軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

デルの広告王への道

「いかがですか?これがウチで発刊している新聞で、こちらの枠が広告用の枠なんです」

「新聞はウチも時々買っているからどんなものか知っているよ。でも、広告料って高いんだろう?それにウチの弁当はビジネスホテルやコンビニにはどうやったって負けるんだ」

今日の訪問先は鉄道の中で食べる弁当を作っているナイゴン村のムーラン商店だ。

濃い眉毛の痩せた色黒い男がムーランと言い、家族総出で事業を立ち上げたが、売上げは思った程伸びていないらしい。

理由は場所と味だ。

コンビニは駅の真ん前なのと、ビジネスホテルのすぐ横と言うより、2つの建物は併設されており、外に出る事なく内部に連絡通路があるのでビジネスホテル内の施設と捉えた方が良いだろう。

懐に余裕のある客なら宿泊はみな駅の真ん前にあるビジネスホテルを希望するからなぁ。

そうなると食事はホテルの食堂を選ぶだろうし、お弁当だってそのホテルが用意しているものをコンビニで買うだろう。

地の利と食品で大事な味の部分でも負けているのだ。

アウレリア様の所のホテルと比べると見劣りするのはしょうがない。

ただ、このムーラン商店にも良い点がある。

それは値段だ。

ビジネスホテルやコンビニに比べてとぉっても安い。

ほぼ半額と言って良い。

それでもなかなか売れないのは鉄道を使えるくらいの客ならば、ビジネスホテルやコンビニの食事や弁当を買う金に困らないからだ。

では何故私がムーラン商店へ営業を掛けているか?

それは、ムーラン商店の弁当ではなく弁当に付けているお茶に目を付けたからだ。

これはお茶と謳っているが、実は冷やし飴と言う甘い飲み物で、あのアウレリア様が美味しいと言っていたからだ。

「血糖値の上がりが緩やかで、甘くて美味しくムーラン商店のはしょうがが入っているから体がポカポカしてくるんだよね」と、またまたアウレリア様の奇天烈な語彙で褒めていらしたので、実の所、どこが凄いのかは分からない。

でも、美味しくて体に良いと言う事は分かった。

ならば、弁当を売るより冷やし飴を売った方が良いのではないかと目を付けたのだ。

昨日、客のフリをして冷やし飴を買ったところ、アウレリア様が言った様においしかった。

子供やご婦人は喜ぶだろうなぁと言う味だった。

しかも材料が麦芽で作った水飴が元なので、この麦の生産国内一の地域では安価に手に入るらしい。

さて、ここからが私の腕の見せ所だ。

「ムーランさん。お弁当の方ではなくそちらのお茶を大々的に売り出されたら如何ですか?それもコンビニに卸すなどして全国展開で」

「え?お茶を?」

「そうなんです。これをご覧下さい」

私は前もって考えていたキャッチフレーズと凡そのイメージ図が描かれた見本を見せた。

『飲めばやみつき!甘くて体にとっても良いひやしあめ。喉にも優しくお財布にも優しいぃ』

ラフ画を見たムーラン氏は、「あんたにとってウチのお茶は特別なモノだったかい?」と聞いて来た。

恐らく自分たちが作っているお茶が弁当よりも優秀な商品になるとは思わなかったのだろう。

「はい、とても美味しいですし、しょうがが入っているのですっきりした甘さで、飲んだ後、体がポカポカしてきます。ご婦人方は体を冷やすといけないらしく、特に子供やご婦人方をターゲットに売り出せば、売れると思います」

「しかし、ウチはお弁当屋だからなぁ・・・・」

「ムーランさん。私どもは今回お弁当の広告よりお茶、つまり冷やし飴を前面に売り出された方が売り上げが伸びると思っております。お弁当だと様々な材料を仕入れ、売れ残りがあればそれはお金になりません。たくさんのおかずが入ったお弁当ではなく、パンに具材を挟んだモノだけにすれば材料費は抑えられますが、それだと見栄えの良いコンビニやホテルの食事や弁当があれば、お客さんはそちらを手に取りますよね?」

「そうなんだよ。売れないと仕入ればっかりに金が掛かってしまって、そろそろこの事業から手を引こうかって家族でも話していた所なんだ」

私が思っていた通りの方向に話が進んで行きます。

「ムーランさん、この際思い切ってお弁当はやめて冷やし飴だけにされてはどうですか?その代わり大量に作って、鉄道などを使いコンビニで売って貰うのです。もちろんコンビニでは他の飲み物も売られていますが、そこはウチの新聞に広告を打ってもらって全国規模で展開すれば安い商品でも大量に売れ、可成りの収入になると思うんですがいかがですか?もちろん、私は神ではないので必ず売れるとはお約束は出来かねますが、一度試しに駅などで冷やし飴を売ってみて反応を見られたらどうですか?後、コンビニにも商談を持ち掛けてみると良いですよ。向こうも商売なので売れると思ったら契約してくれるはずです」

「ほほう。デルさんだったかな?色々と案をありがとうよ。でも、それで売れるなら広告は打たなくても良いんじゃないか?」

「いえいえ、大量に生産したものを全国規模で売りさばくなら、ウチの広告を使った方が効果がありますよ。例えばコンビニでお弁当と飲み物を買おうとして、こういった商品がある事を知らない人たちはそもそもそこにある事を知らないので、買う事はありません。でも名前をしっていたら試しに一回買ってみようか?おお、美味しいな、安いな、確か体にも良いんだったよな?なら、次もこれにするかとなる訳です」

「う~ん」

「取り敢えず、まずは冷やし飴にムーラン商店さんで商品名を付け、ご自分たちで駅などの近くで販売してみてお客様たちの感触を確かめみてはいかがですか?それで売れる!と思われたなら、是非ウチの新聞に広告をお願いします」

その1か月半後、ウチの新聞にムーラン印の冷やし飴が広告として載った。