作品タイトル不明
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「まだ正式発表されていないから皆には言ってなかったけど、アディはアドリエンヌと婚約することになったんだ」
「「「「ええええ!?」」」」
皆、突然の事で緑のマスクを被ったオジサンの様に顎がグーンと外れて床に落ちるくらいまでの驚愕の表情になった。
もちろん、私もな!
「正式にはこの夏休みに発表になる。今は国王の許可を申請している所だ」
闇王様が言うには貴族の、それも貴族家を継ぐ者の婚約には王家の承認がいるらしく、今、闇王様の父親がいろいろと手続きを進めている最中なのだそうだ。
「おめでとうございます」
勇者様がまっさきにお祝いを述べた。
う、うん。まずはお祝いだよね。
「「「おめでとうございます」」」
ザ平民ズが慌ててお祝いを述べる。
私は闇王様の淡い恋心はメグたんの方を向いているとばっかり思っていたので、思わず闇王様の顔をガン見しちゃったよ。
でも、闇王様はいつもの表情で、アドリエンヌ様をエスコートする為に彼女の右手を軽く自分の左腕に載せ、クラブの皆を引率する様に後ろにゾロゾロ部員を引き連れて部室を出た。
アドリエンヌ様は頬を若干赤くして、目がキラキラしたまま闇王様のエスコートを受け入れている。
やっぱりアドリエンヌ様は闇王様の事が好きだったのね。
そう言えばアドリエンヌ様のドレスはパールホワイトに闇王様の髪と目の色の黒の大きなリボン!
なるほど!!!共布でリボンを作らなかったのにはこういう事情が隠されていたのねっ。はう。
「貴族の婚約や結婚は政略だからね。まぁ、アディの御両親は世紀の大恋愛だったけれど、普通の貴族に恋愛結婚っていうのはまずないんだよ」と、いつの間にか私のすぐ後ろに来ていたセシリオ様が耳元で囁いた。
うへぇ、何でその解説を私に?
ん?と言うことは、セシリオ様も闇王様の気持ちは勇者様にあったって思ってたってこと?でも政略結婚だから貴族としてアドリエンヌ様との婚約を受け入れたってこと?
だとしたら何か悲しいね。
こんな年で既に結婚相手を親に決められてって・・・・でも、この世界ではこれが標準なんだよね?
平民は貴族に比べれば結婚は自由裁量の部分が多いけど、それは結婚しても別に財産が増えたり権力が強化される事がないから許されているだけで、豪商の子なんかは親の言うままに結婚する事が多いらしいからね。
はぁ~。
私は思わずメグたんの方を見たけど、彼女はツルンとしている。
そうだよね。
勇者様は別に闇王様に恋してなかったものね。
反対にアドリエンヌ様はあややクラブに入部する前は闇王様に御執心だったけれど、クラブに入ったらガーデニングの方に気が行っていたので、もしかしたら彼女が闇王様に御執心だったのは親から彼を射止める様にとか圧が掛かっていたか何かで彼女の気持ちの表れではないのかな?なんて思っていたのだよ。
う~む。謎が多い。
どっちにしても婚約者になる予定の女の子と一緒のダンスパーティならば、当然エスコートしなくちゃいけないよね。
しかし、セシリオ様って曲者だよね。
親友の気持ちに気付いていながら特に彼の恋が成就する様助ける事もせず、淡々と見守っていただけな疑い濃厚だしね、婚約が決まったらさらっとそれを当たり前の様に受け入れているし。
いやいや、それさえも私の予想だってだけで、実際の所は分からんけどな。
お貴族様って言うのは、子供の内から色んな事を呑み込まなくちゃいけないのね。
アドリエンヌ様が闇王様に恋をしているなら、その方が良い。
結婚するカップルのせめて一方だけでも本当の恋心があれば、温かい家庭を築けるのでは?
いつも一緒に居たら、相手にも恋心も生まれてくるかもしれないしね。
私としてはお二人が末永くお幸せにって祈るしかないんだよね。
はぁ~、しかし勇者様が闇王様に恋してなくって良かったよ。
これ大事!
だって、私としては親友の恋が悲恋だったら嫌だもの。
ダンスパーティの会場は学食なのだが、綺麗に飾り付けられていた。
緞子の様な布をカーテンの様にあっちこっちの窓の前に垂らされ、たくさんのランプや蝋燭で光源を確保して、会場の一角には音楽クラブの生徒たちが手に手に楽器を手に椅子に座りスタンバイしていた。
開演まで後10分を切った事もあり、既に全校生徒が会場に入っている様で人口密度がとっても高い。
女子は色とりどりのドレスを着ており、平民の子の中にはいつもの白い服に花を飾っただけの子もいるけれど、髪をアップにしたり、巻いたりと綺麗になる努力が見て取れる。
学園外から婚約者を連れて来てる人も結構いるのか、学生だけではない人数だった。
「こんばんは、みなさん。今夜はイベントクラブ主催のダンスパーティへご参加頂き、ありがとうございます。音楽クラブのみなさんが日頃練習されている曲をたくさん披露して下さる予定です。美しい女性と踊る機会を逃す事の無い様、意中の方がいらっしゃる方は恥ずかしがらずにお相手にお声をお掛け下さい。今夜がみなさんにとって美しい夜になりますように」
皇子の挨拶が終ると直ぐに音楽クラブがワルツ曲を演奏し出した。
皇子はディアナ様ではなく別の貴族の女性の手を取って、フロアの真ん中まで進み出た。
ん?どうしてお相手がディアナ様ではないのだろう?
皇子は、銀髪を綺麗にアップにし花や宝石、リボンで美しく飾られたパートナーにキラキラしい笑顔を向け、パートナーさんも初々しい笑顔を皇子に向けた。
二人がお互いの腰や肩に手を回してダンスを踊り始めると、最初は固唾を呑んで見守っていた学生たちも自分のパートナーの手を取り、フロアへ出て踊り始めた。
「リア、どうする?人が多い時に踊った方が目立たないぞ」とフェリーペが手を差し伸べてくれた。
私は無言で頷き、フェリーペが差し出してくれた手に自分の手を乗せ、フロアへ移動した。
私たちに続いてボブにエスコートされたメグたんが隣に立ち、踊り出した。
私は相変わらずフェリーペの足を何度も踏みつけ、1曲踊っただけで申し訳なくなった。
でも、いつもの事さとフェリーペはニッコリ笑ってくれた。
しかし踊り終ってランビットがいる所へ戻る時、若干足を引いていたのを私は知っている・・・・。
ごめん、フェリーペ!