑みをますます深めて 揶揄(からか) う気満々で覗きこんできた。

リオでもサスケでもなく、俺を。

「でもカイザー様だって良かったじゃん?俺のお蔭でマオにむくれられないですんだんだし」

にやにやと笑う姿に思わず口を歪めた。

「ソラ」と 窘(たしな) める声をかけながらも、ことりと湯気の立つカップを置いてくれたリフの表情にもやや笑みが浮かんでいる。

先日、リオが女の子だと判明した日のことだ。

帰宅後にソラとリオの話をしていたら、お膝の上のマオが“女の子”という単語に反応した。

その結果……胸をポカスカされながら「うわきものー!!」」と叫ばれた。

………解せぬ。

しかもその声を聞きつけたベアトリクスにまで「お兄様っ!また女の子を 誑(たぶら) かしましたのっ?」て詰め寄られるし。

………ますます、解せぬ。

そもそも俺、リオが女の子だって気づいてなかったってば。

あと何度でも言うが、ロリコン趣味はありませんっ!!第一、また、ってなに?!

結局、ソラがマオに耳打ちした「安心しろよ。リオはカイザー様狙いじゃないから。多分、サスケのこと好きだし」という言葉で事態は一応沈静化した。

その時のことを言っているのだろう。

揶揄(からか) ってくるソラをつい恨みがましい目で睨みつける。

「君も手合わせしてあげようか?」

そう問いかければ唇の端をヒクつかせたソラは大人しく口を閉じ、降参、とばかりに両手を顔の横へとあげた。

なんか時々、マオが妙な言葉覚えてんなとは思ってたんだよ。

そしたら原因は派手な赤髪のイケオジだったぽい。全部がそうかは知らんが。

幼気なマオに浮気者なんて言葉を教えたアインハードは、手合わせという名の元に腹にきつめの一撃を加えておいた。

八つ当たり?

いえいえ、弟子が久々に師匠の胸を借りただけですがなにか?

カップを空にし終えたところで、さてと腰をあげる。元々騎士団へ向かう前に寄っただけだ。長居は出来ない。

「えー、もう行っちゃうの?」

俺を見て、同じく立ち上がったサスケにリオが思わずといった感じで声をあげた。

「サスケ、君はもう少しここに居ていいよ」

今は急ぎで頼む仕事もないしと告げれば「ですが……」と困惑を伝えてくる瞳。表情は相も変わらず無表情なんだけどね。

「持ってきたお菓子も一人じゃ消化できないだろうしね。それにリオも退屈を持て余してるみたいだ。少しだけ付き合ってあげて」

サスケを引き留めたのはなにもリオの恋の応援だけじゃない。

働き過ぎだと思うんだよね、サスケ。

これがソラなら「休んでていいよ」って言ったら「よっしゃ!」ってなるけど、真面目な彼は空いた時間も 鍛錬(たんれん) とかしてるしな。真面目なのはいいことだが息抜きも大事だ。

ぱたん、と閉じた扉を背に騎士団の詰め所へと足を向ける。

ちなみにソラは解散だ。昔の仕事もあってか、騎士や権力者に顔を覚えられるのを嫌うのはいつものことなので特に気にしない。

面倒事は御免だというその精神はぶっちゃけ、嫌いじゃない。モブとしては非常に共感できるのだ。

俺だって乙女ゲームの知識だのベアトリクスの破滅フラグだのなければ、きっと無難にひっそり生きることを選んでいた筈だ。

……なのになんでこんなことになってんだろ?

ひっそり生きるどころか、いつのまにやら隠しキャラ扱いやら果てには魔王扱いされてる現状に……遠い目をしながら騎士団の詰め所へと向かった。