作品タイトル不明
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まだあややクラブでもトランプで遊び始めたばかりの週末、大公様から許可を頂いて大公館へ。
父さんも一緒に来てもらった。
「こんにちは。今日はお時間を頂いてありがとうございます」と大公様とダンテスさんへ挨拶をすると、応接間のソファーを勧められた。
茶菓子とお茶が配られ、一息ついたところで、持参した計画書を手渡した。
ロードマップの写しも入っている。
最初の部分で高級ホテル全体での共通事項を、中間では各ホテル別の内容を、最後の部分で職員の研修について纏めてあり、結構な枚数になっている。
「スティーブ様ご一家がいずれかの村で就業して頂けるとの事で、王都での調理人の研修についてもご尽力頂けると言うのは大変ありがたいことです。こちらの方でも既にある程度の職員候補との面談は終わっており、最終面談を夏休み中にアウレリア様とお父様に同席頂いて決めたいと思っております」
ダンテスさんも手元のメモ用紙を見ながら、必要な情報を共有してくれる。
「給仕等は当館だけでなく、寄子の貴族家にメイドという形で派遣しており、貴族に対応できる様に仕込んでもらっている最中です。最終面談で落とした者も、いずれかの貴族家を紹介する事になっておりますので、基準に達していないと思われる者は最終面談で遠慮なく切って頂いて結構でございます」
コンシェルジュという職についての知識共有と、そのサービスの為に何が必要なのかについてこちらからも説明したりと、結構な時間を掛けて話し合った。
夏休み中の視察旅行は、一部大公様も一緒に移動して下さることになった。
理由は、上級貴族の旅とはどんな物なのかを体感して欲しいからとのこと。
カジノやカードルームの説明の為、持って来たトランプやダーツ、ルーレットを会議室の方へ用意してもらった。
「カジノというのは現金ではなく、こういったカラフルなチップを使ってカードゲームやルーレットを楽しんでもらう場です。ある意味、お金を賭けるのでお客様から見ても金儲けの場でもあります。プロであるディーラーとお客が遊び、かけ金はお客が決めるシステムです。カードゲームはお客が勝てば賭け金は基本2倍になって戻ってきますし、ディーラーが勝てば賭け金は全部ディーラー、つまり高級ホテルの物になります」
「ほぉ」
「では、まずルーレットで遊んでみましょう。ルーレットを回し、このたくさんある溝のどこかにボールが入るまでに賭けを張り、結果を待ちます。賭け方は3種類です。これは今回運びやすい様に紙に書いて持ってきましたが、本物は高級な木のテーブルの上にちゃんと描き込んだり、彫りこんだ物を使います。高級感が必要ですしね」
畳んで持って来たチップを置くためのレイアウトをテーブルの上に広げた。
本当のルーレットは結構複雑なベットの仕方がある様だけれど、私自身がカジノへ行った事ないから知識がないのと、最初から複雑にする必要が無いので、まずは単純な賭け方で始めさせてもらう事にしたのだ。
さて、説明といきますか。
「で、ルーレットには二つだけ白い溝がありますが、残りの溝は全部赤と黒に分かれており、こちらの赤と黒と描かれている枡にチップを置くと、ボールが赤い溝に入った時は、赤の枡を選んでいる人だけが勝ちです。こちらの偶数・奇数の枡もボールの入った溝の外側に書かれている数が偶数か奇数かで勝者が決まります。こちらの数字が一つだけ書いてある枡はピンポイントにボールが入った溝に書かれた数とピッタリ同じな人だけ勝ちです」
「それだと、奇数・偶数や赤と黒にはった方が勝率が高いと思うが?」
大公様がそう思うのも当たり前だ。
「倍率が違うのです。偶数・奇数、赤と黒はお客が勝ったとしても高々2倍。ピンポイントの数字の方は15倍です」
「ほぉ、それはすごい倍率だのぉ」
「全部で38もある溝の一つしか当たりではないので、めったに勝者にはなれません。だから、それでもベット、つまり賭けたいと思わせるために15倍なんです」
「ほぉぉ。ところで、この白い溝2つにボールが入った時は、赤か黒に掛けてる者はどうなるんじゃ?」
「負けるだけです」
「ほぉ、面白いな」
「では、早速やってみますか?」と、3色のチップを大公様、ダンテスさん、父さんに渡し、私がディーラーを務めた。
「面白い!これは高級ホテルの設備にせず、独立しても十分採算が取れるんじゃないか?」
「大公様、次にご紹介するトランプ等もそうなんですが、遊び始めたらとても楽しくなると思います。更にお金を賭けると余計に熱くなり、他の事をやりたくなくなる人も出てくるかもしれません。それくらい中毒性があるんです。なので、数年はどれも売らず、ウチの高級ホテルの中だけでの営業にしようと思っています。それによって宿泊客も増えるでしょうしね。で、これらの遊具は全て、私の名前で錬金術の特許を取っておりますので、誰も真似が出来ません」
「すごいですね、アウレリア様。ちゃんと自身の利益を守る為に、アイデアだけでなく、必要な手続き等も既に取得済みなんですね。そのお年で、そこまで思い至る事が出来るのは驚異でもあります。本当にスゴイお方です」
ダンテスさんがべた褒めしてくれるので、ちょっと照れちゃうよ。
続いてトランプで遊び、カードルームの意味を実地で体験してもらった。
「これは旅自体が変わってしまうな」とは、大公様の談だ。
「そうですね、美味しい食事だけでなく、カードゲームをしたり、カジノで遊びたいがために高級ホテルまで旅する者も出てくるんじゃないでしょうか?」
「ダンテス、こんな楽しみがあり、美味しい料理が楽しめるとあっては、そうなるであろうなぁ」
「大公様、左様でございますね。しかし・・・・末恐ろしいと言うか・・・・ゴニョゴニョ」
私が提出した企画書や持って来た遊具についても大まかに理解をしてもらい、このまま進める様にという指示を頂いて帰路についた。
大公館ではボーっとしていた父さんが、帰りの馬車の中で、「お前は凄い凄いと思っていたけど、本当に凄い子なんだな」と寂しそうに頭を撫でてくれたのが印象的だった。
今まで目立たない様にするために、そして何かで足を引っ張られない様に、控えめに行動し、大人や貴族への言葉遣いは極力丁寧にしていたのだ。
でも、父さんがこんな風に私の事を認識しているってことは色々バレてるってことかも。
気味の悪い子って思われたんじゃないのかと心配になり、こっそり父さんの顔を覗いたら、私の不安げな顔を見た父さんは安心させる様に微笑んで更に私の頭を優しく撫でてくれた。
これからは高級ホテルの建設や立ち上げで、色々抑えていた部分を解放せざるを得ない。
スキルなんかも全開しちゃうと思うし・・・・。
そうなると大人を圧倒して呑み込む様なやり取りもしなければならない。
ああ、神様!父さんたちに嫌われる事の無い様、お願いしますっ。