軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「それではいよいよ、第3位の発表です!」

「「「「うぉぉぉ」」」」

次はウチの番な気がする……。

男性審査員の多さを見落としていた。量で押す料理は強い。

思わず喉が鳴る。

「第3位は、屋台番号1番! 『双頭の鷲亭』です』

ホッ。

ウチが3位だとばかり思っていた。

『料理長さん、前に出てきてください。『双頭の鷲亭』は知る人ぞ知る、王都の宿です。料理は、『じゃがいもと肉の串焼き』です」

司会者の居る舞台まで一番遠かった屋台から、『双頭の鷲亭』の料理長が到着した。

「料理長、おめでとうございます」

「うっす!」

「じゃがいもと肉の串焼きについて、工夫などあったら教えてください」

「肉だけじゃ量が足りねぇ。だから芋を刺した」

「なるほど、満腹感を重視されたんですね」

「……串の方が器より安かったしな」

会場が笑いに包まれる。

「じゃがいもは先に火を通してから串に刺したんでしょうか?」

「そりゃぁ、まぁなぁ」

ぶっきらぼうな返答に、司会者の笑顔が少し引きつっていた。

「それでは、次の試合でも頑張ってください。ありがとうございました~」

「うむ」

「お次は2位の発表です」

次はウチだ。

そう思うのに、違う名前が呼ばれろと願ってしまう。

前世のソシアルダンス決勝を思い出す。

最後の二組に残された瞬間、誰もが「相手の名前を呼べ」と祈るのだ。

「第2位はっ」

「「「「ごくり」」」」

「今まで満点続きだった屋台番号11番の『ホットドッグ屋』です!」

胃が沈んだ。

――呼ばれた。

3位ではなく2位だったのは嬉しいけど……。

「料理長さん、前に出てきてください」

落ちかけた肩を引き上げ、舞台へ向かう。

「お嬢様、頑張ってください」

ナスカが私の気落ちを察したのだろう、明るい声で見送ってくれる。

知る人ぞ知るフローリストガーデングループのオーナーとして、情けない姿は見せられない。

ぐいっと顔を上げ、前を見て歩く。

厳めしい雰囲気にならないよう、無理やり口角を上げた。

「あら、『ホットドッグ屋』の料理長は若い女性なんですね。どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」

舞台に上がると会場がざわついた。

「えらいべっぴんさんやのぅ」

「若い女性……」

「あ、あれは『フローリストガ……』モゴモゴ……」

外野の声が聞こえてきたが、そしらぬフリをする。

女性司会者は普段通りの落ち着いた声でインタビューを開始した。

「今日、提供された料理は何と言う料理ですか?」

「ブリトーです」

「今まで全ての試合を満点で勝ち抜いて来られましたが、今回は2位に甘んじたわけですね。でも、試合終了後のインタビューでは、多くの審査員が『ホットドッグ屋』の料理が一番美味しいと言っていました。敗因は何だと思いますか?」

無理に余裕の笑顔を浮かべる。

「まず、インタビューで一番美味しいと答えてくださった皆様に感謝申し上げます。今回の勝負で安くても美味しいを実現したいと思っていたので、その部分に関しては目標を達成できたことが嬉しいです」

2位であっても負けではない。

悔しがる姿を見せれば、観客は盛り上がる。

司会者はそれを狙っている。

分かるが、こちらが態々、相手の土俵で戦う必要はないのだ。

次の試合のためにも、成功しているということを印象付けなければいけない。

「後、決められた料金内に食材を押さえないといけないという大きな足かせがありましたが、それもクリアできて嬉しいです」

悔しがるのは簡単だ。

でも、この場で必要なのは敗者の顔じゃない。

“次は勝つ側”の顔だ。そう、イメージ操作するのだ。

「しかも1,700ペリカ。予算はまだ余っていました」

会場がどよめく。

「あんなに美味しかったのに、1,700ペリカでできるんだ!」

観衆の中から聞こえた声だ。心強い応援だ。

「作っている途中で食材を増やす必要が出るかもしれないので、できるだけ抑えました」

司会者に自由にしゃべらせないために、畳みかけるように発言する。

「上限金額までまだ余裕があったということですね?

「はい」

ここで元々の司会者の質問に答えていないことを微塵も匂わせず、どうやって舞台を去ろうかと頭を悩ませていたけれど、司会者はこちらの意図に気付いていないようで、そのまま「次の試合も頑張ってくださいね」と良い笑顔で送り出してくれた。

「それでは栄えある第一位は、屋台番号5番の『リスの宿』です。こちらのチームもここまで高い得点数を保って来ている実力派です。料理は『肉入りパースニップ粥』です。料理長、舞台へどうぞ~」

やっぱり1位は『リスの宿』かぁ……。

お腹にずっしりと来る料理……粥?

「こちらの料理長も女性なんですね。おめでとうございます」

「ありがとよ」

「審査後のインタビューでは、量があって美味しいとの評判でしたが、いかがですか?」

「粥は腹が減るのが早いだろう? だから豆を煮崩してとろみをつけた。肉も骨付きのまま鍋に放り込んで、芋も山ほど入れたのさ。匙を置く頃には腹がずっしり重くなる。そして、そこにパースニップの甘い香りだ。男どもが黙って食ってた時点で、勝てると思ったね」

「パースニップは最初の試合の食材ですが、それを選んだ理由は何ですか?」

「あははは。あたいの出身の村では普通に食べていた食材だからね。料理に甘味を出したい時は良く使うのさ」

「そうだったんですね」

「ああ。それにしてもインタビューで一番美味しいのは1位だった『ホットドッグ屋』っていうのを小耳に挟んだんだけどさぁ……」

女司会者は無言で頷いた。

「次の試合ではウチの料理が一番美味しいと言わせてみせるよ!」

「おおお! 1位から2位へ、挑戦状が送られてしまいましたね。これは次の試合が楽しみですね。みなさん! 次の試合はあさって、この広場で行われます! 乞うご期待! それでは、参加者の皆さん。あさっての為に、是非、英気を養って試合に備えてくださいね。それでは、また~」

司会者の宣言で、今日の試合は終わったとばかりに観衆は散り散りになりながら、広場を出ていった。

この大会までは知らなかった『リスの宿』が、いよいよライバルとして立ちはだかってきた。

思わず、両手をぐっと握り込んだ。