軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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馬車の旅は歩かなくてよいのが利点だが、酷く揺れるのが欠点だ。

私は背嚢の中に着替えの服を詰め込めるだけ詰め込み、それを座布団にしてなんとか尾骶骨を守った。

ミルコたちは慣れている様ではあったが、途中で立ち上がったり、休憩の度に馬車から降りて体を動かしたりしていたので、彼らにとっても馬車の旅はキツイのだろう。

まぁ、今回は5歳児が一緒なので歩きでの移動は不可能だ。

尾骶骨は犠牲にしながらも体力的には楽な移動になっているのではないかと思う。

というか、後で聞いたら父さんが全員分の行きの馬車代を出してくれたそうだ。

ただ、帰りは『麦畑の誓』の面々は徒歩での移動となるらしい。

父さんも分限者じゃないので、往復の馬車代は出せなかったらしい。

行きだけでも私が楽な様に全員分の馬車代を出してくれて感謝だよ。

街道は舗装されておらず、剥き出しの土に深い轍の跡が刻まれており、それ故に余計に馬車が揺れるという悪循環だ。

この道なら現代日本でも4WDでなければ走れないし、クッションやサスペンションが効いていたとしても相当揺れたはず。

ましてや何のアブソーバーも付いていない木箱の様な馬車なら、何をか言わんやだ。

街道周りの風景は森があったり、野っぱらがあったり、荒野が広がったりと休憩の度に1日でいろんな風景が見られた。

途中にも街道を行く旅人相手に商売する店舗や食堂が数軒固まっている様な村とも呼べない小さな集落をいくつか見かけた。

トイレを使わせてもらうために、そこで飲み物を買う。

すると2時間後くらいにまたトイレに行きたくなる。

2時間移動する毎になんらかの集落があり、飲み屋か食堂が必ずある。

店の中を通らないとトイレには行けない作りになっているので、結局また飲み物を買うという、トイレ地獄が始まるのだ。

ついさっきも小休憩を取り、また馬上の人となったのだが、向かいに座っていたミルコが身を乗り出した。

「次に馬車がとまった所で一泊するよ。御者の人も同じ宿なので忘れて置いて行かれる心配はないけど、寝坊は厳禁だよ。着いたらまず夕食を摂って、すぐ寝る様にしようね」

「はい」

「今はまだ実感しづらいと思うけど、明日の朝起きた時、きっと体のあっちこっちが痛いはず。それでもちゃんと起きて朝食だけは摂ってもらわないと同じ馬車の他のお客さんたちに迷惑を掛ける事になるから、しつこい様だけど本当にちゃんと起きてね」

「はい」

実は寝て起きなくても、既に体のあっちこっちは痛いのだ。

サバドの様に背が高くて、馬車内で立ったままで天井に渡してある棒を掴む事ができるのなら、座らず立っていたいぐらいだけど、5歳の体力のなさと身長の低さで支えとなる取っ手などに届かない。

大人しく座っているしかない。

でも、座ると馬車の揺れをダイレクトに受けるため、体のあっちこっちが痛いのだ。

2時間も馬車で進むと小さな集落が見えて来たらしい。御者が教えてくれた。

箱型の馬車だけど明かり取りの為の四角い枠が上の方に5つ、ガラスが嵌めてある訳ではないので風があまり入らない様に高い位置に設けられていて、私の身長では立ち上がっても外が見れないのだ。

客が乗り降りする馬車の後ろ側の出入り口からは外が見えるけど、馬車の前面や横面は私は見る事ができない。

漸く村に着いて馬車を降りてみると、横長の2階建ての建物が多く、どこも1階には食堂が併設されていた。

宿場町の様で、ここからでは確認できない所あたりまで街道の両脇は全て食堂と宿で占められているのだろうか、夜の帳が降りそうな中、街道の先までチラチラ明かりが続いていた。

「辛いのによく頑張ったね。今夜はここに泊まるわよ」と言われたのは、馬車駅の真ん前にある他の建物と同じ様な木造の宿だった。

馬車を降りると、まず御者も同席して乗客全員で食事を頼んだ。

固めのパンとシチューだ。

味はそこそこなのだが、私としてはサラダなんかも欲しいと思う程、野菜と言えば根菜しか入っていないのだ。

このオルダル国は国境の殆どが海に面しているので、塩はふんだんにある。

塩味はばっちり感じられるので、どんな料理もそこそこ美味しいのだけれど料理のバリエーションはイマイチだ。

体の節々が痛いのと、自分でも気づかぬうちに緊張していたのと、年相応に夜になると眠たいのとで、食べ終わるとすぐに部屋に行って寝る支度をした。

ミルコが『麦畑の誓』専用に大部屋を一部屋借りたので、男女混合の部屋となった。

明日の筋肉痛に備え、寝ちゃいそうになりながらも簡単にストレッチをして寝た。

『麦畑の誓』の面々は私がやっている事が不思議らしく、何をしてるのか聞かれたので答えると、みんなも見様見真似でストレッチをしてから寝た様だ。

火事や外部からの侵入者があった場合などを考えて、ミルコが一緒に添い寝してくれたのは女性冒険者故の心配り。

感謝一入なんて思っている内に寝入ってしまった。