作品タイトル不明
2
実は夏休みにゴンスンデへ行く前、大公様から呼び出しがあって、大きな宿題を貰ってしまったのだ。
その宿題というのは、大公様が良く行かれる街と王都との街道の間に貴族用の宿を作って欲しいというモノだった。
「もちろん、お前はまだ学園で3年も勉強をせにゃならん。だから今直ぐでなくて良い。だが、お前が卒園する頃にはフローリストガーデン並みの料理を出す貴族専用の豪奢な宿を数軒建てて欲しい」
あまりに大きな宿題なので、どう答えて良いか分からず固まっていると、「建物もそうじゃが、ある程度の教養を備えた使用人が複数必要となるじゃろう。お前が学園に通っている間に、そういう人材を育てないといけないから、2~3年は必要じゃろうて。給仕や執事の様な役割をする使用人は儂の方で揃えるが、料理人はお前のところのフローリストガーデンできっちり修行させてやってくれ。もちろん、建物の建設費や最初の数年の人件費なども儂が持つし、事業が軌道に乗ったら、そっくりそのままお前に下げ渡してやるから本気で取り組んで欲しい。儂も年でのぅ、これだけ頻繁にあっちこっちの都市へ行くのは大変で、せめて宿や食事くらいは贅沢させて欲しいんじゃよ」
「はぁ・・・・」
「アウレリア様、そういう時にはちゃんとしたお返事をするものですよ」と大公家の執事、ダンテスに窘められた。
「は、はいっ。大公様」
「最初から完璧を求めなくてよいぞ。お前はフローリストガーデンを立ち上げた時もそうじゃが、学園でのイベントの企画力、運営力もある事が分かったからのぅ。これだけ仕事が出来る者がおるのじゃ、使わん手はないわい。それに今回のゴンスンデへの旅で、親戚の宿屋より高いグレードの宿屋がどれくらいか身をもって味わうじゃろう。それを参考に建物の大まかな造りとかも考えて来い」と、大きな大きな宿題が・・・・。
ああ、肩の荷が重い・・・・。
実際の建設の管理や使用人の教育等、実質の作業はダンテスさんがして下さるとの事だけど、とにかくアイデアを先に出せとのこと。
こんな小さな子のアイデアを実現するのは大人たちの仕事なのだそうだ。
なら、箱ものや宿の部分は大公様で、料理部門だけウチの店に頼めばいいのにと思っていたら、あややクラブの内装が秀逸なので、宿屋の方もお願いしたいとのこと。
ん?いつあややクラブの内装を見られたんだろう?謎じゃ。
あ、もしかして闇王様の実家がやってる私デザインのインテリアを購入されたとか?
内装とか建物とか考えるのを好きか嫌いかで言えば、好きなんだけどね。
でも、宿屋なんて自分で経営するとか思ってもみなかったから地球の高級ホテルを思い浮かべる事しかできないよ。
それより何より学園とウチの店の事だけで既にアップアップなんですけどぉ。
母さんのお腹も大分大きくなってきて、新しい家族が増える準備もあるしね。
2つのクラブに入っているので忙しいし、なんと言ってもあややクラブのイベント系の準備は楽しくもあるけど、大変なんだからぁ。
その上に大公様の宿題とか、ないわぁ~。
父さんにこの話しをしたら、一瞬顔が真っ青になったけど、「まだ年単位で時間の猶予はあるんだな。分かった、お前の思う通りの宿屋をアイデアとして出してごらん。庭付きにするなら、庭は私が考えよう。実際に建てたり、使用人を教育したり動かしたりするのを大公様の方でして頂けるなら、責任は最小限で済むな。事業が軌道に乗った後、それらの宿を下賜くださるとのことだが、それは受け入れるなり辞退するなりは、3~4年後に考えれば済みそうだな」と、最後には「頑張りなさい」と頭を撫でて会話は終わった。
う~ん、そこは親と言う事で大公様に物申して欲しかったな、父さん。
まぁ、平民が貴族に盾突くなんて出来ないんだけどねぇ。
まずはダンテスさんに頼んで、最小限、大公様が宿を欲しいと思っていらっしゃる街と村をリストアップしてもらい、大まかな地図やその土地の特徴についてリストを作ってもらう事にしたのだが、新学期そうそう寮の方に届けられた。
そして各候補地の特徴について、気候やら、人口、特産品やら、経済規模等の特徴を細かく纏めたレポートも添付されていた。
ダンテスさん、有能すぎ!
そちらの仕事が早いと、こちらも作業を進めなくちゃいけなくなるジャマイカっ!!あうっ。
とりあえず、夕食の後にでもじっくり拝見させてもらおう。
今は、新学期が始まったばかりで新入生のクラブ入部に伴うアレヤコレヤがあったりするし、まずは自分の生活が落ち着いてからだね。
さて、新学期初日だからね。放課後はあややクラブへ行って飲茶を作るかぁ。
ん?久し振りに胡麻団子、食べたいなぁ。
甘くて香ばしくてもっちもち。
美味しいは正義なので、今日は胡麻団子だな。
闇王様はシュウマイとか餃子を思い浮かべてるかもしれないけど、胡麻団子ならアドリエンヌ様用に甘いお菓子を別途作らなくて良いので楽なのよね。
「リア~!」
フェリーペとボブがこっちへ向かって小走りでぐんぐん近づいてくる。
いつもの様に4人で学食で昼食を摂った後、メグと二人であややクラブの方へ向かって歩きつつ、大公様からの宿題について話していたのだ。
フェリーペがオスカル先輩と打ち合わせがあるというのに付き合ったボブたちとここで合流した形だ。
話の続きで大公様の宿題について二人にも説明した。
「お前も次から次へと色んな事が舞い込んでんな」
「・・・・」
「まぁ、何か思い付いたら俺たちもアイデアを出してやるからさぁ、元気出せよ」
こんな宿なら泊まりたいというアイデアを4人でじゃれ合う様に話し合いながら部室へ向かった。
新学期初日なのに、部室の前にはいつもの使用人2人が立っていた。
「こんにちは~」と挨拶を交わし部室の中へ。
するとザお貴族様ズは既に全員部室の中にいた。
ヘルマン様は卒園されたのでいらっしゃらない。
いつもとは違うのでちょっと変な感じだね。
この学園は入園式も卒園式も当事者である生徒と貴族の保護者だけが参加し、その他の在校生は参加しないのであややクラブで挨拶したのがヘルマン様を見た最後だ。
なんでそういう大事なお式に在校生が参加できないのか不思議だけど、この国では昔からそうなので、誰も不思議に思っていない様だ。
とりあえず胡麻団子作ろう!