作品タイトル不明
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「こちらでございます」
フロントがベルボーイに言いつけてこの貸会議室に同窓会のメンバーがホテルに到着する度に連れて来てくれる。
「ああ、どうもありがとう」
最後に貸会議室に到着したのはヘルマン様だった。
「みんな久し振り!」
「「「お久し振りです」」」
「おおお!すごく綺麗な会議室ですね。貴族館の一室って言われても頷いてしまうくらい素晴らしいです」
「ありがとうございます、ヘルマン様。さぁ、お席にどうぞ」とテーブルに案内して、早速アミューズからサーブしてもらう。
ヘルマン様だけカクテルで、残りのみんなの所には檸檬水が注がれた。
「相変わらず美味しいなぁ」
「水がすっきりしている」
「みんな元気だった?」
「最近、王都へ来る事はあった?」
「うわ~。このお皿、とぉっても美味しい!」
「リアは王都に住んでる割には殆ど顔を見なかったぞ」
「この後、あややクラブの部室を見学するって本当?」
皆思い思いに会話を始め、それは全員を巻き込んでの場合もあれば、隣の席の人、向かいの席の人とだったりと、そりゃあもう自由に会話と食事を楽しんだ。
「リア、今度でいいからちょっと時間を取って欲しい」とボブがニヤニヤして言って来たけれど、今は久し振りにみんなで顔を合わせているのだから、誰と誰が話していると言うよりも、全員がその瞬間誰と話しているのか分からないくらい思い思いの事を声に出しているカオスを楽しんでいた。もちろん、私もね。
漸くデザートになる頃、ヘルマン様が私に「ところで、なんでモンテベルデーノには何時まで経っても鉄道が敷かれないのでしょうか?」と聞いて来た。
周りで思い思いにしゃべっていたみんなもピタリと会話が止まり、私の返事を固唾を飲んで見守っている。
みんなも同窓会にヘルマン様が出席すると聞いて、この話題が出るだろうなぁって思っていた事が丸わかりだよ。
「父が、モンテベルデ伯には大変お世話になったので、是非にも敷設したいと要望を出しているのですが、鉄道に関しては私だけではなく大公様の精鋭全員で商会を立ち上げ管理しておりますので、経営会議での審査を待っての事になるんです」
「そうか・・・・。ウチの町はそれなりに大きいし、海運の要所でもあるので、是非お願いしたいんだよ」
ヘルマン様も確約が欲しいらしく、後に引かない構えなんだよね。
今の所、確約は出来ませんが、善処しますとしか答えられなかった。
モンテベルデーノまで鉄道を敷設する事自体は問題ないんだけれど、件の侯爵様の賭場があるからねぇ。
あそこへ鉄道で行ける様になると、ウチのカジノの客が流れかねないので今までは敷設を見送ってたんだよねぇ。
少し雰囲気が固くなってしまったのを気にしてか、フェリーペが「鉄道と言えばナンプレ、あれ、面白いな」と話題を変えて来た。
「そうそう、今回の移動では私も遊んでみたよ。でも、もう少し種類があると嬉しいですね」とヘルマン様もフェリーペの話題転換に乗ってくれた。
「もっといろんな問題を載せないの?」
と言うことは、勇者様もナンプレとかお絵描きロジックで遊んだ事があるのかな?
「書き写しはしていなくて、判子の様にして刷っているので普通の本よりは大量生産できるんだけれど、今売れ筋なので先に出来ている雑誌と同じモノを刷るのが優先なのよ」
「え?だったら錬金術の装置で複製すれば?」
なんですとぉ?
フェリーペの案に、言われて見ればそうだな!と思ってしまった。
判子を使ってもそれは手工業の域を出ていない。
それにいくら数字が揃う様にと木枠の中に並べてから紙に押印しても、人のやる事だから判子の位置がズレてし数枚はお蔵入りしている紙とかもありそうだ。
錬金術の装置を使えばそれが一気に解消されるけれど・・・・。
「問題を作っているのが俺の秘書なんだけれど、問題を考えるのもそんなに楽な事じゃないみたいだぞ」と横からランビットが助け舟を出してくれる。
「それに印刷はプロの工房に頼んでいるからね。私たちが作ってるんじゃないのよ」とちょこっと言い訳を言ってみた。
でも書房では今まで本は手書きの写しだったんだよね。
それだけ書籍が高価な商品で、大量に作っても売れない事が前提だったからしょうがないと言えばしょうがないんだけどね。
ヘルマン様はそれを聞いてじっと考え込んだ様だ。
しばらくすると、「パズルの問題なんだけれど、ウチの領にそういうのを考えるのが得意なのが2人程いるんだが、ウチで問題を作ったら買ってもらえるかな?」と言い出した。
え!?問題を考えらえる人が居るなら、問題を買うより雇いたいよ。
だって絶対その方が安上がりだし・・・・。
そう言ったら、「雇ってもらうのはいいんだけど、ウチとしてはモンテベルデーノまで鉄道を敷いてもらいたいから、彼らをウチの領都から動かしたくないんだ」とニヤリと笑う。
そうか、ヘルマン様はどうしても今日、鉄道の敷設を決めたいのね。
「ヘルマン様」
「ん?」
「本当にそのお2人がパズルの問題を作る能力を有しているのならば、そしてウチに勤めて頂けるなら、鉄道のお話は私が責任を持って進めたいと思います。もちろん、先ほどご説明した通り、私の一存では決める事は出来ませんが、父や私が強く押せば敷設の可能性は高まると思います。いかがですか?」
ニヤリと笑ったヘルマン様。
「魚心あれば水心あり。そういう事であれば、私も例の2人をご紹介致しますよ」
「ありがとうございます」
これは早期にパズル作成部署を立ち上げないとね。
錬金術の装置を使って印刷するかどうかは、マルコ書房さんとも相談しないとなので一応はペンディングだけれど、まずはいろんな問題を考えてくれる人を集めるのが先だね。
食事も終わったので、皆でウチのホテルの中を見学し、その足で学園まで行き、あややクラブの部室が今、どの様に使われているのか見に行く事になった。
「うわぁ。これは広いねぇ。お貴族様向け?」
何て勇者様がウチのスイートを見学して無邪気にはしゃいでいる。
「う~ん。これはホテルもモンテベルデーノに建てて欲しいなぁ」なんてヘルマン様が言ってるけど、聞こえないふりで乗り切ろう!
「調理場ってこんなに広いんだぁ」とフェリーペが驚けば、「ああ、あれはウチの工房で作った物だ」とフライヤー等を指さしてボブは嬉しそう。
ボブがこっちを振り返って「リア、さっきも言ったけど、前に出されていた宿題。一つクリアしたよ」と言って来た。
どの宿題だろう?
「今日は持って来なかったけど、近い内にウチの工房に来て欲しい」と言って来たので、近い内にスイカズラ工房へ顔を出さないとね。だって無口なボブが繰り返し来いって言うんだもの。相当な事だと思うよ。
普段はランビットが橋渡し役なんだけれど、私に直々に来いと言う事は大きな宿題をクリアしたんだと思う。
なんだろう?