軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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馬車乗り場はさっきまでいた大聖堂前の広場だ。

『麦畑の誓』は4人のパーティで女性3名、男性1名という構成だ。私の歩く速度に合わせてくれているが、それでは準備が間に合わないということでパーティを三つに割った。

ミルコさんと男性1人は私に合わせてゆっくり歩いてくれている。

残りの女性の内1人は定期便の馬車の座席確保へ、もう一人の女性はみんなの昼食を買いに散って行った。

「さっきも自己紹介したけど、私はミルコね。で、こっちがサバドよ」

「よろしくな」

「よろしくお願いします」

「本当に礼儀正しい子だなぁ」

「サバドもポンタ村出身なのよ。ってか、ウチのパーティは全員ポンタ村出身よ」

「気心が知れている同士だと安心ですね」

私がそう言うと、ミルコとサバドがびっくりした様に立ち止まった。

「俺は5歳児で気心なんて言葉を使う子を初めてみたよ」

「ギジェが自慢するのも分かるわね~。残りの二人は馬車に乗ってから自己紹介するね」

そっかぁ。5歳児が使う語彙って少ないって忘れてたよ。

今まで平気で話してたけど、家の両親はびっくりした顔をした事がないなぁ。

まぁ、既に発してしまった言葉は呑み込めないので、次回からだね。気を付けようっと。

それにしても、王都内は全部の道が石畳なのだろうか?

この辺はお店が少ないからまだ貴族街だと思うし、もしそうなら石畳なのは分かるけど、平民街もそうなのかな?

ここら辺は石造りとレンガ造りの屋敷が殆どだけど、平民の家もレンガ造りとかなのかなぁ。

下町には行った事がないから、王都を離れる前に是非一度見ておきたいなどと思いながら歩くので、自然と目が道の左右に忙しなく動いてしまう。典型的な御上りさんだ。

それでも、今朝大聖堂までたどったのと同じ道なので、新しい発見はあまりなかった。

大きな広場に着き、大聖堂とは反対側の隅っこに複数の馬車がとまっていた。乗合馬車乗り場だ。

荷台の部分が板で覆われており、客はその箱の様な車体の中に入る様だ。

実は、私はこれまで一度も馬車に乗った事がない。

私は馬車の乗り口の上に掲げられた行先プレートを見て、ゴンスンデ行きの馬車に乗り込んだ。

続いて乗り込んだミルコが横に座った。

「ちょっと待ってアウレリア。どうしてこの馬車だと思ったの?」

「え?ゴンスンデ行きって書いてあったから。ポンタ村はゴンスンデまでの街道にあるでしょ?」

「それはそうだけど。あなた字が読めるの?」

「はい。館の執事が使用人とその子供に読み書きを教えてくれるんです」

私たち二人の向かいにサバドが座った。

「字が読めたとしてもポンタ村が王都とゴンスンデまでの間にあるって、どうして知ってるんだい?」

「伯爵様の図書室で地図を見た事があるから」

「ほほう。貴族の使用人になったら図書室の本まで読めるのか」

本当は使用人が読んで良いわけではないのだが、娯楽に飢えたこの世界、時々図書館に入り込んでは気になる本を片っ端から読んでいたのだ。

でも、これは訂正しないよ。「うん」とも「いいえ」とも言わずに、にこっと笑ってごまかした。日本人の得意技だ。

そうこうしていると、ミルコの右横に黒髪の背の低い女性が座った。

馬車の切符は王都と複数の街を繋ぐルート全てを一か所で取り扱うために、馬車乗り場にあった1軒の小屋で購入するらしく、そこから来た様だった。

「キャンディ、切符は人数分買えた?」

「うん」と返事をしつつ、キャンディと呼ばれた女性の目は私の方を見ていた。

「キャンディって言うの。ミルコと同じくポンタ村出身よ。あなたのご両親とは小さい時からの仲良しなのよ」と手を差し出されたので、握手で応えておく。

彼女は、チケットを3枚御者に渡しつつ「後、もう一人来ます」と昼食の買い出しをしている仲間が来る事を伝えた。

私達の他には、商人っぽい感じの男性2人くらいしかいない。

それも一緒に旅しているのではなく、別々の様だ。

御者はこの二人からもチケットを渡してもらっている。

「出発まで 後(あと) 半時間だ。このまま座っててくれ」と言って、馬車の御者台の方へ戻った。

赤毛の背が高い女性が両手一杯に荷物を持って、息を荒げながら馬車に乗った。

「はぁ~。間に合った」

キャンディが荷台に戻って来た御者にチケットを1枚渡したので、彼女が私たちの仲間だと分かった。

屋敷ではパーティメンバー1人1人をじっくり見る事はしてなかったからね。両親と別れるので寂しい気持ちと屋敷のみんなに別れの挨拶をするので手一杯だったのだ。

その後は、パーティを三つに割って移動したので、この赤毛の女性についてはうっすらと覚えているだけだ。

「アウレリア、私はミルコの姉のドローレス。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」

一応、今の所切符を買った人は全て馬車の中に乗り込んでいるみたいだが、新しい乗客が来る可能性があるので時間ぎりぎりまで待つらしい。

その間に私達は馬車の中で昼食を食べた。

サンドウィッチみたいにパンに肉が挟んであるのと、りんご丸々一つと、革袋に入れられた水だ。

あ、私以外の4人は一つの大きな革袋に入ったワインを回し飲みしていたけどね。

ただこのサンドウィッチもどき、バターも辛子も塗られてなくて、ステーキ肉を焼く時に振りかけられた塩しか調味料が使われていないのだ。パンも固く、モソモソとしているけど、りんごは甘酸っぱくて美味しかった。

結局、私達と商人らしい男性2人以外に客は来なかった。

定時に出発した馬車はゆっくりと王都を南下していく。

石造りの大きな南門を馬車に乗ったまま潜り、生まれ育った王都を初めて出た。

後ろを振り返っても、馬車の背面に窓はないから、王都をしっかり見る事はできなかった。

乗客が乗り降りする荷台後ろの出入り口部分が人一人分の幅だけぽっかり空いていて、風が入らない様に分厚い布が垂らしてあるので、布が何かの拍子に捲れた時にちらっと外が見れる感じだ。

離れ離れになる両親の顔を思い浮かべて、目の端に少し涙が溜まるが、旅立ちを涙で彩ってしまうのは悲しいので、ぐいっと袖で目を拭った。

馬車は東へと延びる真直ぐな道を進んだ。