作品タイトル不明
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「酷い!」
勇者様もアドリエンヌ様の事が好きらしく、彼女以上に怒りを露わにしている。
それは私も同じで、嫌味だけで無く、さらっと脅迫めいた事まで言う様な人と一緒に何かをする事は出来ないっと息巻いた所で、はたと思い当たった。
私が所属しているクラブ、あややクラブは闇王様を中心にみんなが纏まっており、イベントの企画運営等を通して固い結束が既に出来上がっている。
もう一つの錬金術クラブの方は皆自分のやりたい事を明確に目標として持っている人ばかりで、良い意味で職人気質の生徒が集まっている。
だから、人間関係に翻弄される事は無かった。
でも、前世や前々世では人間関係で辛い思いをした事は何度もあった。
特に前世では、問題山積みで校内でも有名だったテニス部に所属していたから、大勢の女子部員で醸し出された一種のネチネチ感には結構苦労した覚えがある。
全員がネチネチしていなくても上級生に数人そういう風な人がいれば、下級生はその影響をモロに受けるのだ。
ありがたい事に現世では今の所そう言った問題は起きていなかった。
これって本当は凄く幸運な事だと思う。
私たち平民が貴族であるディアナ様や、ましてや他国の皇族であるサムエル様に仕返しなんて出来るわけが無い。
でも、この出来事であややクラブの皆の中には、鳥人コンテストの時も必要最低限しか彼ら二人と関係を持ちたくないし、大事な事は一切教えてやりたくないという共通認識が生まれてしまった。
「フェリーペ、1階の掲示板の大公様の宿題、ロードマップはちゃんと外したか?」
「はい。セシリオ様」
「ウチの部員に大公様と繋がりのある者がいる事や、将来国を発展させるであろう高級ホテル事業を他国の者に教えてやる義理はないからな。良くやった!」
「セシリオ様が気づいて、フェリーペがそれを理解して行動に移してくれて助かりました。私はセシリオ様の目線が何を指しているのか気付きもしませんでしたから・・・・」
本当に目線の意図を汲む事が出来なかったんだよね。
フェリーペはすごいよ。
「まぁ、いい。フェリーペが気づいてくれたから大事に至らずに済んだんだしな」
セシリオ様の手放しの褒めようにフェリーペが照れながら頭を掻いた。
「それはそうとディアナが脅しを実行した時の対応を考えなければいけないな」
闇王様の一言でみんなの背筋がピンと伸びた。
「取り敢えずは下に降りておやつの時間にしよう」
闇王様が率先して階段を降りるのに、全員がゾロゾロと金魚のなんたらの様について行った。
こんな日に限ってガスペール先生がいないのだが、もしかして事前にサムエル様が入部を希望し、部室を訪ねてくると知っていたのでは?なんて思っていたら、全く同じ事をフェリーペが言いだした。
「おやつの時間になってもウチの担任が来ていないのは事前に皇子の意向を察知してたんじゃないのか?もし、少しでも早く俺たちに伝えてくれていれば、アドリエンヌ様もテラスにいなかっただろうに。あんのやろうぉぉ!」
「まぁ、そう言うなよ」とジャストタイミングでガスペール先生が部室に入室して来た。
「俺が察知できたのは、あいつらがここへ来る事を決めたその時で、すぐにここへ向けて移動し始めたので知らせる時間がなかったんだよ」と悪びれた所が皆無なのがこの人のすごい所だ。
まぁ、悪い意味でだけどね。
「先生には悪いが、今日はおやつは諦めてくれ。みんな事前の知らせが無かった事で陥れられたアドリエンヌの状況に怒りしか感じていないんだ。先生に実際に知らせるための時間が無かったとしても、ご自分はあの災禍からは逃れている訳だしね」と、食材を提供してくれている闇王様からそう言われると、流石のガスペール先生もおやつは諦めるだろう、そう思っていた時が私にもありました・・・・。
先生は私たちの想像の遥か上を行く感じで「まぁ、そう言うなよ。この問題から抜け出せる妙案を提供してやるからさぁ」とか宣った。
「その案が本当の妙案であればおやつを食べてもいいですけど、現実性のない案だったら今後ずっとおやつを諦めてもらいますよ」
フェリーペの脅しが入った低い声にも、「大丈夫、大丈夫」と呑気に返し、ダイニングテーブルの席に座った。
「アドルフォ君。まずは玄関前に立っている使用人の片方に庭の手入れの仕事をさせてくれ。そしてその仕事は以前からずっとやっていると言わせるのだ。そして、アドリエンヌ君」
アドリエンヌ様は藁にも縋る様な目つきでガスペール先生を見た。
「君はみんなの手を借りて、テラスにある植物の押し花をたくさん作りなさい。出来た物から図書館へ行って詳細を調べ、押し花の用紙の端に色々書き込み、一冊に綴りなさい」
「押し花をしながら植物について調べているという体にするのですね」と理解の早い闇王様。
ガスペール先生は頷くが、それでは今の時期の花しか押し花にできないではないか。
アドリエンヌ様も同じ様に思ったらしく、そうガスペール先生に問うと「馬鹿だなぁ。ここには王都で唯一の温室持ちがいるんだぜ。そこから季節外れの花を提供してもらえばいいじゃないか」と言い出した。
確かに、それだと秋や春の花もある程度集まる。
私がアドリエンヌ様に向かって頷くと、みんなも頷き返してくれた。
行ける!これだ!
「だがなぁ、折角フローリストガーデンの持ち主がいるのに、このクラブのメンバー全員でお呼ばれした事がないのも問題だから、この週末は俺も含めて全員を招待してくれよ。それでその温室の中でどの花を押し花にするか決めようぜ」なんて宣っている顎鬚オヤジは無視無視!
なんて思っていたら、ウチの店大好き少年のボブが「それいいですね!」なんて言い出した。
だぁかぁらぁ、王宮晩餐会以降、ウチの店に空いてるテーブルは無いざぁますっ。