作品タイトル不明
ナサ―ル坊ちゃまの夏休み②
昨日の夜は1番上の階にある食堂で暮れなずむ湖を見ながら、この旅の間中食べている様な美味しい料理が出たんだ。
しかも、お皿が馬車の形だった!すごい!!
隣の席の子供が食べ終わった後、馬車のお皿をひっくり返していたので、僕も食べ終わってひっくり返したんだ。
それを見てお母様が怒ったけど、でもね、すごいんだよ!
車軸とかいろんな物が分かる様になっていてね、僕は馬車の下側を見た事は無かったんだけど、車軸とかこうなってるんだなぁって初めて分かってドキドキしたんだよ。
今度馬車に乗る前にちゃんと確認してみたくなったんだ。
そして今朝、起きたら昨日のロビィって所が朝食会場になっていて、ズラっと料理が並んでいたんだ。
各自で好きな物を取って食べていいらしいんだけれど、ウチはリリーたちが大きなお皿の上に、ちょっとずつ色んなお料理を載せて持って来てくれた。
僕はベーコンと目玉焼き、ふわふわの食パンっていう白くて鍵穴の形のパンを軽く炙ったのが気に入った。
お母様とお姉様はヨーグルトって言うのも好きって言って、山盛りのカットフルーツの上にドバドバ掛けていたよ。
飲み物もたくさんの種類があったんだけど、僕は昨日のバナナミルクがとぉぉっても美味しかったから、今朝はイチゴミルクって言うのを頼んだんだ。
これもとぉぉぉぉぉっても美味しかった。
お父様も「ひと昔前は、旅行に出る度に泊まる宿もソコソコのしかなかったし、館に居る時程美味しい物は期待できなかったが、今や旅行に出た方が色んな意味で豪勢だな」と満足そうにされていた。
今回は家族で初めての旅行なんだ。
これまではお父様とお母様だけで旅行されていたから、お兄様たちもお姉様も今回はとっても興奮しているんだ。
みんな初めての旅行だもんね。
何が見れるか、何が起こるかワクワクだよね。
お母様はエステって言うのがあるので午前中はメイドのマリリンとホテルに残るって言って、お母様以外の皆で定期便の馬車に乗ってテーマパークって言う所へ行ったんだ。
で、今、エントランスを通って中に入ったら、外国の建物がいっぱいで、その奥に山がいくつも連なった様な形の木枠がどーんと目の前に広がっていたんだ。
それを見てお兄様たちが「うおぉぉぉぉ」って叫び声を上げて、奥に向かって走っていったんだ。
サムネが足の速いお兄様2人に付き添って、ガビィが父様に、リリーがお姉様と僕にくっついて園内を回る事になったんだ。
お兄様2人は、まっすぐ鉄道のお化けみたいな物に走って行ったけど、あれには僕も乗ってみたい。
あ、今、「ガーっ」って、箱が何個も連なったのに乗っかった人たちが「「きゃぁぁー!」」とか楽しそうな声を上げて右から左へ移動して行った。
「お姉様、僕もアレに乗りたい。急いで下さい」とお願いしたんだけど、「えええ?私はあれ、怖くて乗りたくないわ」って言うんだもの。
僕はとぉっても焦っちゃった。
だってお兄様たちは絶対アレに乗ると思うんだ。
僕も一緒に乗りたかったんだけど、お兄様たちの足は僕よりも早いから一緒にあっちこっちを見るのは無理なんだ。
「お坊ちゃま、まずはゆっくり歩いてあそこまで行きましょう。お嬢様も乗られなくても近くでアレはご覧になりたいんじゃないんですか?」とリリーがお姉様をあのお化け鉄道へ行く様にうまい具合に誘導してくれた。
長い列ができていて、お兄様たちは前から6人目の所に立っているけど、その後ろには20人くらいが待っているんだ。
それでもいい。
多少待つくらい何でもないと列の最後に並ぼうとしたら、リリーが「ナサールお坊ちゃま、こちらの門を潜ってください」と奇妙な動物の絵が描いてある板の真ん中に空いた空間を潜る様に言われた。
門はまだちょっと僕の背より高い所にあったので問題無く潜れたんだけど、それを見てスタッフのお兄さんが、「坊ちゃま、ごめんね。この門を潜れた子供はまだこのアトラクションには乗れないんだよ。また今度、もうちょっと大きくなったら乗ってね」と言ってきた。
「ガーーーーン!」
なんでだぁ?
僕、アレ、乗りたいよ!
棒がくっついた飴をくれたけど、僕は飴よりあっちのがいいんだ。
「お坊ちゃま、あっちに空高くまで上がれるのがありますよ。あっちへ行ってみませんか?」ってリリーがお姉様と僕を連れて行く。
さっきまで鉄道お化けに乗れなくてとっても悲しかったんだけど、今目の前にある籠がぐるぐる回るのがとっても大きくて、僕はあんぐり口を開けて見つめちゃった。
そんでもって、一番てっぺんがどれくらいの高さだろうと思って上を見て、鉄道お化けの事はすっかり忘れちゃったんだ。
こっちの風車みたいなのもいっぱい人が並んで列になっていたから、僕たち3人は列の最後に並んだよ。
列の横にはカラフルなポスターがいっぱい並んでいて、この園内の地図と一緒に、どんな物で遊べるか、何を食べれるかが分かる様になってたんだ。
列を進んで前に行くと、次のポスターが待っている感じで、待っている間も飽きる事なく、いろんなポスターを見て楽しんだんだ。
で、ところどころ木の扉の付いたポスターがあって、じゃんけんが出来る様になっているのも楽しかった。
僕はチョキにして、お姉様はグーにしたら、リリーが扉を開けてくれて、そこにはパーの絵が描かれたポスターがあったんだ。僕の勝ちだ!
「これはあっちこっちのアトラクションで待つ時に同じポスターばかりだと飽きるのを防ぐためですかねぇ」ってリリーが言ってたよ。
そうこうしていると僕たちの順番になって、籠の中に乗せてもらった。
僕たちの籠は綺麗な緑色、隣の籠は黄色だし、その次のはオレンジ色だ。
とってもカラフルで見てるだけでワクワクだよ。
ゆっくりと回っているんだけど段々高い所まで来て、遠くが見れる。
昨日の夜泊まったホテルと湖が見えるよ。
あのホテルって広い庭園が付いているんだなぁ。
そしてホテルだけじゃなくって、このテーマパーク全体が見れるんだ。
地上で見ると外国の木と藁で作った建物ばっかりだったんだけど、上から見下ろすと屋根にその建物が何か分かる様に文字が書いてあるんだ。
僕はまだ全部の文字を覚えてないから、どの建物が何なのか分からないけれど、お姉様はあそこは『悪霊の館』、あっちは『レストラン』、その左は『メリーゴーランド』って書いてあるって言ってた。
それに、この園の端っこに動物がちょこちょこ居る広場も見えるんだよ。
あ、あれって羊じゃないの?
館にある絵本で見た事あるよ。
早く、羊に触ってみたい。
上にいた時は、下にある建物に早く行って、色々遊びたいって思っていたけれど、僕たちの籠が段々地面に近づいて来たら、この空の旅がもう終わっちゃうと残念な気持ちになっちゃった。
そう言ったら、リリーが「お坊ちゃま。ここには3日間泊まりますので、明日また乗ったら良いんですよ」って教えてくれた。
やったーー!
明日も乗るんだね。
なら、今は動物の所へ行こう!